トラウデン直美と考える、“今日から始めるちょっといいこと”|おいしいで変える世界って?【SDGs連載】

「おいしい」で、世界を変えるには?

今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!

今回は、カフェから生産者をサポートするimperfect株式会社の佐伯美紗子さんから、チョコレートやコーヒーなど私たちに身近な食材の背景を学びました!

佐伯美紗子さん/10代にアメリカで過ごした経験から「社会や経済の仕組みを変えたい」という想いを抱くように。2008年、新卒で総合商社に入社。2019年より子会社「imperfect株式会社」の立ち上げに携わり、同社マーケティング部長を経て、2022年8月より代表取締役を務める。
トラウデン直美/環境省サステナビリティ広報大使。高校時代に環境問題に興味をもって以来、エシカルな生活を模索。『SDGs』にまつわる勉強や発信に力を入れ、情報番組コメンテーターとしても活躍。初のフォトブック『のらりとらり。』(小学館刊)が好評発売中。

「完璧」も「我慢」も続かない、不完全でも少しずつ前に

トラ チョコが大好きで日頃から様々なお店をチェックしているのですが、『imperfect表参道』さんでは食材の背景を知って安心して買えるのがうれしいですね。

佐伯 元々私たちは、商社でカカオやコーヒー豆、ナッツなど食品原料の輸入事業に携わっていまして。5年ほど前はまだ第一に「品質がよくて〝安い〟もの」を求められる傾向がありました。ビジネス上は仕方のないことではあるものの、生産国の農家さんに寄り添っていいものをつくっても日本の市場で広がっていかず、農家さんに還元できないもどかしさを感じていたんです。

トラ 品質を追求するには、安定的につくるためのコストや働く人への正当な対価も不可欠ですよね。

佐伯 そうなんです。例えば、チョコレートの原料であるカカオ。直射日光に弱く、実を日焼けから守るためには背の高い別の木が必要なのですが、森林破壊の進行で周辺の木が減少してシェードツリーという木を植えています。そうすることで収穫量が増加し、農家の方の収入の安定や森林保全にもつながるんですね。毎日当たり前のように消費している食材に、実は環境問題、貧困、ジェンダーギャップといった様々な課題があり、自分たちも一消費者として世界を変えていこうという思いが創業のきっかけです。

トラ そのためにも、この表参道という場所が重要に?

佐伯 はい。誰もが知る場所から幅広い方々に新しい消費を発信していきたいという思いはあります。まずは「おいしい」とか「おしゃれ」を入口に背景のストーリーに触れていただいて、「どんな原料が使われているのか」「どういう環境でつくられたのか」という視点が、買っていただく際の基準に加わるといいなと。

トラ 人や環境にいいことを、〝やらなきゃいけない〟ではなく、〝かっこいいから〟という理由で選択できるのはまさに理想ですね! ここ数年でフェアトレードの流れが進んでいるとは思いますが、実際に働く方々の労働環境が改善されている感触はありますか?

佐伯 私たちが訪れる農園で待遇や意識の変化を感じるだけでなく、社会の動きとしても加速していると実感しています。特にヨーロッパでは「人や環境に配慮した原材料でないと使わない」という企業が増加。日本のメーカーさんも2050年に向けてサステナブル調達100%を掲げるところが増えていますね。

トラ 私たち買う側からすると、アフリカや中南米でつくられている…と聞くとどこか遠い世界のことに感じてしまいがち。でも、『imperfect表参道』でお買い物をすると、自分が応援したい社会課題解決プロジェクトに投票することができますよね。身近に感じられる、すごく素敵なアイディア! しかも「一票を入れるからにはちゃんと選びたい!」という謎の責任感が芽生えます(笑)。理解したいと思うし、押しつけがましくなく貢献できて前向きな気持ちになれるというか。

佐伯 どんなに人や環境にいいことでも、「完璧に」とか「我慢しなきゃ」と思うと続かないですよね。「不完全でもいいから少しずつ前に進む」「楽しく参加してみる」ということをみんなで実践できたらと工夫しています。

about ”imperfect表参道”

「Do well by doing good.(いいことをして世界と社会をよくしていこう。)」をコンセプトに、世界の食と農を取り巻く課題に生活者と共に取り組むウェルフードマーケット&カフェ。東京都渋谷区神宮前4-12-10 表参道ヒルズ同潤館1F

ギフトの特別感はそのまま、限りある資源を有効活用

使用した紙製品は新しいギフトボックスにアップサイクル

プラスチック使用量を削減するため、外装パッケージには主に紙を採用。購入後に使用が終わった包装紙、ギフトボックス、ショッパーは店舗内ボックスで回収も行う。リサイクルシステムによって紙に戻し、その紙は加工され再びギフトボックスへと生まれ変わるのだとか!

