時代を作る「女性ファッション誌」の編集長は、いったい現代をどのように見て、2013年をどう振り返るのか。そんな編集長インタビューシリーズ、今回は『CanCam』井亀真紀編集長の2回目です。井亀編集長が思う『CanCam』世代(平均23~25歳)の、2013年の3大キーワードについてお聞きしました。「リスペクトされる女子像の変化」「いい感じに幸せそう」「女子はかわいいもののオタク」「若い女性の消費の変化」など、気になるトピックスがたくさんです!
前回はコチラ→ 2013年を総括!CanCam編集長が考える「かわいい」の現在
Woman Insight編集部(以下、WI) 井亀編集長が2013年を振り返って感じる、時代のキーワードはありますか?
井亀編集長(以下、井亀) 「黒髪、コミュ力、リア充」の3つですかね。
WI それではまず、「黒髪」についてキーワードだと感じる理由を教えてください。
井亀 2013年、『CanCam』世代では特に、空前の黒髪ブームだった。春ぐらいから少しずつ来ていたけど、確実に来たのは秋。大学3年生が本格的に就活を意識しだす秋のタイミングで黒髪にしたら、なんだか周りの評判もいいし、カワイイ系のファッションもギャルっぽくなく着こなせるし彼受けもいいから、そのまま黒髪ステイという子が多かったんです。
WI では次に「コミュ力」がキーワードである理由はなんですか?
井亀 まず、今の若い子たちが、どんな女の子をリスペクトするかというと、とにかくコミュ力が高い子。どういうことかというと、職場や学校でも友達がたくさんいて、その上で読モの会やヴィジュアルプレスの会や、もしくは趣味の会など、いろんなところに参加して、いろんな繋がりを持っていて、顔も広くて、でもしっかり自分の芯を持っていて、自己発信が上手な子。そして「リア充」にもつながるんだけど、「自分だけ」がモテる、可愛くなる、ヤセる、ではなくて、周りの様子を見ながら「いい感じに幸せそうにしている」ってのがいいみたい。みんなの中心にいて、いつもお洒落で可愛くて、自分がしっかりあって、人のことも思いやれる。結局それは、賢いってことだと思うんだけど。
WI 昔と今で「リスペクトされる女の子」の像が違ってきているんでしょうか?
井亀 違いますね。昔ならスタイルが良くて可愛くてお洒落だったら、それでもうオール。それだけでリスペクトされていた。でも、今はそれじゃ全然だめ。例えば、オーガニックにも詳しくて、作って持ってきたお弁当も可愛くて、おつかいものをちょっと、というときに「あ、だったら銀座のどこどこのおまんじゅうが美味しいよ」とサッと言えて、遅くまでやっている美味しいお店も知っている。この傾向が始まったのはそんなに最近でもないと思うけど、どんどんそういうことができないとリスペクト対象にならなくなっていると思います。
WI リスペクトされる女の子像がそのように変化してきた要因はなんだと思いますか?
井亀 景気が低迷してからじゃないかな。バブルのときは競争社会で、それこそイケイケドンドンで勝ち抜くことに意識がいくけど、今の時代はいくらがんばってもお金持ちになれるのは一握り。そうなると、いかに自分と、自分に近い周りを幸せにするかってことを工夫するし、それができる人が素敵な人だな、ってみんなが思うようになる。私が30代向けの雑誌の編集長をしていたときは、そういう人がリスペクトされるのは「ママになってから、30代40代になってからかな」と思っていたんですけど、『CanCam』に来てみたら若い子のほうがもっとその傾向が強かった。若い子のほうが周りを見ていて、「自分だけ得したい」というのがない。もしかしたら裏ではそう思っているかもしれないけど、見せない。それよりも「いい感じに幸せそう」。お洒落で可愛いのに加えて「幸せそう」っていうのがポイントみたい。そして、突出したがらない。目立ちたくない。いくら幸せでも、「発信」しすぎたら嫌がられるかな、と、そこまで考えている。
WI 「発信する女の子たち」についてはどう思われますか?
