人から嫌われたくない……と考えるのはごく自然なこと。しかし、それが行き過ぎているのではないか…特に今の若い世代は非常に「仲間はずれ恐怖」が強いのではないか。そうアラートを鳴らしているのが、精神科医の和田秀樹さんです。
「変なことを言って、みんなから嫌われないようにしよう」
そんなふうに戦々恐々としながら、周囲に合わせて生きることに疲れ果てている。そんな人が少なくない。著書『みんなに好かれなくてもいい』の中では、この苦しみから抜け出すにはどうしたらいいのか。その方法が語られています。
「友達が多い人のほうが幸せなはず」という幻想がある若い世代
そもそも、この苦しみの背景にあるのが「友達が多い人のほうが幸せなはず」という幻想です。2014年に行った「全国家庭児童調査」によると、18歳未満の男女約1000人に「大切なことだと思うこと」を3つ挙げてもらったところ、「健康であること」がもっとも多く、その次が「友達がたくさんいること」でした。友達の多さが人間の価値基準になっていることがわかります。
友だちは大事ですが、たくさんは必要なのか。そして、そのたくさんの友達は本当の友達なのか。和田秀樹さんは、「人に嫌われたくない…」に縛られて疲れてしまっている人に向けて、本書で3つの提案をしています。
人に嫌われたくない…に縛られて人生疲れた時の対処法3つ
(1)本音を言える友人を1人作ること
誰とでも、別け隔てなく仲良くできる人よりも、1人か2人の本当に仲の良い人をつくるほうが幸せになる可能性は高いです。例えば、多くの人にモテたいと思っていても、本当に好きな相手から好かれなかったら、その状態は幸せとは言い難い。友達も同じです。
親友は1人いれば十分。そう考えれば、あまり気負わずに済むのではないでしょうか。
また自分にとって本当に大切な人は「本音を言える」人です。本音を打ち明けられるごく少数の親友と、本音を言えない「その他大勢」の友人…どちらが重要でしょうか。本音を言える友達が1人でもいれば、毎日の生活はラクに、そして楽しくなるのです。
(2)自分のパフォーマンスを上げる
自分自身の「生きる力」を強化していくことも大切です。あなた自身が自分らしさを手に入れて幸せな人生を送るためにも、能力を高め、取り柄を磨くこと。それは勉強でもスポーツでも、もっとマニアックな趣味でもOK。とにかく自分しかできないことを突き詰めることが自信につながり、自分の支えとなります。
「人から嫌われたくない」の裏にあるのは「人に認めて欲しい」という思いです。自信がない人は、人から好かれることで自分の価値を確認しようと周囲に合わせてしまいます。しかし、周囲に迎合ばかりしている人が本当に魅力的でしょうか。人に認められるかどうか関係なく、その人らしく生きている方がずっと面白いし、魅力的です。
今、自信がない…という人は、とにかく自分にできること・楽しめることを徹底的にやってみましょう。自分にしかでいないことを磨いて、自分自身の価値を高めれば、周りに合わせなくても食べていくことができます。不要な同調圧力に屈する必要もなく、誰かの顔色を気にしなくても良くなるのです。
(3)自分が最大限輝ける場所を探す
友達をつくる努力や、自分のパフォーマンスを上げる努力をしてみても、今の環境は自分に合わないと感じたら、自分に合った場所を探すという選択肢もあります。まずは違う世界を探してみましょう。
ある環境で重要とされている価値観でも、別の世界では通用しないということもあります。今いる世界では「変わり者」だったとしても、違う世界では自分と似たような人ばかりかもしれません。
ひとつの世界しかないと思ってしまえば、そこで合わないと不安になるでしょう。しかし、自分に合う世界は必ずある。そして、その世界では自分と同じように感じている人がたくさんいる。そう考えれば気持ちが少しラクになるのではないでしょうか。
人間なんてどうせ変われないもの…も幻想
紹介した3つのことを考えて生きていけば、人に嫌われることを過度に恐れず、自分らしい人生を手に入れることができるはず。そう和田秀樹さんは語ります。
しかし、「人間なんてそう簡単に変われない」と諦めている人がいたら、要注意。こうした考えは和田さん曰く、「自分の今の生き方を正当化するために、そう自分に言い聞かせている」のだそう。今、何もしなかったら、何が起こらないのか。ぜひ考えてみてください。