つくり手支援に参加して〝つかう責任〟を知る

商品購入時にはレジで投票チップが渡されます♪

売上の一部を活用して、得票数が最も多かった社会課題解決プロジェクトをサポート。トラちゃんが悩んだ末に応援したいと選んだのは、〝ブラジルの女性農家への学びの機会提供〟。「男性に比べて就労時間が週に7.5時間も長いのに、収入が30%も低いとは…! 働き者の女性たちの地位が向上するきっかけになればいいな」(トラ)

コーヒー豆をつくる農園の女性支援に一票!

人気のチョコレートバーク ボックス(小)¥2,000。ガーナの森林保全、および農家の自立への取り組みを通じて生産されたカカオが原材料。

甘いものが苦手な相手に日頃の感謝を伝えたいときには、厳選の豆から淹れた1杯のコーヒーを贈ってみては。ラテのミルクは、植物性も選択できる。

ラテドリンクには女性農家支援を通じて生産されたコーヒー豆を使用。

自分が受け取った幸せを他の誰かに返していく

トラ 今日いただいたチョコアイスもコーヒーも素材の味が生き生きとおいしくて、スタッフみんなひと口食べた瞬間、表情がパーッと明るくなりましたね!

佐伯 毎日の生活の中で幸せを感じられる。そういうひとときがあると、自分だけでなく他の人にも思いを馳せる時間をつくり出せるのではないかと。

トラ 背景を知ると温かさとか優しさとか、つくっている人への感謝も湧いて、誰かに贈りたくなります! 幸せを受け取ったら、今度は自分が返す。そうやって社会にいいことが巡り巡っていくといいなと思います。

贈る側も、贈られる側も、幸せな気持ちになれるギフトを

投票に参加してみて、自分が一票を渡されるとちゃんと責任をもつんだ! …と再認識。そして誰かに思いを込めて贈るなら、やっぱりつくり手さんの背景まで知って物語を添えられると素敵だなと。ギフト選びから幸せの輪を広げていきたいです!

目指せ「SDGs」! トラちゃんの今月の一歩

沖縄ロケで自然の力を全身に浴びてきました

マングローブの森を裸足で歩き、海水と淡水の間で進化した植物の生命力を実感。干潮のときだけ現れる幻の島では、死滅した珊瑚が流れ着いて年々大きくなっているそう。珊瑚がこれ以上死なずに幻のままでいてほしい!

■今月の1冊は…『地球があぶない! 地図で見る気候変動の図鑑』

温暖化の仕組みや分布、森の面積や気温の上昇などが視覚的にひと目でわかる、データを絵で見るにはもってこいの一冊です!

著:ダン・フッカー/監修:フランス・ベルクハウト他/訳:山崎正浩/創元社/¥2,640

今月のSDGsブランド「KAPOK KNOT」

木を伐採することなく採取できる、木の実由来の素材「カポック」を使用したエシカルなものづくりを行う。カポックはインドネシアに自生する植物で、水も農薬も最低限で生育可能。コットンの1/8の軽さと言われ、たった500gでダウンの暖かさを実現する優しさが魅力。

ロングベスト¥39,800(カポックノット)、靴¥13,750(RAYAN)、〝sizkuiro〟のイヤークリップ¥9,900・イヤカフ¥8,800・〝ombre bijoux〟のリング[左手]¥16,500・[右手]¥16,500(14 SHOWROOM)、ニット・靴下/スタイリスト私物
撮影/石田祥平 スタイリスト/鈴木千春 ヘア&メイク/久保フユミ(ROI) モデル/トラウデン直美(本誌専属) 構成/佐藤久美子 web構成/坂元美月 ◆この特集で使用した商品はすべて、税込み価格です。