学生の頃は「宿題」などの勉強、そして大人になってからは「仕事」。「やるべきことは、早くやるに越したことはない」と頭ではわかっているのに、なぜか「明日やればいいことは、明日やろう」とどんどん先送りにしてしまう。その結果締め切りギリギリになってから追い詰められて、なんとか完成させる…。そんな「ギリギリ先送りグセ」、身に覚えはありませんか?
この「あるある」なお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。
仕事の「先送り癖」の対処法
Q.「後でやろう」とするクセが治りません。もともと学生時代から夏休みの宿題は最後の3日でなんとかするタイプでしたが、これが大人になっても抜けません。主に仕事でこのクセが発動してしまうので、結果自分で自分の首を絞めてしまいツラいです。ツラいとわかっていてもやめられません。どうしたらいいですか?
A.実は変えるのがとても難しいので、できれば今の性質で戦い方を理解して。どうしても変えたいなら誰かを巻き込んで「小さな締め切り」を作りましょう。
「計画的に進められる人が羨ましいなあ…」と思う気持ち、とてもよくわかります。
でも、結論から言うと、追い込まれることで馬力が出て頑張れるあなたは、「そのまま」で、自分の戦い方を理解するほうがおすすめです。
…そう言うと「私は自分は変えたいのに!」とがっかりされてしまうかもしれません。実は、「物事を計画的に進められる」「追い込まれてから頑張れる」は、各自が持って生まれて、なかなか変えられない要素のひとつです。「朝型・夜型」が遺伝子レベルで決まっているのと同じような話、と言うと、その難しさがなんとなくわかるでしょうか。
特に「学生の頃からずっと先送りグセがある」のであれば、変えるためには莫大なパワーが必要になります。変えたいと思っている方に「変えるのは無理」と言ってしまっては少しかわいそうかもしれませんが、無理と言い切ってもいいくらい難しいです。「変われるよ」と言ったほうが、希望があるように感じられるかもしれませんが、これは人間の性質として、生半可な覚悟では変われない部分です。
自分に合っていない方法を無理に取り入れようとすると、何年も時間とエネルギーだけ無駄遣いをしてしまい、しんどい思いだけをして、中途半端な結果に終わってしまいがちです。
「変えたくてもなかなか変わらない自分」に長い間ずっとイライラするよりは、そんな自分も愛して、今自分に配られたカードでどう戦うか、に切り替える。それがストレスなく、うまくいくはずです。
自分に合ったスタイルを理解して、戦い方を考えましょう。たとえば、締め切りに向けてやる気が出るであろう日にスパートをかけられるように体力を貯めておく、集中できるようにスケジュールをしっかり空けておくなど、調整力を身につけましょう。
ただ、それでももし、どうしても計画性タイプに変わってみたいなら、「誰かを巻き込んで小さな締め切りを作ること」から始めるのをおすすめします。きっと今は「締め切り間際に100%を出す」だと思いますが、たとえば「30%の時点で、誰かにチェックしてもらうことを事前に宣言する」。など、本当の締め切りの前に、小さなステップを作る。そういうところから少しずつトライして、辛抱強く、自分が変われるそのときまで頑張ってみてください。
井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる「呪いの言葉」の処方箋』『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』など。