同僚が休職してショック…。落ち込みや多忙で共倒れしないコツ【精神科医監修】

職場に休職した人が出たとき、発生しがちなのが「連鎖で心身のバランスを崩す人が出る」ことです。
同僚の不調に気付けなかった自分への罪悪感、休む人のかわりに担当する仕事が増えるため、押し寄せる多忙。みんなが忙しいとわかっているから「受けられません」とも言いづらい雰囲気。そんな要素が積み重なって「私も、もうだめかも…」ということになりかねません。

このお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。

お話をうかがったのは…

井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋 』など。

Q.仲がいいと思っていた同僚がメンタルの関係でお休みになりました。気づいてあげられなかった自分にも落ち込みますし、その同僚の仕事が回ってきて忙しすぎるのもあって、自分も連鎖でメンタルがやられてしまいそうです。連鎖うつにならないためにやったほうがいいことはありますか?


まず、「気付いてあげられなかった自分」に、罪悪感を抱える必要はありません。大丈夫です。

教科書的には「周囲が気づいてあげましょう」とよく言います。でも、現場にたくさん向き合ってきた僕が思うに、結論から言うと、「うつなどのメンタル不調に気付くことは、とても難しいハイレベルなこと」です。

そもそも、自分のメンタルの調子が悪いことを、できるだけ周囲に悟られないように過ごしていることが非常に多いものです。僕たち精神科医・産業医でさえ気付くのが難しいケースも、いくらでもあります。
後から思い返すと「あれはうつのサインだった」と思うこともあるかもしれませんが、すべて後付けです。どれだけ注意深く見ていても見逃すことはあります。

そして、職場にひとりメンタル不調の人が出ると、どうしても連鎖で辛くなってしまう人が出てきてしまいがちです。注意すべきポイントはこの2つ。

・空気に飲み込まれないこと
・自分のキャパを把握して、早めに限界を示すこと

それぞれ説明していきましょう。

・空気に飲み込まれないこと

チームの一員にメンタル不調の方が出ると、気づけなかったことへの罪悪感に加えて、「残ったメンバーで力を合わせて頑張ろう」という前向きな感じを出しつつも、「ちょっと負担がかかっても当然大丈夫ですよね、多少自分のキャパを超えても受け入れて頑張らないといけないですよね」という空気感が、無意識のうちに出てしまうことがあります。その空気に飲まれると、連鎖して崩れてしまうことがあります。

実際に休職する方が出てきたとき、すぐに人員補充や配置はできないケースがほとんど。残る人たちに、以前より負担がかかることは、ある程度は仕方ありません。でも、早めに限界を示しておかないと、不調が連鎖してしまい、さらにチームとして戦力を失う状態になってしまいます。
そこで重要なのが「早めに、できないことはできないと伝えること」です。

・自分のキャパを把握して、早めに限界を示すこと

「これ以上は無理」と先に言わないと、仕事は後からあれもこれもと増えていきます。

言い方としては、「これは無理です」と突っぱねるよりは、「この仕事は受けられます。でも、これ以上は難しいです」と、受けられることと難しいものを同時に示すほうが印象はいいですね。

メンタル不調でお休みする方の休業期間は、いつまでなのか明確にわかりません。安易に「ちょっとだけなら頑張りすぎる期間があっても大丈夫だろう」とキャパを超えて受けると、それが思った以上に長期間続くことがあります。それを本当に長期間受けても大丈夫なのか、線引きをきっちり行いましょう。

また、普段の1.5倍頑張っている状態で、自分がそれまでやっていた仕事が思うようにできなくなっても「自分はなんて能力がないんだろう」と思う必要はありません。「自分は自分ができる範囲でやること」が優先順位1位です。「いつもの1.1倍は頑張れるけど、1.5倍はできない」。それでも十分以上にあなたは頑張っています。

そして、キャパオーバーしてしまった分を、「減らすべき業務がないか」「人員を増やすべきか」などと考えるのが、マネジメントする上司の仕事です。キャパを超えてできないことに、あなたが責任を感じる必要はありませんよ。

 

▼「仕事の相談」が苦手。どうしたらいい?

構成/後藤香織 写真/(c)Shutterstock.com