2017年1月9日まで森美術館で行われている展示『宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ』をご存知ですか?
床と四面の壁が全て映像に囲われた空間による、インタラクティブデジタルインスタレーション作品『追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして衝突して咲いていく – Light in Space』です。縦横無尽に飛んでいくカラス達の中、観客はだんだん少し浮遊しているような体験をすることができます。
この幻想的で不思議なアートを作ったのは、プログラマ、エンジニア、数学者、建築家、デザイナー、CGアニメーター、絵師など、様々なスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団であるチームラボ。
そしてこの森美術館プロジェクトの取りまとめを担当している方は、なんと去年チームラボに新卒入社したばかりの方だったんです!
Woman Insight編集部では、チームラボのカタリストである、竹内正人さんにインタビューすることができました。
Woman Insight編集部(以下、WI) 竹内さんは新卒で去年入られたんですよね。それでもう森美術館というビッグプロジェクトを担当されてるなんてすごいです! 一体どんな経歴なのか教えていただけますか?
竹内正人さん(以下、竹内) 新潟生まれなのですが、その後父親が転勤族ということもありアメリカと南アフリカに滞在していました。両親がアート好きだったこともあって、小さい頃からものづくりやアートに興味がありました。どうやったらアートというものに接していけるかと考えて、大学は建築科を選びました。 大学院では東京藝術大学大学院でメディアアートを専攻していて、個人でもアーティスト活動をしていました。
竹内 チームラボのことは大学生時代、同じアート・デザインイベントに出展した際に隣で展示しているのを見て知りました。作品もいいなと思ったのですが、それ以上に作品を作っている人達の空気感が面白いなと思って。そこに自分が入ることによって、作品の可能性を拡張できるのか、ということに挑戦してみようと思いました。
■作品のファンを裏切ってはいけないという気持ち
WI 森美術館のアートプロジェクトではどのような業務を担当されたのでしょうか。
竹内 僕は『カタリスト』という職種で、カタリストは触媒という意味があります。エンジニアやデザイナーという社内でモノづくりをする人たちとクライアントとの間に入り、最良なアウトプットが生まれるようにメンバーのテンションを上げる、つまりモノづくりの環境を整える役割を担っていました。
WI 具体的にはどのようなお仕事内容になるのでしょうか。
竹内 担当業務は、社内外との調整、見積りや契約書の作成、プランニング、コスト管理、スケジュール管理、現場と施工と設計との確認など多岐に渡ります。要するに、色んなバランスを取って、一番ベストなソリューションは何かを考える何でも屋でありますが、プロジェクトチームのリーダーではありません。
WI プレッシャーや大変だったことはありますか?
竹内 『追われるカラス、追うカラスも追われるカラス、そして分割された視点 – Light in Dark』という作品は、元々とてもファンが多いんです。そのファンの方達も喜ぶ新しい体験をつくれるか、というのが気になっていました。期待値が上がってる方達にもう一度すごいと思わせないといけないので……。
WI ファンがついているものをアップデートしていくって、裏切れないので大変ですよね……。
竹内 今までの作品と違うのは、作品空間の視点と、現実空間での立ち位置が完全に一致すると、カラスの軌跡が描く線が現実空間の中に立体的に描かれはじめ、立体に描かれた線の中へ没入して浮遊していく感覚になるんですよ。
WI すごい! 楽しそう。
竹内 例えば「カラスが飛び立ったところで、手前から奥にかけてどすんとくるような音響設計にする」というような細かい調整も、ひとりひとりのエンジニアがしています。
WI いろんな工夫がされているのですね。今回の展示は成功したと思いますか?
竹内 僕がこの間美術館に行ったら30分待ちになっていて。それからInstagramのチームラボのタグを見ていると、森美術館での投稿が最近増えてきていて、みんなすごい楽しんでいただいているようで、成功してるのかなと安心しましたね。作品に対する期待値も上がってきていることを日に日に感じています。次に僕が担当しているのは、シンガポール博物館の常設展示なのですが、それも全世界へチームラボの作品を伝えるためにチームラボ一丸となって頑張っています。
■今後挑戦したいのは「プロダクトでアートを作る」
WI 今後挑戦したいことはありますか?
