春画と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか。「江戸時代のポルノ」……と言ってしまえばそれまでですが、そんな解釈はあまりにも趣がないもの。
さて、いま、世界最大の博物館のひとつである、イギリス・ロンドンの大英博物館で『Shunga』展が行われています。同博物館始まって以来の「16歳未満は保護者同伴」の年齢制限もあり、開催前から、あらゆるメディアが大きな関心を寄せ、イギリスをはじめとした世界各国で春画が話題沸騰中なんです。性をモチーフとし、赤裸々に描いた春画作品は、当時のあらゆる美、技術、ユーモアを注ぎ込まれて作られたもの。菱川師宣、葛飾北斎、鈴木春信、歌川国芳など、有名無名問わず無数の浮世絵師が全力投球した浮世絵の一大ジャンル、なんと現在春画が見つかっていないのは、東洲斎写楽くらいという説も。
そんな春画を楽しむための5つの豆知識を『和樂』2014年1・2月合併号よりご紹介します。ちなみにページの背景はあの葛飾北斎の『喜能会之故真通』。女性がタコに……というこの春画はあまりにも有名です。
【1】春画の特徴「性と笑い」の同居は、『古事記』の時代から受け継がれている。
江戸時代「笑絵」とも呼ばれた春画。登場人物が情事の最中に犬にほえられたり、浮気現場がばれたり、性と笑いが同居。これは『古事記』の時代から通じる日本古来の感性なんです。神話の中で、局部などをあらわにしたとある神が踊り、それをほかの神々が笑うことで、岩戸に隠れた天照大御神が顔をのぞかせ光を取り戻したという話も。
【2】「春画」の語源は古代中国にあり。
枕絵、秘画、ワ印……さまざま呼び名のある春画ですが、主流である「春画」の語源は、古代中国で描かれた絵図「春宮秘画」と言われています。皇帝(春宮)が1年を通じて12人の妃と交わる方法を解く絵図で、この時代の背景には「男女(陰陽)の正しい交わりが、不老長寿や天下泰平につながる」という思想がありました。
【3】マネしちゃダメです、春画のアクロバティックポーズ。
春画の特徴といえば、とにかく大胆に拡大して描かれた局部。男女ともに誇張され、細部が詳細に表現。ここを強調するために、当時の浮世絵師は、手足を不自然に曲げ伸ばしたり、胴体をねじれさせたり現実にはありえないポーズを次々に繰り出しました。この時代の川柳には「馬鹿夫婦 春画を真似て 手をくじき」という一句も。今も昔も、性にまつわる創作物を実際にマネしてはいけませんね。
【4】当時、女性も春画の鑑賞者であり、性を楽しんでいた!
現代、女性が性的なものを見ると公言すると眉をひそめられがちですが、春画は若い娘や女房にとってもなじみ深いグッズ。春画は子孫繁栄を願う側面があることから、嫁入り道具に加えられたり、魔除けや火除けのお守りにされた事例もあり、生活の中に入り込んでいたものでした。
【5】弾圧されても、浮世絵師たちはめげません。
徳川吉宗の享保の改革(1722年)以降、表向きには禁止された春画。浮世絵師や版元は、手鎖や財産半減など処罰のリスクを負いながらも、制作者名を記さないアンダーグラウンドな出版物として生き続けました。喜多川歌麿は、名を記さない春本でも人物の会話の中に「うたまる」と自身の存在の名を匂わせるなど、洒落っ気を忘れません。
誰もが一度は日本史の授業で習ったことがある単語の数々に懐かしさを感じます。当時は暗記のためだけに学んでいましたが、大人の愉しみとして知る文化史って素敵なものですね。ちなみにこの『和樂』にはなんと袋とじで歌川国貞の春画がついています。チラッと開けてみたところ、やはり、局部が誇張、無修正。すごいです、江戸時代。(後藤香織)
(『和樂』2014年1・2月合併号)
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