医師に聞いた!睡眠の質を良くする12のコツ
すっかり春らしい陽気で日向ぼっこ日和♡ 猫が外で気持ちよさそうに寝ているのを見るとつい羨ましくなりますよね。
「春眠暁を覚えず」というフレーズにもあるように、春の眠りは心地よくていつまでも眠っていたくなるものですが、なかなかそうはいかないのが現実……。仕事や家事、育児などの忙しさやストレスから睡眠の悩みを抱えている人が多いのではないでしょうか。
睡眠時間の確保ができないなら、少しでも睡眠の質を向上させたいですよね! 今回はそんな方のために株式会社協和が医師の山下あきこ先生に聞いた話をもとに、睡眠の重要性と睡眠の質を上げるコツをご紹介します。
心と体の健康には良質な睡眠がカギ!
◆健康のカギとなる自律神経
自律神経は、胃腸、心臓、血管を動かし、汗や体温を調整し、体を一定の状態に保つ、司令塔のような働きをしており、交感神経と副交感神経の2つに分かれます。
交感神経は活動するときに活発になり、筋肉を緊張させたり、心臓の鼓動を早くします。一方、副交感神経はリラックスしているとき優位になります。体を休めて栄養を吸収するメンテナンスの時間ですので、筋肉や血管は緩み、胃腸は活発に働きます。
自律神経の働きが良くなることで、心も体も調子が良くなります。
◆自律神経が乱れる原因は緊張と睡眠不足
自律神経が乱れる原因のひとつは、交感神経が活発になり過ぎていること。現代人は仕事や人間関係で緊張状態が長くなり、昔の人に比べるとかなり長い時間、交感神経を働かせ続けています。
ふたつめに、副交感神経が活発になる深夜から朝にかけて、質の良い睡眠が取れていないこと。人間の体は、昼の光で交感神経が、夜の暗さで副交感神経が活発になります。現代では24時間常に光が灯せるので、太陽の動きや体内時計を無視した夜型の生活を続けていると、自律神経が乱れ、体調が悪くなります。
日中交感神経が過剰に働いている私たちは、夜に副交感神経を働かせる睡眠の時間をしっかり取ることで自律神経の乱れを防ぎ、免疫力を高め、病気の予防などに繋げられるのです。
◆良質な睡眠に欠かせないホルモン「メラトニン」
メラトニンとは睡眠の質を上げる重要なホルモンです。朝の過ごし方と栄養の摂り方が良い睡眠のポイントになります。
メラトニンは「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンから作られます。セロトニンが良く分泌されると夜ぐっすり眠れて、昼間の幸福感も高まる、嬉しいホルモンです。
これらのホルモンはこの後紹介する、睡眠の質を向上させるコツにも大きくかかわってくるのでぜひ覚えておいてください!
睡眠の質を向上させる12のコツ
睡眠が私たちの心と体の健康に大きくかかわり、重要なことがわかりましたね。健康を損なわないように睡眠の質を向上させるには、どうしたらよいのでしょうか。早速見ていきましょう!
【1】睡眠サイクルを一定にする
夜勤勤務や海外出張で睡眠サイクルがずれると、体のダメージに繋がります。できる限り寝る時間と起きる時間を固定し、睡眠サイクルを一定にしてみましょう。週末の寝溜めは、社会的時差ぼけと言われ体に良くありません。
【2】寝る1~2時間前に入浴する
寝る時間に向かって体温を下げていくと寝つきが良くなります。暖かいお風呂に入るなら、寝る1~2時間前に済ませておきましょう。寝る前ならば、ぬるめのシャワーがお勧めです。寝室の温度は少し涼しめのほうが体温が下がります。
【3】スマホやテレビは寝る90分前までに消す
ブルーライトはメラトニンの分泌を抑制してしまうため、寝つきが悪くなります。パソコン、スマートフォン、テレビなどブルーライトを発生させるものは寝る90分前から消すのが理想です。
特に注意が必要なのが至近距離でブルーライトが入るスマートフォン。就寝前のSNSやネット検索は、さらに興奮や覚醒を促してしまうので、できるだけ止めましょう。夕方以降の自宅の照明を徐々に暗くしたり、ブルーライトカットめがねを活用するのもお勧めです。
【4】お気に入りのアロマで寝付きをよくする
香りを認識する嗅神経は脳から直接出ており、香りがダイレクトに脳に伝わります。神経を鎮めるラベンダーは寝つきを良くします。香りを選ぶときは効能よりも自分が好きな香りを選ぶと良いでしょう。
寝具や部屋にスプレーしたり、入浴剤、ハンドクリームを使うのもお勧めです。
【5】寝室の明かりはすべて消す
寝室はできれば真っ暗にするのが良いです。アイマスクをしても、皮膚が光を感じてメラトニンを抑制します。
子供の場合は、弱い光でも、点灯下の就寝は近視になる確率がアップします。子供と同じ部屋で就寝する方は気をつけましょう。
【6】仰向けで寝る
