竹宮惠子×内田樹が語る!漫画発展の背景には戦争の○○があった!

少女漫画の黎明期を支え、今でもカリスマ的人気を誇る漫画家・竹宮惠子さんと、この方の評論や記事をWEBや雑誌で見ない日はないんじゃないかというほど人気の思想家であり、武道家でもある内田樹さん

このおふたりが漫画について対談をし、それが一冊の本『竹と樹のマンガ文化論』になったと聞いて、漫画好きの私は心が震えました。

この本、漫画家であり、日本唯一の漫画学部を持つ京都精華大学の学長を務める竹宮さんと、生粋の漫画好きである内田さんの生トークなだけあって、漫画発展について「へえ~」な内容が満載どころか、あの名作漫画にまつわるトリビアや、実用書的に目からうろこな内容まで詰まっていました!

manga_cover竹宮先生による帯のイラストが目印!

子どもの頃に手塚治虫の洗礼をうけ、現代漫画の成長と歩みを同じくして育って来た世代によるトークは、とにかく濃い! 現代文化における漫画の「すごい部分」がどんどん浮き彫りになってきます。

1こちらが本物(?)の内田樹さんと竹宮惠子さん。イラストそっくりです!

たとえば、「なぜ漫画は発展したか?」という話のなかで、内田さんはその原因が「戦争」にあると指摘します。

内田さんによると、敗戦までに大正生まれ1350万人のうち、7人にひとりにあたる200万人が戦死しました。これにより、本来文化を担うべき20〜30代が不在、または戦争経験と敗戦ショックで想像力を失い作品が生まれなくなる、という事態が起こります。

そんなとき彗星のごとく現れたのが、当時10代だった手塚治虫。彼が最前線で自由な創造活動を行うことで、石ノ森章太郎、ちばてつや、藤子不二雄、赤塚不二夫など、10代の若い才能がみんな彼に続きました。

内田 そういうジャンル草創期の自由と活気に引き寄せられて一〇代のクリエイターたちが漫画の世界に集まってきて、文化的創造の最先端に立った。これほど若い世代が前線に立ったジャンルって、日本文化を振り返っても漫画の他にはなかったことじゃないでしょうか。

内田 戦後一貫して漫画界は若い人を信頼してそれで成功して来ていると思います。ふつうはこれだけのビッグビジネスになったら、スーツを着たビジネスマンが切り回し始めて、若い作家たちは消耗品扱いされるはずですけど、日本の漫画は幸いまだそうなっていない。若い才能に対して寛容で、気前のいい態度をとるのが、漫画界の伝統の一番いいところじゃないかと思います。

漫画は、今も昔も若い才能が最前線に立っている唯一無二の文化であり、だからこそ発展した、という話。「最近の若者は……」とか言っている場合ではないですね!

ちなみに、私は毎日仕事をしながら、「締め切りさえなければ、もっと楽なのに」とか、「もっと時間があれば、ちゃんと仕上げられたのに……」と思いながら仕事をしているのですが、この「締め切り」こそ、漫画発展の要、という話も興味深かったです。

竹宮さんによると、戦後、鉄道などの物流網が発達したことにより、日本全国同タイミングで漫画雑誌の発売日を設定することができるようになりました。それを逆算して、原稿の締め切りが設定された。その締め切りを漫画家たちが命がけで守ることで、漫画雑誌という日本独特の文化が発展したというわけです。

それにより、漫画家は締め切り前の壮絶な徹夜という日常が発生してしまうのですが、それを契約なしに乗り越えた背景には、他の文化にはない、読者との相互コミュニケーションがあったそう

内田 (中略)日本の売れっ子漫画家は毎週締め切りに追われて、最後の三日間ぐらいは毎回徹夜。

竹宮 本当にそのとおりです。夢中になって、がぁーっと描いて、出来たてほやほやの作品を送り出す。そして作品を読んだファンからの反応も、ファンレターのようなカタチですぐに受け取ることができる。〜このような漫画家と読者の一体感というか、コミュニティみたいなものが、日本独自の漫画文化を育てたのではないかと思うのです。

この本を読んで、漫画についての歴史や発展について知れるだけじゃなくて、社会生活を送る上でのヒントも読み取ってしまったのは私の深読みのしすぎでしょうか。
でもやっぱり、若い世代の意見は尊重するべき、とか、締め切りは守るべき、とか、仕事は共同作業あってこそだとか……いろいろと参考になることだらけでした。

次回は、この本のメインキーワードでもある「漫画はオープンソースだ」について紹介していきます! (五十嵐ミワ)

manga_cover

『竹と樹のマンガ文化論』

竹宮惠子・内田 樹/著(小学館/740円+税)

 

【あわせて読みたい】

※ベストセラー漫画『海街diary』が映画化!あの人気女優たちが4姉妹に…

※なるほどね!「謝罪は○○にすると、許してもらえる」等、未来を変える52のヒント

※伝説の漫画家・江口寿史が描いた14歳のCanCamモデルとは?