ご飯が大好き!という人でも、お米の選び方については「正直よく分からない……」と思うことが多いもの。他の食材はよく見て選ぶのに、お米については当てずっぽうで選んでいませんか?
よく食べるものだからこそ、選ぶ基準を知っておきたいですよね。そこで今回は、今日から真似できる「美味しいお米選びのコツ」について、「米料亭 八代目儀兵衛」料理長の橋本晃治さんに伺いました。
橋本晃治さん
江戸時代から続く京都の老舗米問屋に生まれ、のちに料理人として修行。“究極の銀シャリ”を提供する「米料亭 八代目儀兵衛」(京都・祇園/東京・銀座)料理⻑であり、日本に約450人しかいない“五ツ星お米マイスター”の一人。
■美味しいお米を選ぶコツは?基本のポイント3つ
橋本さんが料理長を務める「米料亭 八代目儀兵衛」は、銀シャリ=ご飯をメインディッシュに掲げている(!)ほど、お米にこだわりのあるお店。それもそのはずで、八代目儀兵衛はもともとミシュランの三ツ星獲得店とも取引のある京都の老舗米問屋なのです。
米問屋に生まれ、米料亭を切り盛りする、まさにお米のエキスパートである橋本さん。まずは「お米を選ぶための基本ポイント」についてQ&A方式で教えていただきましょう!
Q.お米の美味しさを左右するのは、どんな要素ですか?
我々の現場では、お米の美味しさを判断する基準を「ツヤ・白さ・香り・甘さ・粘り・食感・喉越し」の7つとして考えています。これは美味しいお米を選ぶコンテスト「お米番付」でも採用されている基準です。
それぞれの要素の具体的な判断基準は、次のようなものです。
- ツヤ:お米表面の光沢
- 白さ:透明感のある白さ
- 香り:湯気から感じる甘み
- 甘さ:噛むほどに染み出る甘さ
- 粘り:はねかえりを感じる心地よい噛みごたえ
- 食感:粒ごとの歯ざわりのなめらかさ
- 喉越し:喉でとろけるような感覚
一般家庭でここまで細かく考える必要はないかもしれませんが、「お米の美味しさにはこういう要素が関係しているんだな」と知っておくことで自分好みのお米を見つけやすくなります。
Q.自分好みの「美味しいお米」を見つける方法は?
次の3つのポイントを意識すると、好みのお米を探しやすくなります。
- もっちり系orあっさり系なら、どっちが好き?
- 精米年月日は新しいほど良い
- まとめ買いのしすぎはNG
●Point1:もっちり系orあっさり系なら、どっちが好き?
お米の好みが最も出やすいのは、「もっちり系」か「あっさり系」かという噛みごたえの部分です。まずは「自分はどっちが好みかな?」と考えてみましょう。
もっちり系というのは、もち米に近い噛みごたえを感じられるもの。あっさり系というのは、反対に粘り気が少なめのものです。ちなみに昔から愛されているコシヒカリは、もっちりとあっさりのちょうど「真ん中」くらいの品種なんですよ。
最近の日本では「もっちり系が好み」という人が増えていて、ミルキークイーンや北海道産ゆめぴりかといった、もっちり感のあるお米の人気が高まっています。
●Point2:精米年月日は新しいほど良い
玄米を精米して白米になったお米は、空気に触れて少しずつ酸化していきます。酸化が進むと栄養素も風味も落ち、炊きあがったご飯に「黄ばみ」や「すっぱいニオイ」が出ることがあります。
同じお米なら「精米年月日」が新しいものほど、新鮮で美味しいです。お米を買うときは精米年月日に注目して、できるだけ日付が新しいものを選んでみてください。
●Point3:まとめ買いのしすぎはNG
お米本来の美味しさをキープできるのは、精米から約30日間です。それ以降は酸化が進んで味が落ちてしまうので、お米を買うときは「精米年月日から30日以内に食べ切れる量」を意識しましょう。
お米の保管は「湿気の少ない冷暗所」が基本です。ご家庭では冷蔵庫が最も適しているので、タッパーなどの密閉容器に入れて冷蔵庫で保管すると良いでしょう。
ただ「親戚が大量に送ってくれたとき」など、食べきれない量のお米が手元に来ることもありますよね。そんなときは、できるだけ空気に触れさせないよう「布団圧縮袋にお米を入れて空気を抜き、湿気の少ない冷暗所で保管する」のがおすすめです。
■お米屋さんで買うメリットと、信頼できるお店の見分け方
Q.一般家庭で、より美味しいお米をゲットする裏ワザはありますか?
一番おすすめなのは、信頼できるお米屋さんを見つけること。ご近所で難しければ、ネット通販できる店舗を探してもOKです。
お米は収穫してから倉庫で保管する期間が長いので、保管状態によってかなり風味が変わります。なので、美味しさを維持する方法をしっかり守って保管しているお米屋さんから購入するのが一番なんです。
また「去年買った品種が好みの味だったから」と同じ品種・産地のものを買ったのに、「あれ? 今年はちょっと違うかも」とがっかりしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お米の味は、その年の降水量や天候などで結構変わるものです。品種や産地だけでなく、そうした「今年の味」についてもお米屋さんは詳しいので、好みを相談できるお店があると心強いですよ。
Q.お米屋さんに行ったことがないのですが、「信頼できるお米屋さん」を見分けるコツはありますか?
日米連(一般社団法人 一般財団法人日本米穀商連合会)が発行する「お米マイスター」の認証マークのあるお米屋さんなら安心です。お米マイスターとは、お米についての専門知識を問う試験に合格した人に与えられる民間資格で、3年に一度の更新も義務付けられています。
とくに「五つ星お米マイスター」を取得するためには、筆記試験だけでなく「お米の味を見極める能力」や「飲食店主に炊飯を指導する能力」といった実技試験に合格する必要があります。
五つ星お米マイスターの資格を持つ人は、日本全国に446人しか存在しないお米のエキスパート(2021年5月31日時点)ですので、まずは「五つ星お米マイスター」の認証マークを持つお店を探してみてくださいね。
■「いつものお米」が大変身♪料亭直伝、炊き方のコツ
Q.家に今あるお米を、もっと美味しく食べるコツはありますか?
同じお米でも、美味しさを引き出す炊き方を意識するとかなり変わりますよ!
ご家庭でやってしまいがちな「ご飯の美味しさを損ねるNG行為」は、
・計量をテキトーにしてしまう
・お米を研ぎすぎて傷つけてしまう
・炊きあがったご飯をすぐにほぐさず放置してしまう
以上の3つです。これらを改善するだけでも、ご飯はぐっと美味しくなります。
また、炊飯前にお米を研いだら冷蔵庫で1時間浸水すること。
そして浸水したお米を「早炊きモード」(浸水しなかった場合は「通常モード」)で炊くこと。
ご飯を冷凍する際は、丸めずに1〜1.5cmの厚みで平らにして、ラップした上にアルミホイルで包むこと。
こうしたコツを意識すると、いつものお米もぐんと美味しくなります。
いつものお米を美味しく炊く方法について、詳しくはこちらの記事をどうぞ!
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ご飯が美味しいと食事はもっと楽しくなるはず♪ 次にお米を買うときは、これらのポイントを意識してみてくださいね。
取材協力 米料亭 八代目儀兵衛