意外と身近な「寒暖差疲労」。10のチェックリスト&予防法を医師が解説!
秋は一年の中でも寒暖差が特に大きい季節。身体が気温の変化に追いつかず、「最近なんだか体調がすぐれない…」と感じている方も多いのではないでしょうか? もしかするとその不調、「寒暖差疲労」が原因かもしれません。
そこで今回は、医師・久手堅先生の協力のもと、「寒暖差疲労」のチェックリストと予防法をご紹介します。
教えていただいたのは…
院長 久手堅 司先生
医学博士。著書に「最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方」、監修本に「面白いほどわかる自律神経の新常識」「自律神経失調症外来」「頭痛外来」「肩こり・首こり外来」など複数の特殊外来を立ち上げ、中でも天候と不調の関係にフォーカスを当てた「気象病・天気病外来」「寒暖差疲労外来」は、テレビ・新聞・雑誌・ウェブなど各種メディアで話題を呼んでいる。
Contents
そもそも「寒暖差疲労」って何?
「寒暖差疲労」という言葉を聞いたことがあっても、具体的な原因や症状までは知らないという方もいるはず。まずは、久手堅先生に「寒暖差疲労」とはどういったものなのか、教えていただきました。
「『寒暖差疲労』とは、気温差が大きいことで体温を調整する自律神経が過剰に働き、体が疲れてしまうこと。寒暖差疲労の症状を訴える人は、寒さの入口に当たる秋ごろから徐々に増え始めます。
運動不足やストレスによっても自律神経が正常に働きづらい状態となり、寒暖差疲労を引き起こす可能が高まります。また、寒暖差によって疲労が溜まると、さまざまな体調不良を連鎖的に引き起こすリスクも生じてしまいます」(久手堅先生)
寒暖差疲労によって起こる症状は?
寒暖差疲労の代表的な症状は、倦怠感やだるさ、冷え。さらに肩こりや首こり、頭痛、めまいといった身体的不調から、不安感や気分の落ち込みといった精神的な不調まで、人によって症状はさまざま。中でも「疲労感」は最も出やすい症状です。
4つ以上当てはまったら要注意!寒暖差疲労チェックリスト
最近不調が続いている方は、ここまでの説明から「もしかして寒暖差疲労が原因かも?」と気になっているはず。そこで、以下の「寒暖差疲労チェックリスト」で、自身の寒暖差疲労レベルを診断してみましょう。
- 夏の暑さも冬の寒さも苦手
- ずっと冷暖房が効いているなど、温度が一定の環境にいる時間が長い
- 気温差が激しくなる季節の変わり目は、体調を崩すことがある
- 寒い場所から温かい場所に移動すると、顔がほてりやすい
- 代謝が悪く、むくみやすい
- 手や足など、体の一部が冷たく感じることがある
- 寝つきや寝起きが悪い
- 入浴中、湯船に入って体の芯から温まるまで時間がかかる
- PC作業やスマートフォンの使用時間が長い(1日3時間以上)
- 肩こり、首こりがある
いくつ当てはまりましたか? 項目のうち4つ以上チェックがついた場合は、寒暖差疲労の可能性アリ。
早速、チェックリストの内容について、久手堅先生に解説していただきます。
◆「暑さや寒さが苦手」にチェックがついたら注意!
チェックリストのうち、1~3の悩みを訴えにくる患者さんは多いです。中でも 「暑さや寒さが苦手」というのは、寒暖差疲労の症状が強い人のほぼ全員に見られる特徴です。
◆エアコンを使い方にも気をつけて
寒暖差疲労になっていると、エアコンの風に当たるだけで、途端に不調が出てしまうこともあります。寒暖差疲労を防ぐための正しいエアコンの使い方は、冷やしすぎず暖めすぎないこと。目安としては、地域差や個人差はありますが「冷房24~28℃」「暖房18~22℃」が適温とされています。
また、冷暖房を使うときは「乾燥」にも注意しましょう。羽根の角度を調整して直接風が当たらないようにしたり、加湿器を使ったり、洗濯物を部屋干ししたりと、湿度を保つ工夫をしてみてくださいね。
◆冷え性だと寒暖差疲労になりやすい?!
もともと手足が冷えたり体が温まりにくいといった「冷え性」の場合、寒暖差疲労にも悩みやすい傾向に。本格的に冷え込み寒暖差も大きくなる秋から冬は、冷えから身を守るために、上着やマフラーなどで調整しましょう。
冷え性さんがついやりがちな「就寝中に手袋や靴下を着用する」ことは、おすすめできません。末端から放熱ができず身体に熱がこもってしまい、睡眠の質の低下によって疲れが取れなくなってしまうからです。そして手足だけでなく、肩と首の冷えにも要注意。ハイネックの服やマフラー、温めるグッズをつけるほか、こまめに動かして血流をよくすることが大切です。
◆睡眠と入浴が予防のカギ!
