トラちゃん×山田 早輝子さんが「食品ロス」を語ります
今、世界中で注目されている「SDGs」という言葉。これは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の頭文字を合わせたもので、世界193か国が貧困や環境問題の改善を2030年までに達成するために掲げた17の目標のこと。2020年からスタートした連載では、CanCamモデルのトラちゃんことトラウデン直美が「SDGs」について読者の皆さんと考える機会を作っています!
今回のテーマは、最近よく耳にする「食品ロス」について。持続的な食のプロジェクトを数々推進する山田早輝子さんに、食品ロスの現状と改善のヒントを教えていただきました。
見た目の良し悪しが理由で廃棄される大量の食材を救いたい
トラ 山田さんは、食文化の存続や発展に携わってこられたとか。温室効果ガスの発生源とされる食品ロスに対して、日本と海外との違いは感じますか?
山田 まずは、食品ロスになる理由が違いますね。日本は「見た目が悪いこと」が第一。大きさや形、色など、市場で定められた規格があって、農家さんが手塩にかけて育てても、傷があるとか形やサイズが合わない規格外野菜は市場で流通されにくく、廃棄される量が生産量の約30%になるとも言われています。
トラ 食料自給率が40%を切る日本の矛盾…!
山田 本当に。海外でも規格はあるのですが、普通のスーパーでもオーガニックの野菜が並んでいるので、消費者も「有機栽培や自然農法のものは傷がついていたり不ぞろいだったりするのは当たり前」という認識で、慣れているんです。ただ、アメリカの場合は国土が広すぎて、例えばカリフォルニアでつくったアボカドをアトランタまでトラックで運んでいる間に、炎天下でダメになって途中で廃棄する…というような状況がありますね。食品ロスの背景が違うので、日本独自でかつ継続できる取り組みが必要だと感じています。
トラ 日本には「もったいない文化」があって、私たちはムダなく使う知恵に触れてきたはずなんですよね。
山田 「ひと粒のお米には7人の神様がいるから残さず食べよう」というような教えもありますよね。一方で、おもてなしの心があるからこそ、やはり見た目がいいものを提供したいという側面もある。それ自体はいいことですし、制度ですぐには変わらないもの。そこで私たちは農家さんと直接コミュニケーションをとり、規格外でもおいしくて安全な作物をほぼ正規の価格で買い取って、新しい需要を生む形でビジネスにつなぐことでロス削減の道を探っています。
ビジネスで全方位よしを目指しつつ日々の小さなことを見くびらない
トラ 山田さんが立ち上げたフードロスバンクでは、どんな方をターゲットに展開されているんですか?
山田 アルマーニさんやブルガリさんが手がけるレストランや、パレスホテルさんなどのラグジュアリーホテルと組んで、フードロス食材を有効活用したメニューやスイーツを提案することから始めました。日本でまだなじみがない規格外品を適正な価格でハイブランドに使っていただくことで、品質の担保になる。実際、そこから街のレストランや大手企業でも採用していただくという流れができつつあります。さらに、英国の国際救援開発機構の報告で、「世界で最も富裕な10%(約6億3千万人)が1990~2015年の25年間に累積炭素排出量の52%に責任がある」というデータもありまして。
トラ 地球上の10%が行動を変えれば、半分以上の問題解決につながるんですね…!
山田 はい。この10%に効率的にリーチすることで、効果を最大化できるのではないかと。
異分野とのかけ合わせが解決のアイディアに!
トラ ブランドを通じて行動変容を目指す上で、気をつけていらっしゃることはありますか?
