もう何年も前の話だけど、なんだか妙に忘れられない出会いの話がある。
ものすごく印象的だったとか、イヤな思い出だったとか。「あんまりリアルタイムの話をするのは良くないなぁ」と思っていたけれど、何年も経った今振り返ると、なんだか他人事のようで笑えたり、学びになることがある。
そんな「時効」になった婚活話に迫ります。
今回お話を聞いたのは、みきさん(32歳・仮名)です。
「アプリで知り合って、1回会っただけの人。もう相手の名前忘れちゃったのでAさんって呼びます(笑)。Aさんとは、すごく寒い冬の日に伊勢丹で待ち合わせをしたことを覚えています」
「そろそろ彼氏が欲しいけど、出会いがないなぁ」と、なんとなくマッチングアプリを始めてみたみきさん。始めたばかりということもあってか、次々男性から「いいね!」がやってきて混乱。「何を基準に選べばいいのかわからない…」と思いながら、ひとまず手当たり次第に「いいね!」してくれた人を見ていきます。
その中でふと目に留まったのがAさんでした。
当時のみきさんは、八重歯フェチ。Aさんのプロフィール写真は、海で笑う満面の笑みに、チラリと八重歯がのぞいていました。年収も仕事も、その他プロフィールの内容もすべて申し分なく、「あ、なんとなく、いいな」といいね返し。するとすぐにメッセージがやってきて、会話が盛り上がり、アプリのやりとりではなくLINEを交換。「会いましょう」となるまでにはさほど時間はかからなかった、と振り返ります。
「でも、会う前日に、会話の参考にしようと思ってプロフィールを見直したら、『離婚 子どもあり(別居)』とあって。私、バツイチは全然問題ないんです。でも、お子さんがいるのは、当時NGにしていたポイントだったので、どんなに気が合いそうでも、その表記があれば、はじいていたはず。後出しでプロフィールを変えたのかもしれませんが、どうしよう…と。でも今更ドタキャンにするのも気まずいので、行ってみることにしました」
ランチを食べに行こうと、12時くらいに新宿伊勢丹前で待ち合わせをしたふたり。
少し早めに到着したみきさん、「このあたりにいます」とメッセージを送ったら、Aさんから「着きました」と返信が来ました。
…しかし、プロフィール写真を手がかりに周囲を見渡しても、それらしき人は見当たりません。向こうから話しかけてくれないものかとキョロキョロしていたところ…事件が発生しました。
「話しかけてきたのは、まったく違う…いえ、まったく違うならまだよかったんですけど、1ミリくらい面影がある人。写真より、どんなに少なく見積もっても20kgは太った人がやってきました」
正直「ダイエットを頑張っていたので、太った人が得意でなかった」ということもあり、みきさんのテンションは爆下がりですが、ここまで来たら逃げられません。
「あの写真、推定10年前だなと。確かに、若いな、とは思っていましたが、最近若い人も多いし、そんなもんかなと思ってました!! 若いなと思ったらいつ撮った写真なんですか〜とか聞けばよかったです」
「とりあえず美味しいごはんを食べて帰ろう」と、Aさんが予約してくれたそこそこ有名な焼肉店に向かいました。
思い切ってこんなぶっこみ会話をしてみたそうです。
みきさん「プロフィール写真と結構印象違いますね!」
Aさん「あ〜あれ結構昔の写真なんですよ(笑)」
みきさん「えー! どのくらい前なんですか?」
Aさん「10年くらい前ですね〜」
みきさんの推定、大当たりです。
写真と違う人がやってきたとはいえ、メッセージでもやりとりが盛り上がっただけあって、やっぱり話は、面白い。会社も、その業界ではまず間違いなく有名な企業で「仕事ができる人なんだろうな」ということは伝わってきます。
ただ、出会った瞬間爆下がりしたテンションはなかなか上がらず、お酒の力も借りながらなんとなく話を合わせて、焼肉を食べたら早めに解散しました。
「おごりで昼からお酒を飲んで美味しい焼肉食べた後、好きなアイドルの握手会があったので、向かいました。もちろん焼肉屋さんのファブリーズを大量に使わせてもらってから行きましたよ(笑)。そして、ああ、なんてときめくんだろうって…推しと現実の恋愛は違いますけど、Aさんとの焼肉、推しの握手会のこの1/100もときめきませんでした」
Aさんからは「今日はありがとう!」とLINEが来ていましたが、未読スルーしました。
「その後、オタク友達とお茶して、『おなかすいたねー』って、軽くパスタ屋さんで夕飯食べたんです。よくわかんない人と食べる有名店の高級焼肉より、気心知れた友達と楽しい話をしながら食べる安めのパスタのほうが、よっぽど美味しかった…」
未読スルーしたLINEには、帰宅してから「返信遅くなってすみません!」と、さも今見たかのように、当たり障りのない返事をしました。Aさんにとってはみきさんは「いい」と思ったのか、LINEは絶えなくやってきました。
「でも、やっぱり会った瞬間にあんなにテンション爆下がりした人にもう1回会いたいかと言われたら会いたくないし、いろいろ不誠実。途中でなんとなく返信するのをやめて、未読スルーでおしまいにしてしまいました」
未読スルーした後、数か月後にも1回LINEが来たそうです。
けれどそれにも返信せず、そっとブロックして終わりにした、と振り返りました。
- あまりに年齢に対して若いプロフィール写真の場合、いつ撮った写真なのかを確認したほうがいい。ごまかされたらその時点で何かを隠しているのでストップ
- 後出しプロフィールに気をつけろ
- 「高いごはんがおごりで食べられるチャンス!」と思って行ったところで、仲良い友達と食べるいつものごはんのほうが美味しいこともある