■『青と夏』に見る″映画主題歌であること″との向き合い方
――今作のリードシングル『青と夏』は同名の映画主題歌ですが、大森さんは小6から作曲を始めているということなので、『青と夏』も実はずっと前から曲の原型があったりしたんでしょうか。
大森 いえ、今回はまったくの新規で今年の3月に作りはじめた曲です。
――そうなんですね。映画スタッフとのやりとりが発生することが普段の曲作りと異なる点だと思いますが、作業はどのように進めていったんでしょうか。
大森 曲の制作に入る前に台本をいただいて、そこから打ち合わせを重ねてという感じです。撮影が始まったのが今年に入ってからだったので、僕が作業に取りかかるときにはまだ映像が出来あがってませんでした。
――作品の内容はどれくらい意識したんでしょうか。具体的にここ! というポイントがあったりしますか?
大森 むしろ、あまり作品に寄せすぎないように意識して作っていきました。というのも、映画のスタッフの方から最初の打ち合わせで「登場人物の心情に寄り添うよりも、観た人それぞれが自分ごとと感じられるような曲にしてほしい」という言葉をいただいて。それが今回の楽曲制作のキーワードになったので、あまり映画主題歌らしすぎないものになったかと思います。
――なるほど。その点詳しく伺いたいです。というのも、″映画の主題歌っぽい曲″ってあると思うんです。
大森 そうですね、はい。
――例えばBPMが低く、音の余白が多く、ストリングスを入れて壮大に、といった傾向。いくつか典型があると思うんですが、今回の『青と夏』はそのどれでもないなと感じて。これはやはり意図して?
大森 そうですね。やっぱり映画の主題歌ということで、僕ら自身オファーをいただいたときにぐっと身構えたところがあったし、きっとそれは、ずっと聴いてきてくれているファンの方もそうだと思うんです。「おっ、ミセス、大きくなってきたな」というか。
――イメージが湧きます。
大森 そういう色眼鏡で聴いてほしくなかったので、単に映画の主題歌っぽい壮大な″いい曲″というよりは、聴いていて「ん? 何これ?」ってなるような、ミセスらしいひっかかるものがある曲にしたかったんです。
――Mrs. GREEN APPLEの曲作りは、作曲ソフトで一度完成させた曲を、各メンバーが″耳コピ″する工程を踏むと伺っているのですが、今回もそのやり方で?
大森 そうですね。僕のほうで一度マスタリングまで済ませてしまったものをメンバーに配ります。それを耳コピして、自分で楽器を触って再現していく中で手癖が出て、メンバー各々のエキスが曲に注がれていくのかなと思います。
――今作の収録曲である『点描の唄(feat.井上苑子)』ではゲストヴォーカルを迎えていますが、作曲手順は普段と特に変わらず?
大森 そうですね。苑子ちゃんの声が活きる曲を、という想定はしていましたが、手順自体は普段通りです。曲の構成の面では、デュエットなのでいつもはできないヴォーカル同士の掛け合いが盛り込めておもしろかったです。