この落ち込み、うつのサインですか?精神科や心療内科、どこに行けばいいですか?【精神科医監修】

最近なんとなく他にも楽しく感じられなくて、やる気が出なくて、気分が落ち込む状態が続いている…。「もしかして、これって病院に行ったほうがいいの?」と、不安に思ったことがある方は、そう少なくないはず。

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「うつのサイン」や、病院に行くときはどうしたらいいのか、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。

お話をうかがったのは…

井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる「呪いの言葉」の処方箋』『この会社ムリと思いながら辞められないあなたへ』など。

気にしなくて良い落ち込みか、うつ病の兆候なのか。危険のサイン

Q1.楽しいことも刺激もなく、半月ほどずっと気分が落ち込んでいます。特に梅雨や冬など、天気が悪いと起こりがちな気がしています。これがあったらちょっと危険信号かもしれない…というサインはありますか?

実は、日光を浴びる時間が短くなると、人間はうつっぽくなります。特に、日照時間が短くなる季節にはよくあることです。代表的なのは冬になると落ち込んでしまう「冬季うつ」と呼ばれている現象。厳しい寒さを乗り越えるためにある「冬眠」のようなもの。「眠気が強くなって、寝すぎる」「カロリーが高いものを食べたくなる」ということが起きますが、まさに冬眠前後のクマさんなどと一緒ですね。春になり太陽が出ている時間が長くなると、自然と解消されるパターンも多いです。

この変化は誰にでも起こりうるので、いつもより寝すぎる、食べすぎる、ちょっと気分が上がらない…くらいは許容範囲です。

ただ、日用品の買い物にも行けない、洗濯物が溜まりすぎて同じものを着ている、会社に遅刻している…など、日常生活に弊害が出ていると危険信号です。

なんとなく気分が落ち込んでいるとき、まず比較的手軽に心がけられることは「日光を浴びること」。通勤・通学も含めて、毎日トータルで1時間は屋外で太陽を浴びることをおすすめします。この「1時間」は、生活スタイルによっては毎日行うのはなかなかハードルが高いのですが、調子が上がらないときほど、できる限り意識してください。屋外で太陽を浴びるのが難しければ、光が入る窓の近くにいるだけでも変わります。
どうしても難しければ、朝一番に部屋のカーテンを開けて、5分間は顔いっぱいに太陽の光を浴びてください。それだけでも違ってくるはずです。

病院に頼るのも、もちろんひとつの手です。特に先ほどお伝えした「日常生活に弊害が出ている」方は、可能であれば早い段階で病院へ行きましょう。

 

「精神科」「心療内科」「メンタルクリニック」は何が違うの?

Q2.もっと悪くなる前にどこかに相談したいのですが、「心療内科・精神科・神経科・カウンセラー」など、どう使い分けるといいですか?

「精神科」「心療内科」「メンタルクリニック」など、メンタル専門とする病院にはさまざまなネーミングがありますが、実はこれは法律的にどう名乗るかは自由です。医師側の視点だと学問的な差はあるものの、患者さんから見るとほとんど差はありません。どの病院にも精神科医がいるはずです。
また、勘違いされやすいものとして「神経科」がありますが、「神経科」は主に「神経内科」を意味することが多く、脳卒中など、脳や脊髄などの疾患を診るところです。

病院の選び方として、まず何より大事なのは「家から近く、通いやすい」こと。どんなにいいとされている先生でも、しんどくて動けないときに片道2時間かけて行くのは至難の業です。

また、メンタルの病気は医師との相性が重要なので、口コミを鵜呑みにしすぎないことをおすすめします。Aさんにとっては「とてもいい先生」でも、Bさんにとっては「もう絶対に行きたくない」ということが起きやすいのがこの分野です。もちろん、どうしても引っかかる口コミがあれば無理してまでそこに行く必要はありませんが、基本は「家からいちばん近い病院」に行き、3〜4か月通ってみて合わなければ変える、がいいと思います。

正直、医師から見ても「いい先生の条件」を言い切ることはできません。「僕たち同業者が見るとあまりいい先生ではないけれど、患者さんから人気」の人も、その逆の人も、いくらでもいます。
医師としても、「医師と患者さんの相性が大事なこと」は重々承知しているので、患者さんが病院を変えるのはよくあることです。しっくりくる医師に出会えるまで、医師に遠慮することなくどんどん変えていただいて構いません。今お困りのあなたが、相性のいい医師に出会えることを願っています。

構成/後藤香織