次世代を担う歌舞伎界のホープの意外な一面って?
舞台だけではなく、ドラマや映画など、さまざまな場面でその存在感が際立っている歌舞伎俳優。その中で次世代を担う注目の若手俳優のふたり、市川染五郎さんと市川團子さんがCanCam.jpに初登場! 後編では、お互いへの思いやプライベートでのハマりごとまで、その素顔にグッと迫ります!
『菅原伝授手習鑑』『仮名手本忠臣蔵』と並んで、歌舞伎の三大名作と呼ばれる屈指の名作。全五段で構成され、中でも特に人気が高い四段目の「川連法眼館」(通称・四の切)を、今回の11月歌舞伎座公演で上演。市川染五郎さんが源 義経役、市川團子さんが駿河次郎役をそれぞれ初めて演じます!
■陰と陽。正反対に見えるふたりに共通するのは?
ーー同世代で共演経験もわりとあるおふたりですが、お互いの印象は?
染五郎さん(以下敬称略):「そうですね・・・ずっと前から”四の切”(今回の演目)がやりたいっていう話は聞いてましたね。とにかく情熱がすごいというか。好きでやってるんだなっていうのが伝わってきてました。以前一緒に出させていただいたトークイベントでもそんな話をしていたし、好きを通してるって印象です」
團子さん(以下敬称略):「なんかハズいな(笑)。染五郎さんはクールなイメージがあると思いますし、実際喋っても最初はやっぱりそういう感じなんですけど、歌舞伎の話をしていると内側から歌舞伎への情熱があふれてくるというか。染五郎さんが言ってくれたのと同じになっちゃいますが、『こいつ歌舞伎好きなんだな』って伝わってきますね。それと、僕が見えないような視点を持っているところも尊敬してます。僕はどちらかというと思ったことをすぐバーッと言っちゃうタイプなので、染五郎さんは冷静に客観的にいろんなことを見ていて、それがすごいなって。全体を見られる役者さんなんだなって思います。あとは・・・僕がいつも横ですごいボケまくるんですけど、それを苦笑いして見てるのが好きです(笑)。でも多分、ホントに笑ってるんですよ、心の中では。そうだよね?そうだよね?」
染五郎:「・・・。(笑)」
ーー團子さんは以前歌舞伎の道に進むか迷った時期もあったそうですが?
團子:「小学校5,6年生とか中学1年生の頃って、物心はついてるとはいえ、そこまで深くは人生のことを考えていないと思うんですよね。それで僕はただただ、これはダメなことではあると思うんですけど、舞台に立つということより拍手がもらえるということ好きだったんです。でも、祖父(市川猿翁)の本を読んでいくなかで、祖父も何回か映画監督になりたいとか悩んでたりしたんだなってことがわかって。悩むことがダメなことかと最初は思ってたんですが、別にそうでもないんだなぁって思って、自分の中でかみ砕いていって。去年の歌舞伎で自分の演技が果たしてどうなのかとか結構いろいろ悩んだんですけど、祖父が見に来てくれたりして、最終的にはやっぱり好きだなって改めて感じました。なので、祖父の本が僕を導いてくれたというか、決意を固めさせてくれたっていうのはあると思います。もちろんそれ以外にも、いろんな物語の歌舞伎のここがすごいとか書いてありますし、そういうのを読んで、拍手がもらえるとかよりも、純粋に歌舞伎が好きだなって思い至りました」
染五郎:「番最初に共演させてもらったのがもう7年ぐらい前なんですが、まあ自分の人見知りな性格もあるんですけど、本当に唯一といってもいいほどですね、ここまで仲が良いのは…」
團子:「ガチ照れる!ガチ照れる!(笑)」
染五郎:「父が、将来『あのとき胡蝶を一緒にやったね』って言えるように一緒に胡蝶をさせたってことを話していたんですが、今回の舞台も将来話せたらいいなと思いますし、一緒にやれて単純にうれしいです」
ーーちなみに、お互いここは相手に負けない!というところはありますか?
