糖質減らしすぎはNGです!管理栄養士に聞いた、改めて知りたい糖質制限ダイエット

何かと食べ過ぎちゃう「食欲の秋」。そろそろダイエットしなきゃ…! そんなとき、やりがちなのが、慌てて糖質を減らして帳尻を合わせようとすること。でも、むやみに減らすと、かえって太りやすくなるなど、いろんなリスクがあるそうなんです。

今回は、ダイエットに詳しい管理栄養士の安中千絵さんに、糖質制限ダイエットの正しいやり方を伺いました。

■まずは「糖質制限ダイエット」を正しく理解!

――「糖質を減らすとやせる」と、よく耳にするようになりました。糖質制限ダイエットとは、そもそもどういうダイエット方法なのでしょうか?

「糖質制限ダイエットとは、食事の糖質の摂取量を制限する食事療法のこと。『糖質制限』『低炭水化物ダイエット』『ローカーボダイエット』などの呼び方がありますが、基本的に、食事の中で、糖質の多いものを控え、たんぱく質や脂質の割合を増やす食事法です。
糖質を控えることで、全体のエネルギー量を控えたり、大量の糖質摂取で上昇する血糖値を下げようとして分泌される、脂肪の合成に関わるホルモン『インスリン』の分泌量を抑えることで、体脂肪を減少させたりします」

■糖質制限ダイエット中に気になるコト、教えて!

最近では、糖質を制限するダイエットを一度はチャレンジしたことのある人も多いのでは? そこで、糖質制限ダイエット中に気になることを安中さんに聞いてみました。

――昼と夜だけ糖質をゼロにしたら、やせていきました。このまま続けても問題ないですか?

「糖質をゼロにするとやせるスピードが早いので、無理をしすぎて体調不良になったり、食物繊維不足で便秘になったりすることがあります。昼夜の糖質をゼロにすると、おそらくスーパー糖質制限という厳しい糖質制限食の糖質量くらいの摂取になるかと思いますが、これは長期で安全が保証された食事法ではなく、専門家の指導下でやらないと体調を崩すこともあるため危険です。

糖質を減らす場合は、たんぱく質や脂質をその分増やし、食物繊維もたっぷり摂る必要があります。単純に糖質を減らし、摂取エネルギー量自体を大幅に減らしている場合、脂肪だけでなく、筋肉も減らしてしまって、基礎代謝量を低下させ、やせにくい身体を自ら作ってしまうことにもなりかねません。厳しい糖質制限を行うと、こうしたリスクがあることを知っておきましょう」

 

――スーパー糖質制限の糖質量はどのくらいですか?

「スーパー糖質制限食では、1日の糖質摂取目標量が30g-60gほどになります。1日に脳が必要とするエネルギー量だけでも、400Kcal程度、これは糖質量だと100gほどです。脳が最も効率よく使えるエネルギーは糖なので、糖質量が1日に必要なエネルギー量の20%を下回るような厳しい糖質制限は、身体にとってストレスがかかります。厳しい糖質制限では、身体の中でストレスホルモンが増えたり、甲状腺機能が低下したりといった研究報告があるほか、長期に続けた場合の安全性がまだ分かっていません」

 

――20代女性が糖質制限ダイエットをする場合、糖質は、だいたいどのくらい摂れば良いのでしょうか?

「20代の女性が1日に必要なエネルギー量は、約2,000Kcalほどになりますが、そのうちの30-40%程度を糖質から摂るくらいが、無理のない範囲の糖質制限といえます。カロリーだと600-800Kcal、糖質量は150g-200g になります。これだと、毎食、軽くお茶碗一杯のごはんを食べて、お菓子は食べないくらいの糖質量になります」

――主食におすすめの食材を教えてください。

「主食は精製度合いの低い穀物のほうが、脂肪を合成するホルモンであるインスリンの分泌を控えることができるので、お米なら玄米や、雑穀やもち麦などを混ぜたものがおすすめ。パンなら、全粒粉やライ麦を使ったものがおすすめです。
また、ご飯を主食にするのではなく、じゃがいもやさつまいも、かぼちゃ、豆など、糖質が多いイモ類や根菜、豆類を主食代わりにするのもいいですね。葉物野菜は糖質が少ないので、量は制限せずに食べてOK。

血糖値の上昇を抑えつつ糖質を摂取するためには、食物繊維がたっぷり摂れる主食を取り入れることも有効です。食物繊維が多く含まれる食品を一日一食でも白米と置き換えて摂取することから始めてみるのもおすすめです」

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――「食物繊維がたっぷり摂れる主食」とは、具体的にどんなものですか?

