【中村米吉さん独占インタビュー】スイーツを食べながら撮り下ろし♡ 「歌舞伎に入門するなら、“推し”を見つけて!」

六月大歌舞伎『夕顔棚』が6/3から上演中! 里の女役の中村米吉さんにインタビュー

古典芸能の世界だけでなく、ドラマや映画など、幅広い場面で存在感を示す歌舞伎俳優の皆さん。その中でも“かわいすぎる女方”と注目を集めている若手のホープ・中村米吉さんがCanCam.jpに初登場! 現在出演中の『六月大歌舞伎』の演目『夕顔棚』に関するお話から、趣味やハマりごと、大好物という甘いものに対する熱い愛まで、その類稀なる話術をもって、たっぷり語っていただきました! 大の甘党である米吉さんがシュークリームを頬張る、キュートなカットとともにお届けします♡

 

今回出演される演目『夕顔棚』について教えてください。

夏の夕暮れの中、長年連れ添った爺さんと婆さんが、縁台で夕涼みをしながら盃を重ねる。やがて盆踊りの唄が聞こえてくると、若い里の男と里の女がやってきて踊り始め、その姿に在りし日を思い出す……という、すごく素敵な作品です。

主な登場人物は爺さん、婆さん、里の男、里の女の4人なのですが、誰も名前がついていないんです。そういう意味ではどこか寓話的というか、昔話のような抽象的なところがあります。私は里の女役で、盆踊りをして、老夫婦に昔を思い起こさせる役どころです。

今は時節柄、お祭りや盆踊りが難しい世の中になってしまいましたけれど、夕暮れ時の趣や昔懐かしいような雰囲気を、少しでも歌舞伎座で感じていただければと思っております。

女方(男性が女性を演じる)として活躍される米吉さんですが、演じる際に意識していることはありますか?

性別を超えるわけですから、昔から言われている技術はいくばくかございまして…。例えば、肩甲骨をくっつけて肩を落として見せるとか、人差し指から小指の4本をくっ付け、親指をしまって手を小さく見せるとか。他には、膝を少し折ったり、正座をするときはお尻を落として身体が小さく見せるようにしたり…。そういった、昔から伝わる決まり事のようなものはありますね。

 

コロナ禍での舞台となりますが、大変なことや、逆によかったことなどはありますか?

やはり、お客さまの足が遠のいてしまったのが一番大変なことではないでしょうか。歌舞伎だけではなく、すべての業界に言えることですよね。

歌舞伎座であれば、今までは基本的に昼夜二部制で、朝から晩まで歌舞伎座にいることもありました。それが近頃は三部制になり、感染対策のためその内の一部にしか出演できなくなりなりました。行ってお化粧をして舞台に出て、お風呂に入って帰るという、非常にコンパクトなお仕事になりまして。いい面は、身体的には非常に楽になったこと。今28歳ですので、この歳から楽してどうするんだって話ですが(笑)。でも、時節柄しょうがないですね。

若い世代からすると歌舞伎というとハードルが高く感じる方もいると思いますが、歌舞伎初心者に向けてアピールするとしたら?

歌舞伎には優れた作品がたくさんありますが、正直、現代には到底受け入れられない ストーリーも多いんです。主君のために自分の子供を犠牲にしたり、潔白を証明するために切腹をしたり…。今回の『夕顔棚』はそういう血なまぐさい事と無縁ですが、はっきりとしたストーリーはあるようでないんですね。反対に、ハチャメチャなストーリーの作品もたくさんあります。そんな多種多様なストーリーの演目がある中で、初心者の方はストーリーを完全に理解しようと思われないほうが良いのかなと思っています。

現代の色彩感覚では思いつかないような色の組み合わせの上、時代考証を無視したような華やかで奇天烈な衣裳であるとか、劇場空間の使い方であるとか、生で演奏される音楽であるとか、歌舞伎ならではの面白さや個性 がたくさんあります。そんなところを頭で理解しようと深刻に考えず、視覚や聴覚などの感覚的な部分で楽しんでいただけたら、少しは気軽にご覧にいだだけるんじゃないかな?

あとは、誰かお気に召す役者を見つけるのも一つの手です。(市川)猿之助の兄さんや、(市川)海老蔵の兄さん、(尾上)右近くんですとか、折に触れて各種メディアで歌舞伎役者を見かけることはあるでしょうし、このCanCamの記事で僕のことを初めて知ってくださる方もいらっしゃるかと思います。「この人の歌舞伎見てみたいな、応援したいな」という役者が見つかった場合、その役者を追いかけるというのは 案外効率的に歌舞伎に親しむ方法ではあるんですよね。一人の役者さんを追うことによって、知らず知らずのうちにいろいろなパターンの演目をみたり、いろいろな役者さんを見ることができますから。ですので、いわゆる“推し”のような人を見つけるのもオススメしておきたいです。あ、別に僕を推せってことじゃありませんからね!!(笑)

そして、試しにいっぺん歌舞伎を観にきてください! 合わなかったと思っても諦めずもう一回観ていただいて、3〜4回観て、もしどうしても肌に合わない! と思われたら、大変残念ではありますが歌舞伎は諦めていただいて、Netflixなどをお楽しみくださいませ…(笑)。冗談はさておき、気に入らないものを無理に見る必要はないですが、もしかしたら気にいるかもしれないので、難しく考えずにまず一度観に来てくださったら嬉しいです。

そして、歌舞伎は幅が広く、色々な作品を持っています。何度も観ていただく中で、必ずやあなたの琴線に触れる作品に出会えるはずです! それだけの力と財産が歌舞伎にはあると僕は信じています。

『夕顔棚』里の女/Ⓒ松竹

 

では、そういった初見の方に向けて、米吉さんのアピールポイントを教えてください!

