WI 今度の舞台『宮本武蔵（完全版）』で脚本・演出を務めるのは、映画『ふきげんな過去』でご一緒した前田司郎監督ですよね。きっかけは、前田監督のワークショップということですが。監督のワークショップなどはよく行かれるんですか？
山田 世間的に“イケメン”のくくりになっていることもあり、少しアイドルっぽい印象を持たれることが多くて、正直に言うと、腹が立つこともありました（笑）。でもそうであれば、出演する作品も考えなければいけないなと思ったし、作品に出たとしても、イケメンやアイドルっぽさを売りにしていてはダメだって考えたんです。だから、そんなイメージを払拭しようと、ある種“道場破り”的な感じで（笑）、2年半前から映画監督のワークショップに行き始めたんです。
WI “道場破り”（笑）。それは「顔だけじゃない」という役者としての自分の存在をしらしめるため？
山田 そうですね……「こういう俳優もいるんですよ。顔だけを売りにしていませんよ」というのをアピールするためと言ってもいいかもしれません（笑）。僕は、観た映画のことを記録しておく“映画ノート”をつけているんです。以前に前田さんが脚本を務めた『横道世之介』や、監督をされた『ジ、エクストリーム、スキヤキ』も観ていて、事務所の方から、「今度、前田監督のワークショップあるよ」と聞いて、すぐに「行きます」と。
WI 自分の考え方を大きく変えるような出来事は、いままでにもありましたか？
山田 僕は、映画『ストロボ・エッジ』の廣木隆一監督に出会ってから、お芝居の考え方がものすごく変わったんです。「人は、泣きたいときに泣いていないときもあるし、怒っているときに笑うこともあるよ」って。たったこれだけの言葉が、僕の中でものすごく響いたんです。「演じるということを“やろうやろう”と思わなくていいんだ。役を生きればいいんだ」という考えに変わりました。実は、前田さんにお会いしたのは、こんなふうに演技への考え方が変わり始めて、すぐのこと。廣木監督から学んだことを、前田監督のワークショップで試したんです。
WI 前田監督の反応はどうでしたか？
山田 前田さんは「自分半分、約半分」とお芝居を考える方で、それが僕の考え方ともぴったりハマったんです。もし人を殺す役を演じることになっても、実際に人を殺す経験なんてできない。それなら、人を殺してしまうかもしれないという感情をふくらましていけば、より説得力のある演技が生まれる……と、そういうことをワークショップで教わりました。僕にとっては新鮮で楽しい時間で、そこで前田さんから「バカなお芝居も真面目に取り組んでくれるんだね」と思ってもらえたみたいです（笑）。前田さんに言われて印象に残っているのが「山田くんって、顔はいいのに残念だよね」って（笑）。僕はその言葉が本当に嬉しかった。実は、今度の舞台『宮本武蔵（完全版）』もそんな役柄なんですよ（笑）。
WI 舞台3作目の『宮本武蔵（完全版）』が初座長となりますが、座長としての特別な思いはありますか？
山田 よく聞かれるんですけど、主人公もどんな脇役も、僕は変わらないと思うんです。もちろん作品には主役はいて、そこに焦点は当たっていますが、僕はいままでいろんな役を演じてきて感じるのは、どの役にもそれぞれに人生があるんです。どんな役であれ、僕は、ただその役を生きるだけ。だから演じる上で、主役も脇役も気持としては変わりません。ただ、主役となると周囲からの注目は必然的に上がるので、「頑張らなくちゃいけないのかな……まとめなくちゃいけないのかな」というのは感じますね（笑）。だけど、こういう性格なので、宮本武蔵という役がすごく成り立つような気はしています。脱力系で、しっかりしていないし、空気が読めない（笑）。いただいた台本を初めて読んだとき、あまりに面白すぎて、自分の台詞も笑って読めなくなっちゃうほど（笑）。そんな台詞がたくさんあるので、『宮本武蔵（完全版）』の舞台を面白くできなかったら、それはもう間違いなく僕のせいです（笑）。
インタビュー後半は、明日公開（予定）。キーワードは、「カメレオン俳優」に「SNS」、そして「恋愛」……？ お見逃しなく！（さとうのりこ）
★インタビュー後ろ半はコチラ→ 山田裕貴が目指すのは“カメレオン俳優”。恋愛に関する大胆な「夢」も
初主演舞台『宮本武蔵（完全版）』
https://musashi-stage.themedia.jp/
2016年8月19日（金）～29日（月）＠東京芸術劇場シアターイースト
映画『青空エール』
2016年8月20日（土）全国公開
http://aozorayell-movie.jp/
【あわせて読みたい】
