美味すぎる。いつもの「ご飯」が料亭みたいに炊ける、超簡単なコツ【お米好き必見】

日本のソウルフードといえば、やっぱりお米! とは言え、あまりに身近なためか「お米の美味しい炊き方」を意識している人は意外と少ないかもしれません。

よく食べるからこそ、家で美味しいご飯が炊けたら嬉しいですよね。「ちょっとしたコツを守るだけで、ご飯の味は格段に変わります」と語るのは、京都の老舗米問屋が運営するお店「米料亭 八代目儀兵衛」料理長の橋本晃治さん。

今回は、お米のエキスパートである橋本さんに、誰にでもできる「お米を最高に美味しく炊き上げるコツ」を教えていただきます♪

●教えてくれるのは……
橋本晃治さん
江戸時代から続く京都の老舗米問屋に生まれ、のちに料理人として修行。“究極の銀シャリ”を提供する「米料亭 八代目儀兵衛」(京都・祇園/東京・銀座)料理⻑であり、日本に約450人しかいない“五ツ星お米マイスター”の一人。

■コレやってない?「ご飯がまずくなる」3つのNG行為

橋本さんが料理長を務める「米料亭 八代目儀兵衛」では、“究極の銀シャリ”(=ご飯)をメインディッシュに掲げています。八代目儀兵衛はもともとミシュラン星付きレストランと取引のある米問屋さんでもあり、料理長・橋本さんも”五つ星お米マイスター”の資格を持つお米のエキスパート!

そんな橋本さんいわく、「ご家庭でご飯を炊くとき、みなさんがやってしまいがちなNG行為がいくつかあります」とのこと。早速教えていただきましょう。

・NG行為(1)計量をテキトーに済ませる

最初のNG行為は、お米と水の計量をテキトーにしてしまうこと。

「お米は重量で計る。炊く水はお米の1.2〜1.3倍」が美味しいご飯の基本です。
*お米1合は150gなので、水の量は180〜195gになります。

水の量に幅があるのは、炊飯器や土鍋など炊くツールによって多少違いがあるためです。でも「1.2〜1.3倍」という基本を把握しておくことで、ご自宅の炊飯器で「まずは基本の重量で炊いてみて、固めが好きだから水を減らす/柔らかめが好きだから水を増やす」といった調整が簡単にできます。

ちなみに八代目儀兵衛さんの場合、「お米1合:水190g」を社内基準としています。

【解決策】

お米も水も、キッチンスケールを使って正確に計量しましょう。

計量カップは便利ですが、実は誤差が出やすいツールでもあります。(実際にお米で試してみたところ、いつもどおり計量カップで計った「1合のつもり」のお米は160〜165gになってしまい、3回計り直しても150gぴったりにはなりませんでした!)

キッチンスケールで計るなんて大変そう……と思うかもしれませんが、実際にやってみると意外と早いし簡単です。お米と同じ場所に収納して一緒に取り出せるようにすると、さらに楽ですよ♪

・NG行為(2)お米を研ぎすぎてしまう

お米を研ぐとき、ギュギュッと力を込めて研いだり、水が透明になるまで何度もすすいだりしていませんか? そのやり方も実はNG!

強く研ぎすぎると、お米の表面が傷ついたり粒そのものが割れたりするため、食感が悪くボソボソとしたご飯になってしまいます。また、水が透明になるほどすすいでしまうことで、旨味や栄養素が流れ出てしまうとのこと。

【解決策】
お米は、優しくすり合わせるように洗いましょう(※詳しくは後ほど)。

今の精米技術はとても優秀で、売られているお米はきれいな状態なので、強く研ぐ必要はありません。とは言え全く洗わないのも問題で、表面にわずかに残った糠(ぬか)により炊きあがったご飯が黄ばんだり、ご飯の香りが悪くなったりすることがあります。

お米は、片手で一掴みずつ握って、傷つけないよう優しくすり合わせるように洗うのが正解です。詳しいやり方は記事の後半で解説します♪

・NG行為(3)炊きあがったご飯を放置する

橋本さんいわく「ご家庭のご飯を不味くしてしまうワーストワン行為」がこちら、炊きあがったご飯をほぐさずにそのまま放置すること、です。

「まだ食べないから」と炊飯器の中でそのまま放置してしまうこと、ありませんか? 放置している炊飯器の中では、蓋に溜まった水蒸気が水滴となってご飯に落ちます。するとせっかく美味しく炊けたご飯が水っぽくなったり、くっついて“だま”になったりしてしまうんです。

【解決策】
炊きあがったらすぐ「ほぐす」作業を行いましょう。

ふっくらとした美味しいご飯を食べるには、炊きあがったタイミングですぐ「ほぐす」のがポイントです。食事まで少し間があくときも、炊飯器がピーっと鳴ったらとにかく「ほぐす」ことだけ徹底しましょう。

なお、炊きたてのご飯はとても柔らかいので、力を込めずにすっと底までしゃもじを入れて、何度か優しくすくい上げ、空気を入れてあげればOK。この一手間で米粒が適度に引き締まり、食感がぐんと良くなります。

■米料亭直伝!「最高に美味しいご飯」を炊くポイントは?