團子:「え!?・・・身長!身長は負けん!(笑) 身長があっても女方ができなくなるのでどうかってところなんですけど」
染五郎:「今いくつ?」
團子:「177(cm)」
染五郎:「僕は173(cm)くらい」
團子:「染五郎さんは女方もできる身長だと思うんですけど、僕はしっかり腰を折らないと…。なので、現代的に見たら身長が高いのはいいことなのかもしれないですが、歌舞伎的に見たらもしかしたら負けてるのか・・・? でも、とりあえず身長は負けません!」
染五郎:「・・・僕は、喋らなさですかね」
團子:「それは確かに(笑)。僕は無理ですね、性格的に」
染五郎:「意識して喋らないようにしてるわけではないんですが・・・そこは父譲りなのかもしれないです。父もいろいろなことを考えているタイプなので。僕も言葉にはしてないですが、いろんなことを歌舞伎に繋げて考えていたりします。日常のふとした瞬間のできごとも、『これって歌舞伎にできるんじゃないかな』とか」
ーーおふたりとも多忙だと思いますが、何か最近ハマっていることはありますか?
團子:「BTSとITZY! 自粛期間中はずっとYouTubeとかを観ていて、『DNA』のテテパートは踊れるようになりました。テテが特に好きなんですが、いっくん(染五郎さんの愛称)ってテテに似てませんか? 僕はもう毎日推しに会えてるようなものなので、眼福です!(笑)」
染五郎:「そうなんだ・・・その辺は全然わからない(笑)。僕は最近じゃなくずっとなんですが、マイケル・ジャクソンですね。マイケルの踊りを見ていると、それこそこれを歌舞伎に取り入れられないかな、とか考えちゃいます。操り人形みたいに踊るのとかパントマイム的な振りも多いので、何か活かせないかなって」
ーー歌舞伎役者の方のプライベートって気になるのですが、休日や空き時間には何をしていることが多いですか?
染五郎:「僕が愛犬の散歩係なので、毎日犬の散歩をしてますね。あとは映画を観たりとか。いちばん好きな映画は『JOKER』で、小さい頃からJOKERというキャラクターが好きで、予告編を何度も観るくらい本当にずーっと公開を楽しみにしてたんです。笑いの下に悲しみを隠しているところとか、その悲哀に心が惹かれます」
團子:「時間があれば、気が済むまでYouTubeを観ちゃいますね。あと最近また本への熱が再燃してきて、上橋菜穂子さんだったり昔から好きな星 新一さんの本を読んだりもしてます。『鬼滅の刃』も好きですし、『僕のヒーローアカデミア』とか韓流ドラマとか・・・いろいろ観たり読んだりしてます」
ーー最後に『義経千本桜』に限らず、おふたりのような若い世代に向けた歌舞伎の魅力を教えてください!
染五郎:「歌舞伎には筋書(パンフレット)というあらすじが書かれたものがあるんですが、それには結末までしっかり書かれているので、あらかじめ話の内容をわかってから観るというのもいいんじゃないですかね。特に古典のものは言葉が難しかったりしますし。でも、歌舞伎は感覚で楽しむものなので、変に勉強しなきゃ、と構えるのではなくて、色彩の美しさや劇場のきらびやかさを素直に楽しんでいただけたらいいのかなとも思います」
團子:「同じクラスの全然歌舞伎を知らない人に『歌舞伎ってどう思う?』って聞いてみると、やっぱり『敷居が高そう』とか『女性は着物着ていかなきゃいけないんでしょ?』とかそういうイメージみたいで、でも全然そんなことはないですし、どんな服で来たって大丈夫だよ、というのはまず伝えたいですね。あとは、僕もあらすじを見てから鑑賞するの、オススメです。ネタバレって普通はあまりよくないこととされますけど、歌舞伎の場合は知っていたほうが楽しめるんじゃないかなって。アクションが多いような演目を選べば、YouTubeじゃないですけれど、視覚的にも楽しめると思います。他にも衣裳でいったら、普通に街中で組み合わせていたらちょっと変だなと思うような色も、歌舞伎の衣裳で見るとすごく華やかでかっこよかったりとか。歌舞伎を見よう!っていうのはハードルが高く感じるかもしれないですが、ぜひ一度、観に来ていただけたらうれしいです!」
年相応の好奇心と、凜とした芯の通った大人な一面。今回のインタビューで、ふたりのもつ多面的な魅力の一部が垣間見えました。静と動、正反対のようで、歌舞伎に対する情熱ではリンクしあう染五郎さんと團子さん。これからの活躍が楽しみなふたりの演じる姿を観に、ぜひ一度、生の歌舞伎座の舞台へ足を運んでみてはいかがでしょうか♡
市川團子さん衣装:シャツ¥18,000・ジャケット¥53,000・パンツ¥26,000・シューズ¥34,000(すべてLAD MUSICIAN/ラッド ミュージシャン 原宿) ネクタイ¥12,000(NULABEL/スタジオ ファブワーク) その他/スタイリスト私物