新年を迎えるための準備のひとつに、玄関や神棚に「しめ飾り」を飾る風習が、古くからあります。「しめ飾り」は、そこが神様の占有する清浄な場であること、そして外からの不浄なものの侵入を防ぐ役割があると言われています。この「しめ飾り」、日本各地、地域によって異なる“かたち”があるということを、ご存じですか?
「しめなわ」と「しめ飾り」は同じものを指し、正月飾りに用いられるようになったのは、平安時代ごろからと言われています。これは、“正月が「新しい年の神」を迎えて新年を祝い、一年の平安と幸福を願う行事”と考えられてきたことに由来するとか。
つまり、「しめ飾り」を飾ることで、神様を迎える準備ができた、あるいはお迎えした、神聖な場所であることを示しています。そういえば、大掃除やおせちの準備ができて、最後に「しめ飾り」を飾っていたという記憶があります。
飾り始める時期は、地域によってさまざま。一般に、12月8日あるいは13日を“ハトジメ”といい、正月準備を始める日とされているので、「しめ飾り」もこの時期から、作り始め、20日過ぎに飾り始めるところが多いようです。最近では、スーパーなどでも手軽に購入できますが、以前は、各家の主人が自ら、縄を編んで準備するのが普通だったそう。確かに、私の田舎でも、祖父、父……と、「しめ飾り」を設置するのは、必ず家の主人でした。
そして、「しめ飾り」は、年神が帰るころ(1月7日前後が15日前後)に合わせて取り外され、正月飾りを焼くことまでをひとつの行事としている地域もあります。燃やすことで煙に乗って、年神が帰っていく……という考えからと言われているようです。
さて、「しめ飾り」のかたちですが、いくつか基本形があります。よく見かけるのは、「前垂注連(まえだれじめ)」で、細いワラ縄に、ワラ茎や紙垂(しで)と呼ばれる切り紙を下げた、多くの人が「しめなわ」と聞いてイメージするもの(スーパーなどでも見かけるかたちのもの)に近いタイプです。また、長寿を願う「鶴」や「亀」、豊作を願う「米俵」など、縁起のいい造形が組み込まれたりもします。
地域によって、五穀豊穣、無病息災、家内安全、子孫繁栄……といった願いが込められ、いずれも、日本伝統の手仕事を感じることができる“日本の美”が宿っていますよね。
毎年何気なく、玄関先に飾っていた「しめ飾り」、そしてその“かたち”には、いろいろな意味があったのですね。そう思いながら、今一度「しめ飾り」を見ると、新しい発見があるかもしれません。(さとうのりこ)
(『和樂』2015年1・2月号)
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