ゴールデンウィークが明けて、なんとなく気がゆるんでくる5月。忙しくて頭がいっぱいなときは気が回らなかったり、「そういえばこれってどうなんだろう?」と疑問に思いながら調べるのを後回しにしてしまったり…。少し余裕が出始める今こそ、改めてビジネスマナーについて学び直してみませんか?
今回は「意外とわからない言葉づかい」についてご紹介します。
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マナーコンサルタント・ビジネスデザイナー
西出ひろ子さん
ヒロコマナーグループ代表。参議院議員などの秘書を経て、マナー講師として独立。企業の人財育成を行ない、唯一無二の手法で結果と成果を出す指導は「マナーの賢人」として「ソロンモン流」(テレビ東京)などのドキュメンタリー番組で紹介される。NHK大河ドラマや映画、CMなどのマナー監修、俳優、タレント、モデルへのマナー指導も行う。著作監修本は国内外で100冊以上、著者累計100万部を超える。社会人として必要なビジネスマナーのすべてを図解で紹介した「改訂新版 入社1年目 ビジネスマナーの教科書」(プレジデント社)は15万部突破。最新刊は「マンガでカンタン!マナーとビジネスの基本は7日間でわかります。」(Gakken)が7月発売予定。
公式HP http://www.hirokomanner-group.com
「お世話になります」「よろしくお願いします」は必要?
Q.メールなどに「お世話になっております」「よろしくお願いします」という文章をなんとなく書いていますが、そもそも必要ですか?
A.相手が目上の方なら書いておくのが無難です
「最近では、SlackやMicrosoft Teamsなど、チャットツールの普及により、挨拶なく用件から入る方が増えてきたように見受けられます。
何度もやりとりしている親しい方なら、このような挨拶文を削って、たとえば「ご多様の中、確認くださりありがとうございます」などから入っても問題ないケースもありますが、基本的には目上の方が相手の場合は書いておくほうが無難です」
メールで要注意な言葉
Q.メールでできれば使わないほうがいい言葉はありますか?
A.「すみません」に要注意
「『すみませんorすいません』」は便利な言葉です。使い慣れた言葉なので何かと使ってしまいがちですが『ありがとうございます』や『申し訳ございません』などの言葉に置き換えることをおすすめします」
覚えておくと便利な言葉はコレ
Q.覚えておくと使いやすい言葉を教えてください!
A.クッション言葉と感謝の言葉を癖づけて
「『お手数ですが』『恐れ入りますが』『差し支えなければ』など、クッション言葉と呼ばれるフレーズをしっかり使えると印象が良くなります。これは相手の立場に立つ思いやりの気持ちからなる言葉です。口頭でもメールでも、一言入れるのを習慣づけると素敵です。
また、基本中の基本ではありますが、誰かに何かをしてもらったときは『ありがとうございます』とお礼を言うのも大切なことです」
「なるほどですね」アリ? ナシ?
Q.「なるほどですね」という相槌が口癖になっていますが、これってアリですか?
A.言わないに越したことはないものの、気にしすぎは本末転倒
「厳密に言えば『なるほど』という言葉自体に悪い意味はありませんが、言われた側は上から目線という印象を受けやすいフレーズと言われていますね。マナー的には、言葉は言われた相手がどう思うかという視点で考えます。
そこで、特に目上の方に対しては『なるほど』『なるほどですね』は、控えるほうが無難です。同調の意味で使うときには、『おっしゃる通りです』などに言い換えてみましょう。
ただ、口癖になっている言葉は、つい発してしまいますよね。ここで大切なことは、『なるほどって言っちゃったらどうしよう…』と不安な表情や態度が出てしまったまま話をしてしまうこと。相手にもよりますが、言葉よりもその人の表情や態度などの視覚の印象のほうが気になるものです。言葉は大切ですが、過剰に気にしすぎず、まずは『感じの良い表情で、傾聴する姿勢』が大切です。そのためにも、自然に「なるほど」を多用しない自分になることに焦点を当ててみてはいかがでしょうか。
他の項目にも共通することですが、言葉のマナーは、『相手に不快を与えない』『相手に好かれること』が根本にあります。笑顔で自然体のコミュニケーションができていれば、ちょっとくらい言葉の使い方を間違えても相手は不快にならないはずです。『なるほどって、言っちゃった…』と落ちこんだり、深く悩んだりしないでくださいね。大切なことは、次からどうするかです。
もし、つい口癖で『なるほど』と出たときは、その後に『なるほど、感動しました』『なるほど、初めて知りました。ありがとうございます』『なるほど、おっしゃる通りですね』などと、何かしら補う言葉をプラスすれば大丈夫です。グッと丁寧な印象になりますよ」
「了解しました」アリ? ナシ?
Q.「了解しました」を目上の人に使うのが失礼って、ホント?
A.正解は…ホント
「『了解した』という言葉は、『理解しました』という意味で丁寧語ではありますが、謙譲語ではないため、相手に対して敬意が含まれた言葉ではありません。したがって、目上の人には使わないと覚えておくと良いですね。『了解しました』を最も丁寧に言い換えるなら『かしこまりました』です。これだとかしこまり過ぎと思われる場合には、『承知しました』を使います。『承知しました』は『わかりました』の謙譲語です。目上の方に対しては、このどちらかを使いましょう」
「させていただく」はアリ? ナシ?
Q.「させていただく」という言葉を頻発してしまいますが、そもそも言葉として合っていますか?
A.問題ありませんが、使いすぎには注意
「『〜させていただく』という言葉自体は『させてもらう』の謙譲語ですので、問題ありません。相手から「許可を受ける」「許可を得る必要がある」「恩恵を受ける」場合に使用します。ただし、使いすぎてしまうと、あまりにへりくだった印象で少し気まずい、とおっしゃる方も少なくありません。使用頻度や使用の仕方を間違わないように注意しましょう。」
「お伺いします」は正しい日本語?
Q.「お伺いします」という敬語をよく聞きます。これは正しいですか? 誤りですか?
A.二重敬語なので本来は×ですが、より丁寧に感じる人が多いのも事実
「『行く』の謙譲語が『伺う』なので、本来は『伺います』が正しい敬語表現。そこにさらに『お』を付けて『お伺いします』となると、二重敬語となります。『召し上がってください』と『お召し上がりください』も同様の関係です。
しかしながら、実際の仕事のシーンでは、『お伺いします』のほうが丁寧な表現のように感じる方も多いと思います。そのため、正しい表現は『伺います』だと知っていた上で、どちらを使うかはそのときどきの皆さんの選択で良いといえます。
ただし、書き言葉の場合は記録として残るので、可能な限り、本来の正しい言葉を使うことをおすすめします」