井亀 今は、「一億総編集者時代」だと思うんだけど、みんな、自分で自分の「かわいい」をブログなりSNSなりで発信するのが大好き。みんな自分のコーディネートや、食べたもの、作った料理、行った場所を発信しているよね。それを読んでくれる人がいると嬉しいっていう、私たちが仕事でやっていることを普通に趣味でやっている子がすごくたくさんいる。可愛い写真を撮って加工して発信して……。そうやって「かわいい」を自分で手作りして外にアピールするのが、日本の女の子は、本当に好きなんだな、って思う。
WI 最後のキーワード「リア充」についてはどうですか?
井亀 みんな、もともと旅行も美味しいものも大好きなんだけど、それってSNSでトピックとして発信しやすいことでもある。そういう「素敵ライフ」を外にアピールしていないと「寂しい人に思われるんじゃないか」って不安なのかも。リア充と思われないことが怖いのかな。リア充してないと不安になるみたい。
WI ところで、そもそもネットスラング発祥の「リア充」という言葉がいまや『CanCam』の編集長が思う、時代を示すキーワードになっているのが不思議です。
井亀 そう……でも、いわゆるオタク的なものと、リア充がどんどんクロスオーバーというか、同義語になってきている気がする。昔はもしかしたらそうでもなかったのかもしれないけど、今はオタクの人たちもどんどん明るく、社交的に、外向きになってきているって聞きます。リア充オタクというべきか。『CanCam』モデルの山本美月ちゃんの人気が出始めたのも、自分がアニメオタクだということを認めて公言して、あんなにかわいいリア充のプリンセスみたいで、奥の深い面白い子だなって一部のファンの間で話題になってから。そもそも、女の子はみんな「かわいいもの」のオタクだと思うし。
WI 「かわいいもの」のオタク! それはどういうことですか?
井亀 「かわいい」をつきつめると、どんどんオタクになっていく。アロマディフューザーや柔軟剤が好きで集めまくっている人や、とにかくダイエットについて詳しい人。それに、ファッション自体、つきつめていくとオタクそのもの。でも、そうして好きなものをつきつめていると、それを好きな仲間が集まってきて、より楽しくなっていく。それって、とってもいいことだと思う。そして、ある意味今の不景気が生み出した産物でもあると思う。人とつながる楽しさや充実って、1円もお金がかからないけど、わくわくする。以前の、「もの」を買ったら満足、という「もの」の時代は終わって、どんどん「ひと」「こと」の時代になっている。
WI 若い女性の「幸せ」がどんどん変わってきているということですか?
井亀 そう。幸せが、ものを消費することから体験型になっている。高いものを買うならそのお金で旅行に行く。それはほんと面白いな、ずいぶん変わったな、と思う。私は以前も何度か『CanCam』の編集部にいたことがあるんですが、その頃とは本当に変わっていて、今はビビッドで面白い。
WI 若い女性の消費に関しては、どう変わってきていると思いますか?
井亀 読者の若い子からよく来る反応として「お金がそんなに自由に使えるわけじゃないし、節約しようと思っているのに、『CanCam』を読んだら物欲が止まらなくなってしまったじゃないか、どうしてくれる!」みたいなのは、よくある。とてもよくある。「買い物しちゃいけないのについつい買っちゃったじゃないか、どうしてくれる『CanCam』!」って……(笑)。だから、どうしても節約しなきゃいけないときは、見るとどうしても欲しくなっちゃうから『CanCam』を買わないようにしている、ってのを聞く。昔は、消費上等、消費してなんぼだったけど、今はなるべく買わない、お金を使わないの「ないない運動」をしている。そんな「欲しくなっちゃったじゃないか、もう!」って反応は、昔『CanCam』にいたときは、なかったもの。その頃は、消費が当たり前の時代で、若くてかわいかったらちやほやしてもらえた。でも今は、若い子だけじゃなくて大人もみんなお金がないから、おごってくれる人もいないしね。
読者層の女の子と近く、深く、多くふれあってきたからこそ繰り出される、たくさんの考え。今の時代の女性を考える上で、貴重な声です。
さて、次回はCanCam井亀編集長シリーズ最終回。2014年、こんな時代にしていく! という想いについてうかがいます。(後藤香織)
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