「米料亭 八代目儀兵衛」では、お米を炊くために必要な工程を次の10項目に分けています。

「炊飯10か条」

1. お米の保存
2. お米の計量
3. 洗米
4. 水の計量
5. 浸水
6. 炊飯
7. 蒸らし
8. ほぐし
9. 盛り付け
10. ご飯の保存

10個の工程にはそれぞれ重要なポイントがあります。と言っても、すぐに真似できる工夫ばかりですので安心してくださいね♪

米料亭がおすすめする「美味しいご飯の炊き方」、早速チェックしていきましょう。

◆1.お米の保存

お米の保管場所は「湿気の少ない冷暗所」が基本。家庭では冷蔵庫が最適です。
お米は空気に触れると酸化して味や栄養が落ちてしまいますし、水気に触れるとカビが生える恐れがあります。タッパーなどの密閉容器に入れて冷蔵庫で保管することで、お米の美味しさをキープできます。

◆2.お米の計量

先程も書いたとおり、計量をテキトーに行うのはNG。
お米の計量は美味しいご飯を炊くための第一歩です! キッチンスケールを使って「1合150g」を正確に計量しましょう。

◆3.洗米

洗米のポイントは「汚れた水を手早く捨てること」と「お米を優しく洗うこと」の2つです。実際の手順に沿って、写真付きで見ていきましょう。

まずボウルとザルを用意します。金属のザルは米粒を傷つけてしまうため、ザルはプラスチック製がベスト。100均のものでもOKです。

ボウルとザルを重ねた中に、計量したお米を入れます。

ここから先はスピード勝負! 米を洗うための水を入れたら2〜3秒だけ軽くかき混ぜ、すぐにザルを持ち上げ水を捨てます。汚れた水をできるだけお米に水を吸わせないよう、素早く行いましょう。


▲水を注いで……


▲2〜3秒だけ軽くかきまぜ……


▲ザルを持ち上げ、すぐに水から離します。

次に、お米をザルからボウルに移して研いでいきます。ザルのまま研いでしまうとお米が割れて食感が損なわれるため、必ずボウルに移しましょう。

研ぎ方は簡単です。お米を片手で一掴みし、優しくすり合わせて、離します。


▲片手で軽く掴んで、優しくすり合わせ……


▲ボウルの中にリリースします。お米を傷つけないよう、優しく行うのがポイント!

お米全体を少しずつ、握って離す、握って離す……を繰り返して、表面の汚れを落とします。繰り返す回数は、1〜2合なら30回、3〜4合なら40回が目安です。

研ぎ終えたら、またザルに移して洗います。ザルとボウルを重ねて、水を入れて軽くかき混ぜ、すぐ捨てる。この動作を3セットほど繰り返しましょう。

以上で、洗米完了です!

◆4.水の計量

お米を浸水させるため、水の量を計ります。「お米1合は150g、水はお米の1.2〜1.3倍」で計算し、お米と同じようにキッチンスケールで計りましょう。(編集注:固めが好きなら1.2倍、柔らかめが好きなら1.3倍を目安にすると、自分の好みに近づけられそうです)

ご飯の固さ・柔らかさは、浸水する水の量で調節が可能です。いったん基本どおりの分量で炊いてみて、「もう少し固めがいいな」と感じたら水を5〜10g減らし、「柔らかめがいいな」と感じたら5〜10g増やしてみてください。

※お米は冷たい水で炊くとより美味しくなるので、この段階で氷を加えるのもおすすめです。(氷も含めて水を計量してください)。
※ミネラルウォーターを使う場合は、硬度40以下の軟水が適しています。

◆5.浸水

ラップをかけて冷蔵庫へ。庫内で1時間ほど浸水させます。

お米を水に浸けるのは、炊飯の際にまんべんなく熱が通るようにするため。またラップをかけるのは他の食品のニオイが移らないよう保護するためです。

お米の甘みは、炊飯時の熱によって引き出されます。お米に熱を伝える媒体は水分なので、1時間かけて中心部までじっくり浸水すると、お米は甘く炊きあがります。

しっかり浸水できたかどうかの目安は、お米を指で潰してみれば分かります。充分に水を含んだお米は、指の腹で軽くこするとボロボロと崩れます。


▲浸水後のお米は、指で軽くこするとボロボロ崩れます。

この状態になったらしっかり浸水できています。

◆6.炊飯/7.蒸らし

「炊飯」と「蒸らし」の工程は、炊飯器におまかせでOK……ですが、ここでワンポイント!

