「仕事辞めたい」は、甘えですか?心理学の専門家に聞いてみたら…
何かとストレスが多い「仕事」のシーン。
たとえば仕事内容に飽きたり、人間関係がうまくいかなかったり……いろいろな不満がたまると「仕事辞めたい」と思うこともありますよね。
今回は読者の方から寄せられたお悩み「仕事を辞めたいけれど、甘えだと言われてしまったとき」について、「精神看護学」や「ポジティブ心理学」を専門とし、「セルフ・コンパッション」を研究テーマとしている東京医療保健大学の秋山美紀先生にうかがいました。
【今回のテーマ】「仕事やめたい」って、甘えですか?
Q.職場の人間関係もうまくいかず、仕事内容もやっているうちに飽きてしまい、仕事を辞めたいです。でも、それを相談したところ「甘えだ」と言われてしまいました。「仕事を辞めたい」って、甘えなのでしょうか?
A.甘えではありません。ただ、あらゆる手は尽くしてみてください。
「仕事を辞めたい」という気持ちそのものは甘えではありません。
「仕事を辞めることが自分の成長につながること」や「これ以上ここで仕事をすると自分がつぶれてしまうから、避難する」といった意味合いであれば、まったく甘えではありません。ただ、あなたの場合、もしかすると仕事を辞めたい理由があいまいに聞こえたから、周りの人が理解に苦しんでしまった、という可能性があります。
この機会に、少し、人生について考えてみませんか。
あなたは仕事に何を求めますか? 「仕事内容も飽きてきて」とありますが、それは裏を返せば「仕事に関してとても熟練している」ということです。「私が仕事をすることで喜んでくれる人は誰かな」「仕事のどんなところが、人に喜んでもらえるかな」と、少し普段と違うフィルターで自分の仕事を見つめてみませんか。
イソップ寓話に「3人のレンガ職人」という話があります。
3人のうち、1人めは「ただレンガを積んでいるだけで、きつい仕事」、2人めは「レンガを積んでいるだけで、お金がもらえるいい仕事」、そして3人めは「レンガを積んで大聖堂を作っている、とても意味のある仕事」と胸を張っています。この3人の仕事は同じ「レンガを積むこと」ですが、捉え方によって、仕事への意味づけやハッピーさはまったく違ってきます。
このように、別の視点で今の仕事を捉えてみませんか。もしかすると、今の熟練した仕事の意味が見えてきて「やりがいのある仕事」と捉えられるようになるかもしれません。
そして「人間関係がうまくいかないから仕事を辞める」という要因については、次の職場でまたうまくいかなかったら、またやめてしまうのでしょうか。「甘え」だと指摘した人は、おそらくそれを心配しているのだと思います。
もちろん、いよいよ大変なら逃げてもいいのです。『逃げるは恥だが役に立つ』というドラマもひところ流行りましたね。「甘え」と指摘してくれた人は、「でも、その前に少し改善の努力もしてみていいのではないか」という気持ちなのだと思います。
辞めることはいつでもできます。
もうじゅうぶんあらゆる手は尽くした。そんなときに「仕事を辞めたい」と言ったら、きっと「それは甘えだ」とは、言われないのではないでしょうか。
東京医療保健大学 医療保健学部 准教授 秋山美紀先生
保健学博士、看護師、保健師
精神看護学・ポジティブ心理学を専門とし、「セルフ・コンパッション」を研究テーマとしている。
★あー仕事辞めたい。転職した人・しなかった人、それぞれのリアル経験談