「まず、精製度の低い穀物。玄米や雑穀米、麦、オートミールなどが手軽に手に入りやすく、食事に取り入れやすいでしょう。お米であれば、雑穀米ミックスやもち麦などを混ぜたものからチャレンジすると食べやすいでしょう。また、お米に寒天パウダーを混ぜて炊くことでも食物繊維が取れるので、玄米や雑穀米が苦手な白米好きさんにおすすめです。

お好み焼きやパンケーキなど粉もの料理をつくる場合は、小麦粉の量を減らして、おからパウダーやオートミールでかさ増しすると食物繊維が摂れてヘルシーになります。

また穀類にとらわれず、豆や芋に代えるのもおすすめです。特に豆は、穀類に比べて食物繊維が多く、たんぱく質やミネラルも豊富なので、糖質を控えたいときの主食代わりに積極的に利用すると良いでしょう。
最近では、食物繊維がたっぷり摂れる主食商品も増えているので、それらを利用する方法もあります」

食物繊維がたっぷり摂れる主食商品の例としては、玄米を発芽させ、食物繊維が白米の約5倍摂れるというFANCLの『発芽米』や、穀類の中でも食物繊維の含有率が高く、特に水溶性の食物繊維が米や小麦に比べて多く含まれている「もち麦」を使ったはくばくの『もち麦そば』、植物性タンパク質と食物繊維がたっぷりの黄えんどう豆をまるごと使ったミツカングループ 『ZENB NOODLE(ゼンブヌードル)』というパスタなどがあります。

――主菜や副菜で意識的に摂ったほうがいい食材や栄養素はありますか?

「主食を減らすと、食事の全体量が減って便秘になってしまうことがあるので、主菜や副菜では食物繊維が多い野菜やきのこ、海藻類は積極的に食べましょう。これらは血糖値上昇を抑制する効果もあるので、量は気にせずたっぷり食べて。

またダイエット中に筋肉を減らさないため、肌や髪をつくる材料にもなるたんぱく質は、毎食、肉や魚、大豆製品、たまごなどを最低でも手のひらの大きさくらいの量は食べるようにしてください」

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――糖質制限ダイエット中にお酒を飲みたいときは、どのお酒やおつまみがおすすめですか?

「お酒は、作り方によって糖が含まれているものと含まれていないものがあります。糖が含まれていないお酒は、焼酎やウィスキー、ウォッカなどの蒸留酒です。蒸留酒を、ロックや水割り、ソーダ割などで飲む分には、糖の摂取は控えられます。反対に、糖が含まれているお酒は、ビールやワイン、日本酒などの醸造酒です。
ダイエット中に飲むのであれば、糖質の含まれない蒸留酒がおすすめですが、アルコール自体にもカロリーはあり、アルコールを身体が代謝している間は、糖や脂肪の分解が止まってしまうので、ダイエット中のお酒はやはり控えめに。ハイボールやレモンサワーなど1-2杯にとどめて。
おつまみは、定番の居酒屋メニューの枝豆、焼鳥、ほっけ焼き、冷奴などが、糖質が少なくたんぱく質が多いのでおすすめです」

早くやせたいからといって、糖質をたくさん減らすダイエットにはリスクがあることがわかりました。糖質といえばやっぱりご飯やパンなどの主食なので、ポイントは主食をうまく調整しながら、栄養もキープしつつ糖質を適量摂ることにありそうです。

●教えてくれた人…安中千絵(あんなか ちえ)さん
管理栄養士。タニタなどを経て独立。健康商品の企画開発コンサルティングや、レシピ開発に携わる。著書に「太らないのは、どっち!?」(青春出版社)、「おやつで痩せる」(PHP研究所)など。