現代は第二次ジャポニスム!和樂編集長「2020年まで日本文化ブーム続く」と語る

雑誌の編集長とは、時代を作り出していく存在です。そんな様々な雑誌の編集長に2014年を予測してもらうシリーズ、今回は「美術と美術展と美術館に強い」、和の心を楽しむライフスタイルマガジン『和樂』の橋本記一編集長にお話をお聞きします。しかし、橋本編集長が見据えているのは、2014年ではなく、既に6年後の2020年でした! 2020年に向けて、日本文化はどのような広がりを見せていくのでしょうか?

前回の記事はコチラ→ 日本美術が大ブーム!『和樂』編集長が振り返る2013年「和」のニュース総まとめ

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Woman Insight編集部(以下、WI) 2014年の日本文化は、どのようになっていくと思いますか?

橋本編集長(以下、橋本) まず、2013年はハッキリと日本美術の年だったと僕は思います。日本美術の展覧会が、ことごとく大盛況でした。でもそれが「2013年は日本美術ブームの年だったね」ではなく「2013年は日本美術ブームが始まる、記念すべきスタートの年だったんだね」と、何年か先に2013年を振り返ったときに思うようになるのではないかと思います。

 

WI そう思う理由を教えてください。

橋本 これからいくつか日本美術にとってポイントとなる年が続きます。まず、2014年の日本美術のさらなるブームのきっかけとして、1月2日から江戸東京博物館ではじまった史上最大規模で行われる『大浮世絵展』があります。そして2016年は、江戸時代中期を代表する画家であり、琳派の始祖である尾形光琳の没後300周年の年。その頃には東京オリンピックが4年後にせまり、2020年まで世界中が日本への取材を重ね、どんどん日本と、日本美術を中心とした日本文化に世界中が注目していくはずです。

和樂2014年1月号表紙

WI 海外からはどのように日本文化が支持されているのでしょうか?

橋本 日本美術はもちろんですが、世界無形文化遺産に登録されることが決定的となった「和食」も注目されています。先日朝日新聞の書評で売れている本として紹介されていた、マイケル・ブース氏の『英国一家、日本を食べる』も話題となりました。ブース氏は、日本食がいかに洗練され、美しく、健康に良いかなど、日本食のすごさをずっと見ている方なんです。さらに、日本人の細やかなサービス、やりとり、言葉、丁寧さ、礼儀なども含めた文化全般に世界の人が注目しています。まさに“第二のジャポニスム”といってもいい状況じゃないでしょうか。

 

WI 「第二のジャポニスム」というのは、どういうことですか?

橋本 「ジャポニスム」とは、1800年代後半にヨーロッパでおこった日本趣味のこと。その時代、ゴッホやセザンヌも、浮世絵をはじめとする日本画に驚愕し、真似をしました。今、世界中で日本文化への関心が高まっていますが、それは、1800年代後半におこった、そのジャポニスムのようだと思うのです。ですから『和樂』でも、この世界にも稀なる素晴らしい日本の文化、日本美術を、より積極的に記事にして発信していきたいと思っているのです。

 

WI 具体的に『和樂』が何か仕込んでいることなどはありますか?

橋本 現在、webサイトを拡充しています。読者の平均年齢が50代前半ということもあり、今まではwebに興味を持たないだろうと思っていました。けれど今、これだけ日本美術・日本文化が世界的にも注目され、国内でも日本美術ブームが起きている。それなら『和樂』のwebサイトは、日本美術を中心とする日本文化の総合ポータルサイトを目指して拡充していこう! と思ったのです。

 

WI そのほかに、現在webや電子書籍で取り組んでいることはありますか?

橋本 『和樂』の特徴として「美術・美術館・美術展に強い」というものがあります。そのひとつの特徴であり、毎回本誌でも人気の「美術展カレンダー」。これは全国の主要美術館がどんな展示を行っているか、5か月先まで一目でわかるように、カレンダー形式で紹介する記事です。「ふと時間ができたから近所でやっている美術館で何をやっているか見てみよう」というときにも、「今度帰省や旅行をするけど、現地の美術館では何を展示しているんだろう?」など、旅行の計画を立てるときにも使えるものです。『和樂』は現在電子書籍としても発行していますが、この「美術展カレンダー」の部分は無料でダウンロードできるようにしているんです。しかも、紙の雑誌では各美術館の基本データしか載せられませんが、電子書籍版では各美術館のwebサイトにリンクを張って飛べるようにしています。

 

WI 『和樂』の今後の展望を教えてください。

橋本 『和樂』は専門誌でも専門書でもありません。専門家ではなく、ふつうの人に向けて、日本美術や歌舞伎など、日本文化の記事を掲載しています。私たちはこの雑誌を“日本文化の入口マガジン”だと思っています。ここで、例えば「若冲の絵はきれいだね、じゃあどういう人なんだろう?」とちょっと知ってもらって、もっと知りたくなったら専門書を読んだり、もっと深い世界に行っていただく。そういうふうに、『和樂』をきっかけにさまざまな人が日本文化に興味を持って、知ってもらうことが重要だと思っています。これから日本文化への注目度が上がるにつれ、おそらくライバルが増え、よりマーケットが盛り上がっていく。そうなっていっても『和樂』の指針はぶれず、東京オリンピックが行われる2020年には、『和樂』が世界でも有名な日本文化の紹介雑誌になっていることが目標です。

世界が注目している日本の美しい文化を、日本人である私たちはどれほど知っているのでしょうか? 誇るべきこの文化を、もっと知りたい、という方も少なくないのではないかと思います。毎号、美しい写真と、わかりやすい文章で日本文化を紹介している雑誌『和樂』。是非一度手に取って、その広く深い世界を体感してみてはいかがでしょうか?(後藤香織)

和樂2014年1月号表紙
(『和樂』2014年1・2月合併号)

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