寝ようとしても眠れない、夜中に目が覚めてしまう。そんな睡眠の“質”で悩む人が増えているって知っていましたか?
現代人の”不眠”は、仕事などによるイライラや不安、興奮が静まらないといった心のストレスで、自律神経が乱れていることが原因と考えられているのだそう。
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今回は、そんな不眠について、たまきクリニック院長 玉木優子先生にお話を伺いました。
西洋医学と東洋医学を融合させ心療内科も合わせ、保険診療による漢方、気功、アンチエイジングなど赤ちゃんからお年寄まで心と体の両面から患者様一人一人に合った医療を心がけている。
不眠には4つの種類があります
不眠のお悩みには、大きく分けて4種類に分類されるそう。あなたの不眠はどんなタイプ?
(1)入眠障害
寝つきが悪い。入眠までに時間がかかる。スムーズに眠れない。
(2)中途覚醒
スムーズに入眠できても、深夜に(途中)目覚めてしまう。
(3)早朝覚醒
早朝に目覚めてしまう、その後寝たいのに眠れない。
(4)熟眠障害
十分な睡眠をとっているのに、寝た気がしない。疲れがとれない。
タイプによって対処法も違う?
仕事のストレスやプレッシャーなどで、夜になってもイライラや不安、興奮がおさまらず、自律神経のバランスが崩れて「交感神経」が優位になっていると不眠の悩みが深刻化してきます。
また、深夜営業の店などで、夜でも強い光にさらされていると、人間に本来備わった「体内リズム」が乱れ、夜になっても眠くならない、眠れないという状態になってしまいます。さらに、就寝直前までテレビやスマホを見ていることで、いつまでも脳が覚醒モードになってしまう人にも不眠のお悩みが多く、他にも体質や気温・湿度によって、体が冷えたり火照ったりてし、眠りが悪いという方もいます。
心の健康だけでなく、生活習慣や、冷えなどからも不眠になることもあるんですね。では、実際に不眠の悩みが出てきた場合には、どうしたら良いのでしょうか。
適切な対処法は?
不眠には、主に4つのタイプがありますが、それぞれに若干対処法が違うようです。適切な対処法はこちらです。
(1)入眠障害: まずは夜は0時までに寝て、朝は決まった時刻に起きて日光に当たり人間本来のリズムに合わせた生活をすることをこころがけましょう。また、脳の覚醒モードをリラックスモードに切り替えるために就寝直前までテレビやスマートフォンPCを見ず、冷やしすぎや暑すぎ・コーヒーや紅茶等カフェインなど覚醒作用のあるものの摂取は控え、満腹でも空腹でもなくほどほどにしましょう。それでも興奮して眠れないときや心配や不安が強い場合は漢方や精神安定剤・超短時間型の睡眠導入剤が有効です。
(2)中途覚醒:無理に寝ようとせず体をリラックスさせれば自然に眠りやすくなるので、ストレッチをしたり、次々と思考が止まらず覚醒してしまう場合は、意図的に思考を断ち切るために呼吸だけに集中する方法がお勧めです。仰向けのままお腹に手を当て、吸うときにおなかが膨らむ腹式呼吸をしてみましょう。息を吐く時間を数時間の2倍くらいにし、自分の体がだんだん床に沈み込むように意識すると副交感神経優位に変わっていきます。あまりにも中途覚醒が多い場合は短時間型・中間型・長時間型の睡眠剤が有効です。
(3)早朝覚醒:早朝覚醒にとって深い要素は光のコントロールです。日光を浴びることで睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌停止し、分泌が再開されるのが約15時間後なので早い時間に日光を浴びるとその分眠くなる時間が前倒しになるので、遮光カーテンを利用したり、夕方に光を浴びるなどして体内時計の前倒しを防止してみましょう。早朝覚醒は自分が望む時間より2時間以上早く目が覚めてしまう場合で、原因としてうつ病・ストレス・生活の乱れ・加齢等が関係している場合が少なくないので、早朝覚醒が続いている方は早めに医療機関を受診し、抗うつ薬や睡眠剤の処方を検討されたほうが良いと思います。早く寝すぎている方は0時をすぎない程度に就寝時間を遅らせ、4時間以上寝れていて午前4時以降で疲れもないようでしたら起きて朝活に充てても良いでしょう。
(4)熟眠障害:熟眠障害の対策は早朝覚醒とは逆に午前中からしっかり日光を浴びるのがお勧めです。エアコンや除湿器で温度・湿度を快適にし、自分に合った心地良い寝具を選び、就寝時間前に入浴で体を温め、ストレッチなどで心身をリラックスさせることも熟眠につながるため積極的に取り入れましょう。
食べるものも重要!食事と睡眠は密接な関係が
快食快眠快便は健康のバロメーターでもあり、食事と睡眠は健康維持のために密接な関係があり、いつどんなものを食べるかによって眠りの質も違ってきます。食べ物を消化するには3時間くらいかかるので、就寝の3時間前には食事を済ませておくのが良いでしょう。睡眠の質を上げるには、脳や神経を落ち着かせリラックス作用のあるビタミンやトリプトファンやグリシン・セリン等のアミノ酸を多く含む食品がお勧めです。トリプトファンを多く含む食材は魚介類・鶏肉・卵・大豆製品・ゴマなどで、睡眠ホルモンであるセロトニンを生成し睡眠を促し、グリシン・セリンは魚介類や牛乳などに含まれ脳をクールダウンし体温を下げることで眠りに入りやすくします。就寝前には白湯で血行を良くするのも効果的ですし、グリシンがとれるホットミルクなどを飲むのも良いでしょう。
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漢方もおすすめ
なんとなく精神安定剤や睡眠導入剤に抵抗がある人もいると思うのですが、不眠に効果的な漢方はありますか?
漢方では不眠の要因となる疲労やストレスは気の巡りを乱すものと考え、不足している気は補い、過剰な気は鎮め、気の流れを良くして心を落ち着かせ、眠りを妨げる原因に働きかけ良い眠りに導いていきます。
漢方は4つのタイプ別に選ぶのではなく、その人の病態や体質・体力(証)・生活様式などの環境要因を含め様々な要素から薬を選びます。よく処方するものとしては心身が疲れて眠れないときは酸棗仁湯・補中益気湯、虚弱体質の不眠には加味帰脾湯・帰脾湯、鬱で眠れないときは半夏厚朴湯・抑肝散加陳皮半夏、興奮して眠れないときは抑肝散・柴胡加竜骨牡蛎湯等があります。漢方はその人の体質や体力に合わせ、より自然な形で睡眠に導く効果がみられます。
不眠は悩まず専門医に相談を
不眠は病気のひとつでもあります。不眠が原因で、「仕事の効率が落ちた」「体がいつもだるい」「体調を崩しやすくなった」と感じている方は、一人で悩まず気軽に専門医に相談してみましょう。
構成/鬼石有紀