なんでしょうねえ。多分私、好かれるタイプじゃないですから(笑)。これまで聞いてらしてご理解いただけてると思いますが、重度のおしゃべりなんですよ(笑)。女性って、黙って話を聞いてくれる男の人の方が好きでしょう? それでたまにこう、ぽっと吐き捨てるように何かを言うのがいいんじゃないですか? 私のようにペラペラペラペラ話すのは軽薄だと思われますから。やめた方がいいですよ、そういう癖のある男性の方は。あ、アピールポイント聞かれてんのになに話してるんでしょ…。こういうところですよね(笑)。

 

確かに、話術がものすごいですね(笑)。

話術が優れているのと、次から次に「ああでもない、こうでもない」と喋って人を煙に巻くのとは違うと思うんですよねえ。僕は煙に巻く方なのでね。ここまでいろいろと話させていただきましたけれど、聞き直してもらうと内容がある部分は5分で事足りるんじゃないかしら。過度な修飾が入ってますので(笑)。

なるほど(笑)。では、米吉さんが毎日欠かさずすることはありますか?

これと言ってないんですが、強いて言うなら朝晩の食後に緑茶を飲みます。家族の中で手が空いている人が淹れて、全員で飲みます。よく飲んでいるのが、『うおがし煎茶』。湯冷ましをする必要がなく、手軽な上に美味しいんです。あ、その時の食事の内容や、デザートにケーキなどの洋菓子があれば、コーヒーや紅茶をきちんと入れて飲むこともありますよ。

 

米吉さんは、甘いものがお好きだそうですね。

最早、この世から甘いものがなくなればいいのにと思うくらい好きです(笑)。身体にいいんだったら問題ないですが、残念なことにあまりよくないでしょう? 太るし、カロリーも高いし、血糖値も上がる。だから、無くなってくれれば それはそれでこんなにいいことはないんですけど、そうなると世界中で暴動が起きかねないので、困ったものです(笑)。

特にお気に入りのスイーツはありますか?

非常に難しい質問ですよ、それは…(考える)。今頭に浮かんだのは、東京會舘のマロンシャンテリー。初めて食べたときは感動しました。形がまた優美で、上流階級の食べ物って感じでしょう。あと私、熱されたあんこが好きなんですよ。“東京三大たい焼き”と言われる人形町の「柳屋」、麻布十番の「浪花家総本店」、四谷の「わかば」は全部行きました。あとはしっかりしたプリンが好みなので、モロゾフのプリンも大好きですね。他には……こんなのひたすら喋り続けちゃいますよ、甘いものの話だったら。ここから先は次の機会に…また、呼んでくださいね!(笑)

あ、忘れちゃいけないのはとコンビニスイーツ。 あれは本当にとんでもない。あの値段であのクオリティ、そして次から次へと新商品が出る訳ですから、世の中の専門店は困っちゃいますよ。シュークリームひとつとっても間違いないですからね。

実は、なぜかお酒を頂いたあとにと甘いものが食べたくなるんですよ。なので、コロナ前は帰り道で、コンビニに寄ってコンビニスイーツをついつい買ってしまうこともありました。コンビニはどこにでもあるし、24時間営業だし、本当にけしからんですよ! こっちからは止められないし、 これもなくさないといけないかもしれない(笑)。

…さっきから好き放題言っていますが、甘いものが本当に好きなんです。可愛さ余って憎さ百倍というやつです(笑)。これは昔から個人的に提唱してるんですけど、甘いものを世界中にばら撒けばきっと争いはなくなると思います。甘いものは、いつだって私たちを幸せな気分にさせてくれますから。

六月大歌舞伎
2021年6月3日(木)~28日(月)
第一部(一、御摂勧進帳 二、夕顔棚)/午前11時~
第二部(桜姫東文章)/午後2時10分~
第三部(一、京人形 二、日蓮)/午後6時~
※開場は開演の40分前を予定
【休演】7日(月)、17日(木)
劇場:歌舞伎座

『夕顔棚』
旧盆の夕暮れ、夕顔棚の下で爺と婆が湯上がりの夕涼みを楽しんでいると、そこへ盆踊りの唄が聞こえてきます。この数年、世の中が落ち着かず盆踊りが催されるのは久しぶりのこと。その唄に耳を傾けるうち、二人は昔を思い出し…。
のどかな田舎の風景のなか、夕涼みを楽しむ老夫婦を情感豊かに描いた秀作。昭和26(1951)年に歌舞伎座で初演された清元の舞踊で、若き日を懐かしむ二人の姿が、温かくユーモラスに描かれます。
詳しくは公式サイトにて

中村米吉さんPROFILE
五代目中村歌六の長男として生まれる。2000年7月、歌舞伎座『宇和島騒動』の武右衛門倅武之助で、五代目中村米吉を襲名し初舞台。生粋の甘党で、インスタグラムでは“甘いものは世界を救う”のハッシュタグで日頃食べたスイーツを投稿している。
Instagramアカウント
撮影/丸山剛由 取材・文/大下杏子

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