竹内 チームラボはデジタルアートが有名ですが、僕のバックグラウンドはメディアアートや建築、デザインと分野が様々です。その中で、プロダクトの配置や「プロダクトでアートを作る」ということに個人的に今は興味を持っています。
WI プロダクトでアートというのは?
竹内 たとえば、2016年9月にパリで行なったインテリアデザインの見本市『Maison & Objet Paris 2016』での作品での作品『Forest of Resonating Lamps – One Stroke』です。この作品は、人がランプの近くで立ち止まると、最も近いランプが強く輝き音色を響かせます。また、一見バラバラに配置されているのですが、ランプが光ると一筆書きのように全てのランプを必ず通ります。
WI わ、夢の中みたい! とても綺麗ですね。
竹内 チームの全員で、展示する空間を魅力的にするにはどうしたらいいかなと話していたら、一筆書きで書いたら面白いんじゃないかというアイディアが出て。チームにいた猪子(チームラボ代表)が、もともと東大で数学をやっていた人なので、その場でメモ用紙に条件式をどんどん書いていって。
WI 天才ですね……。
竹内 社内の建築家と数学者にその式を持っていって、実際に問いてもらってランプの配置を何万パターンも出しました。その中から、建築家が、どれがいいかを選んで、でもその計算通りに動くかわからないので、実際にひとつひとつランプを吊り上げる作業も現地でやりましたね。
WI 大変すぎる。気の遠くなるような作業が積み重なってアート作品が作られているんですね。
竹内 いつも展示を見に来てくださる方がいたんですが「ここのブースはいつもチームラボが展示してますよね。今回はどこが担当しているんですか?」と聞かれていて。要するに全然チームラボだと思ってなかったみたいです(笑)。
WI 予想を超えられたということですね。それは嬉しい!
竹内 チームラボとしても、こうしたプロダクトから作品を作り上げていくのが初めてだったので、僕たちも最後の最後まで作品としての正解を出すのに試行錯誤がありました。固定概念として「チームラボっぽいね」と言われるのではなく、チームラボの幅が広がるような作品をこれから作っていきたいですね。
竹内さんのアートへの熱意、新しいものに挑戦する気持ちが伝わってくるインタビューでした!後編では「たくさんのプロジェクトをどんなふうに回しているのか?」「アイディアはどこから生まれるの?」というクリエイターならではのお話に迫ります!(たきたて玄米)
『宇宙と芸術展:かぐや姫、ダ・ヴィンチ、チームラボ』
会期 2016年7月30日(土)2017年1月9日(月・祝)
会場 森美術館 東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53F
開館時間 10:00〜22:00
※火曜日のみ10:00〜17:00
※いずれも入館時間は閉館時間の30分前まで。会期中無休。
休館日 会期中無休
料金 一般:1600円、高校生・大学生:1110円、中学生〜4歳:600円
※表示料金に消費税込
チームラボ/teamLabプログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えて、集団的創造をコンセプトに活動している。47万人が訪れた「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」などアート展を国内外で開催。他、「ミラノ万博2015」の日本館、ロンドン「Saatchi Gallery」、パリ「Maison & Objet」、5時間待ち以上となった「DMM.プラネッツ Art by teamLab」など。2月からシリコンバレーでの個展を開催中。また3月からシンガポール、8月から韓国で巨大な常設展開催中。今後、ロンドンや北京、台湾などで開催予定。チームラボ作品紹介: http://www.team-lab.net/jp/チームラボInstagram: https://instagram.com/teamlab_news/チームラボFacebook: https://www.facebook.com/TEAMLAB.incチームラボtwitter:https://twitter.com/teamLab_netチームラボYouTube: https://www.youtube.com/c/teamLabART
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