・1時間の浸水が終わっているお米は「早炊きモード」
・(時間がないときなど)浸水していないお米は「通常モード」

で、炊飯しましょう。

「通常モード」では炊飯器の中でも浸水の工程が行われるため、すでに浸水したお米を通常モードで炊いてしまうと、水っぽくなりすぎてしまう恐れがあります。一方「早炊きモード」は浸水の工程を飛ばして炊飯が行われるので、充分に浸水したお米を炊くのに最適です。(※炊飯器の種類によって使い方が異なる場合もあります)

炊飯器のモード、逆に使っていた!という方も多いのではないでしょうか。浸水する時間がとれたら「早炊きモード」、浸水する時間がないときは「通常モード」と使い分けてみてくださいね。

◆8.ほぐし

ご飯が炊きあがったら「ほぐし」の作業を行いましょう。食べるタイミングを待たず、炊きあがったらすぐほぐすのが美味しさのコツです。

炊きたてのご飯は柔らかく潰れやすいので、しゃもじで優しく底のほうからすくって、全体に空気を含ませましょう。空気に触れることで米粒が適度に引き締まり、食感も見た目も良くなります♪


▲(写真は土鍋を使った例ですが)こちらは炊きたてのご飯。このまま放置すると固まってしまいますが……


▲しゃもじで優しくほぐしてあげると……


▲粒それぞれが引き締まって、見た目も味も良くなります♪

★美味しくなるほぐし方、お手本動画はこちら!

◆9.盛り付け

お茶碗に盛り付ける際も、力を込めずに優しく行うのがポイントです。ご飯をしゃもじですくったら、ひっくり返さずそのままの形で、茶碗の中にすっと置くように盛り付けましょう。


▲「優しく置く」を意識したご飯。ふんわり美味しそう♡

しゃもじをひっくり返したり、上からパンパン叩いてしまったりすると、米同士がくっついて食感が悪くなってしまいます。「静かにそっと、置くように」を意識してみてくださいね。

◆10.ご飯の保存(冷凍の仕方)

最後に、ご飯を美味しく冷凍する方法についても知っておきましょう。

ご飯を冷凍するときのポイントは、「できるだけスピーディに冷やすこと」と「平らな形に包むこと」の2つです。

まず、スピーディに冷やすこと。保温状態のまま何時間も置くのではなく、食べる分を取り分けたらすぐ残りを冷凍する準備を始めるのがおすすめです。

そして、平らな形で包むこと。ラップを広げて、ご飯の厚みが1〜1.5cmくらいの平らな形になるよう優しく置いていきます。潰さないように包み、粗熱が取れたら冷凍庫に入れましょう。

均等な厚みで平らにすることで冷却が速くなります。また、レンジで温める際も熱が通りやすくなるため、W効果で美味しさが保てます。

▲厚みを均一に、平らな形で包むのがポイント。

ラップのまま冷凍しても良いのですが、その上からアルミホイルでさらに包むのもおすすめです。アルミホイルはご飯の冷凍スピードを上げるだけでなく、他の食材に熱が移るのも防いでくれます。

■米料亭直伝・ご飯を美味しく炊くポイントまとめ

美味しいご飯の炊き方、ポイントをおさらいしてみましょう。

◆最高に美味しいご飯を炊くためには……

・お米の保存は湿気の少ない冷暗所(冷蔵庫がベスト)
・お米と水はキッチンスケールで計量する
・お米は傷つけないよう優しく洗う、研ぎすぎない
・炊飯前に、冷蔵庫で1時間浸水させる
・浸水したときは「早炊きモード」、浸水しないときは「通常モード」で炊飯
・炊きあがったら、すぐほぐす
・茶碗には優しく盛り付ける
・冷凍ご飯は1〜1.5cm厚に、平らに包んで保存する

いつものやり方をちょっと変えるだけで、ぐんと美味しいご飯になります♪ ぜひ試してみてくださいね。

文・構成 豊島オリカ
取材協力 米料亭 八代目儀兵衛