寝る姿勢は仰向けがお勧めです。仰向けは、胸郭が開きやすく、全身の筋肉がリラックスしやすい体勢です。横向きでは、片方の肩や腕に重力がかかり背骨や歪みの原因になります。ただし、睡眠時無呼吸症候群の方は横向きのほうが、空気の通りが良くなります。
【7】起床後、30分間太陽を浴びる
朝の太陽光が、セロトニンを分泌し、入眠後はじめ90分の深い睡眠に有効です。
特にお勧めなのが、6時~8時30分の間に太陽光を30分以上浴びること。晴れた日の屋外は、室内と比べて100倍以上の明るさがあるため、屋外に出るのがいいでしょう。難しいときには窓辺で過ごすのも有効です。
このとき、目と皮膚の両方で光を浴びることがポイント。「カーテンを開ける」「洗濯物を干す」「窓際で朝食をとる」「通勤でひと駅歩く」などの工夫をして見ましょう。
【8】日中にリズム運動をする
昼間に体を動かすことも重要です。特にリズム運動をするとセロトニンの分泌を促すためお勧めです。運動はトレーニングと勘違いする方もいますが、激しい運動は不要です。身近にできるウォーキングやゴルフの素振り、硬いものをよく噛むことでも構いません。
いつでもどこでも気軽にできる呼吸瞑想は特にお勧め。腹筋を縮めたり緩めたりする腹式呼吸を午前中にすると良いでしょう。
リズム運動は寝る4~5時間前までに済ませましょう。就寝前のハードな活動は快眠には逆効果なのでご注意を。
【9】カフェインは午後2時までに飲む
カフェインはアドレナリンなどの分泌を促進させ、興奮や覚醒の作用があります。就寝時に体内に残っていると寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなります。カフェインを飲んだ後、血液中で半分の濃度になるまで8時間かかります。飲むなら昼食後2時頃までがベターです。
一方、カフェインにはメリットもあります。朝飲めば目覚めが良く、日中の集中力や注意力をアップし、がん予防の効果も。飲むタイミングを考え上手に付き合いましょう。
【10】アルコール摂取量をコントロールする
アルコールの摂り過ぎは睡眠の質に影響します。眠りの前半にはレム睡眠の状態が少なくなり、記憶の整理ができません。飲酒した翌日に前日の記憶を失ったりするのはこれが原因です。
寝はじめは深い睡眠になりますが、その後は浅い眠りが続き熟睡感が得られません。また、アルコールの利尿作用でトイレに目覚める確率が上がり、さらに眠りを阻害します。アルコールは摂取量をコントロールしたり、週に2~3日の休肝日を作りましょう。
【11】睡眠に良い食事を心がける
幸せホルモンのセロトニンが多く含まれるたんぱく質を朝食に、メラトニンが多く含まれる葉物野菜を夕食に摂りましょう。睡眠ホルモンのメラトニンは、セロトニンから作られ、セロトニンはトリプトファンから作られます。
トリプトファンは体内では生成できない必須アミノ酸で、食事からこまめに摂取する必要があります。トリプトファンからメラトニンに合成されるまで時間がかかるので、朝しっかりと食べてトリプトファンを摂取し、寝る前のメラトニンを蓄えましょう。
トリプトファンが豊富な食材は、大豆食品やナッツ、煮干し、麩、ゴマ、サバ、アジ、シャケ、卵などです。ビタミンB12と一緒に摂取すると、体内でメラトニンにスムーズに合成できます。
睡眠ホルモンであるメラトニンは白菜、キャベツ、レタス、ハムなどに多く含まれます。これらは合成する必要がないので夕食での摂取でも大丈夫です。
朝食は、ご飯に豆腐の味噌汁、納豆や鮭に卵があると理想です。忙しい朝には、トリプトファンとビタミンB6が多く含まれるバナナでも代用できます。
夕食には、葉物野菜を多く取り入れ、糖質が多く含まれる甘いものやご飯、アルコールなどの摂取を減らすことで、血糖値の変動を抑え、安定した眠りにすることができます。
【12】ボディスキャンで寝付きをよく
ボディスキャンとは体の感覚に注意を向ける方法で、寝る前に行うと寝つきが良くなります。身体の各部分の感覚をありのままに観察していく、マインドフルネス瞑想のひとつになります。
いろいろ新しいスタートを切る春だからこそ、健康でイキイキとした心と体で取り組みたいですよね! 12のコツのすべてをいきなり始めるのは大変なので、まずはできることから始めてみましょう! (山口彩楓)
医学博士、内科医、神経内科専門医、抗加齢医学専門医。2016年に株式会社マインドフルヘルスを設立。アンチエイジング医学、脳科学、マインドフルネス、コーチングを取り入れたセミナーやweb情報配信サービスを提供し、生活の中で賢い選択を習慣化できるよう支援している。
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