睡眠は心身の回復のために大切な時間。質のよくない睡眠をとっていると、朝起きた時点で心身のリセットができていません。自律神経も乱れている状態なので、寒暖差疲労も起こりやすくなります。
睡眠は「質」と「長さ」が重要。眠りについてから90分程度(90~120分の個人差あり)が最も深い睡眠になるので、この時間にしっかり深い睡眠がとれないと、その後も睡眠の質が悪いまま朝を迎えてしまいます。また、睡眠時間は7~8時間が理想です。
入浴はシャワーだけで済ませず、毎日湯船に浸かるようにしましょう。湯船に浸かることで、体に蓄積された老廃物や疲労物質を取り除き(温熱作用)、血液やリンパの流れを改善し(水圧作用)、筋肉や関節をリラックスさせる(浮力作用)といった3つの嬉しい効果が得られます。
※入浴方法のポイントは後ほどご紹介!
◆PCやスマホの長時間使用もNG
PC作業やスマートフォンを長時間使用すると、同じ姿勢でうつむきがちに。すると肩こりや首こりを引き起こし、自律神経が乱れる原因になります。また、首こりにつながる「骨格の歪み」も寒暖差疲労を起こすきっかけになっていると考えられています。
現代人特有のデジタル漬けのライフスタイルが「寒暖差疲労」に影響しているため、PCやスマホの使用時には1時間おきに休憩を入れることで疲労を和らげていきましょう。
不調になりやすい“トリプル寒暖差”とは?寒暖差疲労対策の「3つのポイント」
最後に、久手堅先生が「効果的な寒暖差疲労対策」として3つのポイントを教えてくれました。チェックリストで寒暖差疲労の可能性が高かった方もそうでない方も、これから心地よく秋を過ごすために、以下のことを生活に取り入れてみて。
①トリプル寒暖差に注意!換気するときのコツ
コロナ禍もだいぶ落ち着いてきましたが、今でも感染対策は欠かせません。中でも「部屋の換気」は、みなさんも自宅や会社でこまめに行っているはず。
寒暖差には「最低気温と最高気温の差」「前日との気温差」「室内外の気温差」の3つの種類(トリプル寒暖差)がありますが、近年はコロナ禍によって換気の機会が増えたため、特に「室内外の気温差」に要注意! 換気の回数が増えると、そのたびに室内の寒暖差が生じ、寒暖差疲労も起こりやすくなります。
【換気する際のポイント】
・一気に開けず部分開放で体を慣らすと◎
・暖房を設定する時期には、換気することを想定して上着を1枚用意する
②入浴法は「38~40℃のぬるめのお湯に、10~15分」
寒暖差疲労の代表的な症状である「冷え」は、初期段階では手足に現れますが、放置すると内臓や全身にまで広がり深刻化してしまうことも。そのため、日頃から体を温めることはとっても重要です。以下は、冷えの改善や疲労回復におすすめの入浴法。
【寒暖差疲労対策におすすめの入浴法】
・38~40℃のぬるめのお湯に10~15分ほど浸かる
・炭酸入浴なら、末梢血管が拡張して血行が促進され、疲労回復により効果的
コンビニやドラックストアでも購入できる「炭酸入浴剤」は、自宅の湯船に入れるだけでシュワシュワとした炭酸入浴が気軽に楽しめながら、続けることで自律神経の働きも高まることもわかっています。
③「耳たぶストレッチ」で自律神経を整えて
肩こりを感じている人は、首から耳にかけてこりや痛みを感じている場合が多いです。「耳たぶストレッチ」で耳周りをストレッチして柔らかくすることで、血流がよくなり、肩回りのこりもゆるんでリラックスしてくるでしょう。
【耳たぶストレッチのやり方】
・「耳たぶの少し上」を水平方向に5~10秒引っ張る(耳を上下に動かすのも◎)→離す
・これを数回繰り返す
・「耳たぶの後ろの骨の凹み(顎関節)」を少し痛くなる程度に斜め上にぐっと押し、30秒間そのまま押し続ける(離したときにその部分が軽くなっていればOK!)
この方法は、内耳の血流を促したり、歯を食いしばって緊張しているあごの筋肉をほぐしたりするのに効果的。自律神経を整える効果も期待できます。
これから寒くなる季節、暖房を使い始めると「室内外の気温差」が大きくなるので、体調管理には特に注意が必要です。寒暖差疲労の3つの対策ポイントを意識して、元気に過ごしましょう!