男女の愛を“逆行する時間軸”で描いた「ラスト5イヤーズ」リチャード監督インタビュー

日本の恋愛において、女性は過去を引きずらず、男性は引きずる…という話を一般的によく聞きますが、この作品では男女逆転していますよね。もし、キャシーとジェイミーの立場が逆だったら、どんな結末があったと思いますか?

リチャード監督 日本の男性はロマンチストなんですね、みなさん(笑)。アメリカでもね、実は男性が引きずったりすることもあるんですよ(笑)。

でも僕は、女性がどっちで男性がどっちで、という見方はしていなくて、やっぱりそれは個人によるものであって。知り合いのなかでも、女性よりもはるかにハートブレイクして、女性よりもはるかにロマンチストで……という男性の知り合いは、現にいたりしますけどね。

ジェレミーの話に戻すと、これは僕の解釈なんですけど、『愛が壊れたとき』って曲を歌っているとき、舞台版ではジェイミーはひとりの女性としか浮気をしないんですね。その女性と一緒になって去っていく、という設定なんですが、映画ではいろんな女性と関係を繰り返している……という描写になっているんです。

『愛が壊れたとき』の曲に、“僕は誰かに恋してないといけないんだ”、“誰かを愛してないといけないんだ”という歌詞が最後に出てきます。だからジェイミーは、「君に恋してもいいかもね」みたいなことを言うわけなのですが、僕はこう解釈しました。結局、彼はキャシーと別れた後も、実際には存在しない理想の女性を、永遠に探し求め続けるんじゃないか、というふうに思っています。

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熱狂的なファンがいるミュージカルを映画化するにあたり、プレッシャーを感じませんでしたか?

リチャード監督 プレッシャーというより、逆に励みになりました。僕と同じくらい、このミュージカルを好きな人がたくさんいるんだ! と。

舞台と映画のいちばんの違いは、キャシーとジェイミーがお互いに対して語りかけている点です。舞台版は、観客に対してモノローグとして歌っていますが、映画はふたりの登場人物が、相手に対して歌っています。歌っている側だけでなく、歌を受け取る側の感情も描けるので、双方の視点から、男女の恋愛関係について、いろいろとわかる……という構成にしました。

それ以外は、なるべく舞台に忠実になるよう心がけました。僕もミュージカルの大ファンなので、ミュージカルの映画化に関してはとても懐疑的なんです。歌がカットされてしまったりだとか、歌えない人がキャスティングされたりするのが嫌いなので、極力オリジナルを壊さないように映画化しました。

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