菊池 第3巻の、障子を挟んでふたりが会話をしているシーンも印象的でした。会話もなく、ただ泣いているだけなんだけど、そのほうが相手も気持ちが伝わる……というか。
望月 そのシーンを褒めてもらえるのはすごくうれしいです。小説だとこのシーンは、面と向かってふたりがしゃべっているんです。でもそれをやめて、最後まで顔を合わさずに終わるようにしました。そのほうが小説に書かれた心情が、もっと読み手につたわるんじゃないかなと思ったんです。このお話には、殴り合いとか爆破とか派手なシーンがないのですが(笑)、どうしたら読者に登場人物の気持ちが伝わるかはこだわって描きました。
菊池 私は、純粋にすごくいい漫画だなって思いました。漫画っていろんなタイプがあると思うんですけど、素直にその世界に同調できて、気持ちが膨らむというか…、静かに心が震える感じがしました。登場人物の中で、ずっと「ダサい」と言っている子供も好きです。私は「かわいい」という言葉についてよく考えていて、世の中でいいねと思われているものを、簡単に「かわいい」と言うのはどうなんだろう? と思っていて……、かわいい以外の褒める言葉を探すことにチャレンジしているんです(笑)。その逆で、この子の「ダサい」という言葉が響きました。あさはかな言葉だけど……、彼女が連発していることにすごく説得力がありましたよね。
望月 子供たちは、りつと茂次のキャラクターを際立たせるのに、ものすごく効果があったと思います。生意気な子供たちばかりですが、でも小さくて守らなければならない存在です。人情や意地を表現するのにひと役かっていますね。
菊池 あと、先生の作品には、いつも気持ち悪いサブキャラクターも出てきますよね(笑)。『ちいさこべえ』だと、ゆうこのお父さんみたいな。表情とか顔立ちとかなんともいいようがないです。
望月 そういう人が好きなんですよね。僕もそうだからなんですけど、なんかダメな感じに興味を持つというか……共感しているんだと思います(笑)。
【注釈】※1 1985年から『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載されていた青春コメディ。映画化もされました! ※2 1993年から『週刊ヤングマガジン』(講談社)で短期連載された、都市伝説やストーカーなどの要素を含んだホラー作品。 ※3 1994年から『週刊ヤングマガジン』(講談社)にて連載スタート。「終末」を描いたパニックホラー作品。こちらも映画化もされました!
第3回へとつづく…。
次回は、望月先生の作品に登場するキャラクターたちはどうやって誕生したのか? そして、ふたりの以外な共通点について…と話が広がっていきます!お楽しみに! (西村真樹)
★1回目はコチラ→ 【望月ミネタロウ『ちいさこべえ』×菊池亜希子ムック『マッシュ』発売記念】緊急対談(1)ふたりが語る制作秘話
『ちいさこべえ』
山本周五郎の名作時代小説『ちいさこべ』を現代版に新解釈した意欲作。最終巻4巻は3月30日発売。〜火事で実家の工務店“大留”が焼け両親を亡くした主人公 茂次は「どんなに時代が変わっても人に大切なものは、人情と意地だ」という父・留造の言葉を胸に大留再建を誓う。そこへ、身寄りのないヒロインのりつや、行き場を失った福祉施設の子供達が転がり込んできて〜
★詳しくはコチラ→ 小学館公式サイト
『菊池亜希子ムック マッシュ』
女優・モデルの菊池亜希子が編集長を務める大人気ムックシリーズ。“かける”がテーマの第7弾は、3月24日に発売されました。“スニーカーで、かけぬける”“なぞかけファッション”“耳にかけるマッシュ”“椅子に腰かけた日”など独自のセンスでおしゃれや暮らし、カルチャーなどをかけ合わせます!
★詳しくはコチラ→ 小学館公式サイト
★『ちいさこべえ』の作品情報はコチラ→スピネット
★『ちいさこべえ』完結記念イベントの特集サイトはコチラ→スピネット特設サイト
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