山田 1回では、結局うわべだけ環境保護に熱心だと見せる〝グリーンウォッシュ〟のようになってしまうので、持続可能な関係をきちんと築いていくことでしょうか。それには「三方よし」以上の仕組みである必要がある。環境はもちろん、生産者の方々、ブランドさん、我々消費者にとっても価値あるものでないといけないですよね。実際この2年、多くのブランドさんで企画が続いているのはビジネスとしてその循環が機能しつつあるからかなと思っています。
トラ 食の課題でありながら、ファッションやライフスタイルにも関わる業種と一緒に取り組まれていて、衣食住で多角的にとらえる視点が新鮮です。
山田 私自身、20代からアメリカやイギリスの非営利の慈善活動で、子供の支援や災害復興などに携わっていたのですが、日本にいて「モロッコやハイチが大変でね…」と言われても、遠くて自分とは関係ないと思ってしまいますよね。その点、「食」はすべての人が毎日必ず関わるもの。接点を増やして様々な分野に手を伸ばせたらという思いもあります。例えば、ブルガリさんと一緒につくったチョコレートでは、ロス食材の梅や柑橘類を使うほか、フェアトレードのグレードのカカオをセレクト。包装紙には佐賀で300年続く和紙を使っていただいています。これは、かつては100軒もの和紙工房が軒を連ねていた産地に残る、最後の工房のもので、コロナ禍で結婚式が激減して余ってしまったお花も併せて活用していただきました。ひとつのチョコレートから、食品ロスだけでなく児童労働や伝統文化にも関心を寄せるきっかけになればという試みですね。
トラ 私も伝統文化が好きで各地の職人さんにお話を聞いているので、こんなふうに課題をつないで新しい価値を提供できるんだとワクワクしました!
山田 ありがとうございます! やはり義務感や危機感だけで動いてもらうには限界があって、サステナビリティ(持続可能性)をサステナブル(持続可能な)にしていくためには、多様性と企業成長が欠かせないと痛感しています。
廃棄量を増やすのも社会を変えるのも、個の力の集合体
トラ 同時に、家庭からの廃棄量も約半分。私たち20代にも身近な問題ですが、今日からできることはありますか?
山田 SDGsとか食品ロスと言われると、何かすごく大きなことをしなきゃいけない気になると思うんですよ。勉強しなきゃとか、大手企業がやらなきゃ意味がないとか。でも、「100%わかってからやろう」と思ったら、たぶん死ぬまで解明できないことがある。気候変動はCO₂のせいではないという説を唱える人もいれば、今はむしろ氷河期だという研究もありますから。ただ、食べ物を残すのがもったいないというのは誰しもわかりますよね。すぐ食べるならお店では商品棚の手前にある賞味期限の早いものから取る、買いすぎない、流通時の環境負荷が少ないローカルなものを近所で買う、少食の方は外食時に「少なめで」とオーダーする…といった小さなことの積み重ねでも効果が期待できます。
トラ 食べきれない食材はすぐ冷凍するという手も! 畑に通うようになって自然の恵みや農家さんの労力を知り、収穫した野菜を使いきるように心がけています。
山田 まさに「いただきます」の精神ですね。ご自身が実践していることの発信も素敵だと思います。
トラ ただ、日本では「意識高い」と敬遠されてしまう現実もあって、遠慮している人は多い気がします。
山田 ハーバード大学の研究に「3.5%の人を動かせば社会は変わる」という法則があります。それって、約30人に1人。他の人のことは変えられなくても、自分は変えられる。食品ロスの問題も「私だけがやってもしょうがない」じゃなく「私がやったら変わるかもしれない」と自信をもって取り組んでいただけたらうれしいです。
フードロスバンクのサステナブルな取り組み例
小田原に300年続く柑橘農家の減農薬みかんをジュースに!
家庭から大きな変化を起こせる分野。自信をもって取り組んでいきたい
一日に三食と考えると、フードロスって環境対策を始めるにはすごくよい分野。小さく見える行動がどれだけ大きなインパクトになるか最初はわからなくても、自分が気持ちいいと思えることから無理なく続けられたら、自信をもてる気がしました!
目指せ「SDGs」!トラちゃんの今月の一歩
■風力発電所を取材しました!
ドローンを使っての点検など、貴重な体験に。コストや維持の課題があって、日本ではまだまだ進まない再生可能エネルギーですが、色々な角度から挑戦して、きれいな地球を未来に残すことを考えたいなと思いました!
■今月の1冊は…『ごみを出さない気持ちのいい暮らし』
ごみを減らすためのアイディアが豊か。100%実践は難しくても、自分なりに工夫して少しでもごみの出ない暮らしをしていきたい!
今月のSDGsブランド「CFCL」
ブランド名は、Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)の頭文字から。裁断不要で、ゴミをほぼ出さない3Dコンピューター・ニッティングの技術を中核に、環境に配慮した国内素材を厳選。時代に左右されない衣服を提案する。