歌舞伎界の次世代を担うふたりの共演に注目!
舞台だけではなく、ドラマや映画など、さまざまな場面でその存在感が際立っている歌舞伎俳優。その中で次世代を担う注目の若手俳優のふたり、市川染五郎さんと市川團子さんがCanCam.jpに初登場! 現在出演中の『吉例顔見世大歌舞伎』の演目『義経千本桜』に関するお話やコロナ禍で変化したこと、改めての舞台への思いからプライベートでのハマりごとまで、その素顔にグッと迫りました。
『菅原伝授手習鑑』『仮名手本忠臣蔵』と並んで、歌舞伎の三大名作と呼ばれる屈指の名作。全五段で構成され、中でも特に人気が高い四段目の「川連法眼館」(通称・四の切)を、今回の11月歌舞伎座公演で上演。市川染五郎さんが源 義経役、市川團子さんが駿河次郎役をそれぞれ初めて演じます!
■名作『義経千本桜』に出演することや、舞台への思いとは?
ーー『義経千本桜』は歌舞伎を代表するような演目のひとつですが、出演することが決まったときの率直な感想は?
染五郎さん(以下敬称略):「そうですね…まずは、去年の11月に歌舞伎座で連獅子をさせていただいたときからちょうど1年ぶりの舞台だったので、とにかく歌舞伎の舞台にやっとまた出させていただくことができるっていうのが、本当にうれしかったです。役のことで言うと本当に大きな役ですし、自分がやらせていただいていいのかっていう思いはすごくあったんですけど、義経というキャラクター自体が大好きなので、不安な気持ちももちろんありましたけど、うれしいっていう気持ちのほうが大きかったですね」
團子さん(以下敬称略):「僕も同じような気持ちでしたね。僕は3月にも舞台をやらせていただく予定だったんですがコロナでなくなってしまって・・・。1月に出演させていただいた舞台でちょっと新たな発見があったりもしたのでそれを反映したかったのですが、することができなくて悔しかったんです。そんな思いもあって、今回の舞台に立たせていただけたのは、いつも以上にうれしかったですね。本来であれば亀井六郎役を経てから駿河次郎役をやらせていただくのが通常なんですが、今回いきなり駿河役をやらせていただくとなったのでもちろん緊張はしてますけど、しっかりと勤めたいなっていう気持ちですね」
ーー若い世代からすると歌舞伎というとハードルが高く感じる方もいると思いますが、歌舞伎初心者に向けて『義経千本桜』をアピールするとしたら?
染五郎:「『義経千本桜』も含めた11月歌舞伎は四部制といって4つの舞台に分かれていてそれぞれだけでも観られるので、そこは初めての方でも観に来ていただきやすいんじゃないかなと思います」
團子:「僕の個人的な意見なんですけど、全体としては、いろんな作品がある中でもこの『義経千本桜』は特に衣裳が綺麗だなって思っていて。義経は本当にかっこいいんですよ! あとは、狐が出てくる話なんですが、狐っぽいかわいらしい動きだったり派手な動きもあるので、あまり歌舞伎に馴染みのない方が観ていただいても視覚的なところから楽しめるんじゃないかなと思います」
ーーコロナ禍での舞台となりますが、今までとは違って大変なことや、逆に今だからこそ、なことはありますか?
染五郎:「このコロナ禍になってから初めて舞台に出させていただくので始まってみないと何とも言えないんですけれど、歌舞伎座のコロナ対策は本当にしっかりしていますので安心して来ていただきたいなとは思っています。自分の話となると、7月に図夢(ずうむ)歌舞伎という配信の歌舞伎に出させていただいたんです。そのときにも『この時期にどうやったら歌舞伎をひとりでも多くの方に見ていただけるか』ということを父(松本幸四郎)が中心となって考えて動いていたので、それに参加できてうれしかったし、やっぱりこの時期をプラスに考えてというか逆手にとってというか、この時期だからできることができたのはうれしかったですね」
團子:「いいこととしては・・・すごい新しい方向に向かってるなって感じることですかね。図夢歌舞伎もそうですけど、YouTubeに猿之助さんがスーパー歌舞伎Ⅱ『新版オグリ』のリモート企画を出されたりとか、歌舞伎の舞台だけではなくて舞台以外の部分も配信できる時代に適応するきっかけのひとつになったのかなという風には思いますね。つらいことは・・・お稽古のときにマスクをするのが鬼苦しい(笑)。踊りをしていると汗をかくし息も荒くなるのでそこは大変だなって思ったりもしますけど、全体的に見たらプラスなこともたくさんあるような気がしています」
ーーそういった新しい取り組みも前向きに考えていらっしゃるんですね! では、歌舞伎でも歌舞伎以外でも、今後チャレンジしてみたいお仕事はなにかありますか?
染五郎:「そうですね…ずっと変わらず一番やらせていただきたいと思っているのは、勧進帳の弁慶ですね。でも襲名を機にお芝居について色々考えるようになって、ちょっと変化も生まれてきています。それまでは『弁慶がやりたい』ってほぼその思いだけでやってきたような感じだったんですが、立役(男性役)も女方もできる父を見ていると、幅広いジャンルの役をできるような役者になりたいなと思うようになりました。それは歌舞伎の中の話でもありますし、歌舞伎以外の映像や舞台でも挑戦できたらいいなと思っています」
團子:「やりたいことですよね…うーん…。いろんなジャンルへのお話を例えばでさせていただくのは本当にありがたいんですが、今はまだ学生ですし、とりあえず基本の古典をたくさんやらせていただいて勉強したいなっていう気持ちが一番ですね。もし将来、何十年後とかであれば、今のK-POPのダンスみたいにキレキレの日本舞踊とかがあってもいいのかな・・・って思ったりもします。あとは、グラフィックや映像が合成された作品とか、僕じゃなくても誰かやられると思うんですけど、そういうのがあったらすごい可能性が広がるのかな、なんて。でもとりあえず今はたくさん古典を勉強させていただいきたいです!」
伝統的な古典の舞台をしっかりと引き継ぎつつ、今の時代に合った新しい歌舞伎の魅力の発信についてもいろいろと思いを巡らせている姿が印象的だったおふたり。後編では、よりプライベートな一面やふたりの関係性が垣間見えるインタビューを公開します。どうぞお楽しみに♡
市川團子さん衣装:シャツ¥18,000・ジャケット¥53,000・パンツ¥26,000・シューズ¥34,000(すべてLAD MUSICIAN/ラッド ミュージシャン 原宿) ネクタイ¥12,000(NULABEL/スタジオ ファブワーク) その他/スタイリスト私物