ドラマ&映画『HiGH&LOW』で、100発の拳に耐え続けて番長にのし上がった「鬼邪高(おやこう)」の“村山”という予測不能なキャラを演じ、その演技力で多くの視聴者を虜にした俳優、山田裕貴さん。
俳優デビューは、2011年放送の『海賊戦隊ゴーカイジャー』のゴーカイブルー/ジョー・ギブケン役。それから約5年で、映画『ホットロード』や『ストロボ・エッジ』など話題作への出演、さらに今年4~8月は出演した映画の公開やドラマ放送が続き、間もなく開演する初主演舞台も控えています。
「僕はちょびちょび出させていただいているだけなので」という謙虚な返事の裏には、役者としての確かな自信もうかがえるのは、監督からの信頼も厚いから。役者としてここにいたるまでは葛藤も多々あった様子……。そんな山田裕貴・25歳の胸の内を、ロングインタビューで探ってみました。
★インタビュー後ろ半はコチラ→ 山田裕貴が目指すのは“カメレオン俳優”。恋愛に関する大胆な「夢」も
Woman Insight編集部(以下、WI) 山田さんといえば、映画『HiGH&LOW』完成披露試写会での“別人ぶり”が、ちょっとした話題になっていましたね。
山田裕貴さん(以下、山田) あれは各方面からビックリされたみたいです。SNSでも「え、鬼邪高の番長と同じ人ですよね?」というコメントもありました(笑)。でもそれが逆に嬉しかったんです。「俺、だませてるじゃん」って(笑)。
WI まるで村山が憑依しているかのような鬼気迫る演技でしたが、演じてみてどうでしたか?
山田 村山は、演じていていままででいちばん楽しい役だったし、「自分自身なんじゃないか」というぐらい自分にいちばんハマってたと思います。突拍子もない部分は似ていますね。それに、こんな部分が僕に潜んでいたんだなと思ったら、演じていてどんどん面白くなっていったんです。ドラマのファーストシーズンから、監督には「村山は予測不能だから、山田くんに任せる」と言ってくださったので、台本にないこともたくさんしゃべっていたし、そういう動きもありました。たとえば、手を叩きながら「コブラちゃ~ん」と言うあのお決まりの台詞も、僕が現場でやったことがそのまま使われたんです。轟との格闘シーンで、最後にデコピンしたのもアドリブ。どれもやろうと考えて出てきたのではなく、自然にポンポン生まれて、村山という役が作品の中で“生きてる”という瞬間をたくさん感じました。本当に楽しくて、やっぱりクレイジーな役って面白いなって。
WI デビューから5年ほど経ち、作品に続けて出演している今のこの状況をどう考えていますか?
山田 言葉で表すのは難しいですけど……“土台”ができてきたかなって感じです。僕は、映画『レオン』のゲイリー・オールドマンさんがすごく好きで、それを観たときにものすごい衝撃を受けました。他の作品もいくつか観ていて、エンドロールに“ゲイリー・オールドマン”と名前を見つけて「え、どこにいたの?」と思ったことがあったんです。僕もそんな役者になりたい!と思って、今いろんな作品に出させてもらっています。映画を観たときは気づかなかったけど、「あの作品で、あの役やってた人だ!」って後から気づいてもらえるのでもいい。とにかく、どんな作品でもどんなポイントの役でも関係なく、自分に与えた貰える役は全力でやる。そのスタンスが土台となって、お芝居のことを考える余裕が出てきたので、やっと少しずつですけど、見てもらえる役者になってきたのかなという気がしています。
WI 芸能界に入った当初は、自分のことをどう見ていましたか?
山田 芸能界に入った頃、周りと比べて自分は「無個性」だと思っていたので、いろんな役をやりながら、何が自分に合っているかを探してきました。それに僕は昔、あまりに負けず嫌いすぎて、同年代の子の作品は一切観ませんでしたが、いまは作品に出ること、役を演じることは「自分との戦い」だと思っています。声も違えば、生きてきた道も、まとってる雰囲気も違う。だから、その人にしか出せないものって絶対にあるといまはそう思ってます。そこで気づいたのは、自分の中にあるもの、自分が持っている感情や経てきた経験があるものほど、想いが出て演じやすいけれど、自分の中にないキャラを演じることは、まだまだ難しいと感じています。そう思ったら、プライベートでもっといろんな人を話をしたり、ジャンルを超えた人たちと触れ合うことが大事だなって。普段からいろんなことに感情が動く人間であるように、日常的に心がけています。
WI 自分の中にないものを演じることが難しい……ということですが、いままででいちばん難しかった役は?
山田 ドラマ『受験のシンデレラ』(2016年7月放送/NHK BSプレミアム)の沖田裕太ですね。東大を目指すために野球を辞めて、ふたりの女子から言い寄られるという役で、まず「そんなに完璧な高校生はいない」と思ってしまったんです(笑)。それに、なんでも手にしている役は、しっかり役づくりしすぎるとうるさいキャラになってしまうので、僕は自然に演じることにしたんです。だけど、本当の自分は25歳なので、高校生のそのキャラとのギャップもあり、さらに難しさを感じてしまって。考えすぎて複雑にしてしまわないよう、「ちゃんと役を生きよう」と途中からはふっきれましたけど、実際にご覧になった方はどう感じたかな……と。この役は、僕としてはかなり難しかったですね。
WI 制服を着る役が続いてますよね。実年齢とのギャップで、演じることへの違和感はあったりしませんか?
山田 年を重ねるごとに、自分が高校生だった7~8年前の感覚と変わってくるのは当然感じます。でも考え方によっては、大人びた高校生の役や先輩役だったらできると思うんです。年齢のせいでできないと、そこで演じられる役を狭めてしまうのはどうなんだろう、と。「オファーをいただいたらなんでもやります」というありきたりな答えにはしたくないですけど、でも呼んでいただけるなら全力でやりますという気持ちです。ありがたいことに、過去に出演した作品の監督やスタッフの方から「また一緒に」と声をかけてくださることが多くなってきたので、それであればなおさらやるべきだし、自分としても「やりたい」という気持ちが強いです。