どれだけいい商品でも、売られている場所や売り方が見当違いなら、それが見つかったり売れていくことはありません。それはきっと、恋愛も同じ。自分なりに頑張っているはずなのに、なかなか恋愛や結婚ができず困っているなら、「自分の売り方」を変えてみることでうまくいく可能性もあります。
今年春に発売された「ナチュラルな自分のまま相手とパートナーシップを築き、幸せな結婚をする」をテーマにした書籍『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本 35歳からのナチュ婚のすすめ』の著者である、外資系企業でマーケティングを担当していた恋愛コラムニストのトイアンナさんと、数々の女性のキャリア&恋愛を支援してきた金沢悦子さんに、独身アラサーの編集部スタッフ後藤がお話をうかがいました。
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◆絞り込んで狙え。自分を売り込む戦略を立てる
CanCam.jp編集部・後藤(以下、編)さて、この本の中で「恋愛とマーケティング」について多数語られていますが…改めて教えていただいてもいいでしょうか。
トイアンナさん(以下、トイアンナ)ここまでの回で見つけた「自分が結婚相手に求めたい条件」に合わせて「自分の伝え方」を変えることです。
編 自分を変えるということでしょうか?
トイアンナ いえ、あなたという中身自体は変える必要はまったくありません。ただ「どう見せるか」を変えるんです。「嘘をつく」ではなく「伝える情報を厳選する」ことです。「どんな人に、何を伝えて、どこで出会ってどう売り込むか」を変えるだけで、グッと相手が見つかる確率は高まります。相手になってほしい男性を絞り込んで、何を伝えることで「この人は僕向きのパートナーで、今すぐ結婚したい」と思ってもらえるかを考えます。
編 絞り込むことで対象の人数は減ってしまいませんか?
トイアンナ 「薄く広く全員にモテる方向を目指す」は「結局誰からもモテない」もしくは「全然自分が好きじゃない相手ばかりからモテる」に陥りがちなので、ナチュラルな自分のまま幸せな結婚をしたいなら、むしろしっかりと絞ったほうがいいです。たとえば人ではなくモノ・ブランドですが、全世界に知られている「コカ・コーラ」は一見「ターゲットは人類全員」のように思いませんか?
編 思いますね。
トイアンナ でも実は、コカ・コーラは「ファミリー層」と「スポーツ」を明確なターゲットとして定めていて、このふたつを楽しむシーンの一部であれるようなコミュニケーションを行っています。だから、家族で過ごすクリスマスにCMを出すし、スポーツのスポンサーにかなり力を入れています。その結果、おうちでの誕生日パーティーに欠かせない存在になっています。全人類がターゲットに見える「コカ・コーラ」でさえ、明確なターゲットを決めているんです。
編 まずはどんなところから始めていけばいいでしょうか?
トイアンナ まずは「自分が好きなタイプ」と「自分が落とせるタイプ」を区別しましょう。20代前半くらいだとまだいろいろ変わってくると思いますが、30歳を過ぎている場合は特に「これまで自分が確かに出会っているのにウケてこなかった相手に、いきなりウケるようになること」はほぼ不可能だと思ってください。仮に不可能ではないとしても、自分らしさが消えるような不自然な行動を取る必要があり、それが結局幸せにつながらないことが多い。だからこそ自分が誰にウケてきたかをしっかり考える必要があります。それがこの本で提唱している「ナチュ婚」です。
・「ウケる、かつ好きになれる」層をターゲットとして決める(WHO)
・何を伝えたら、相手に「この人は自分向きである」と思ってもらえるか(WHAT)
・そういう人は日頃どこにいて、どこに行けば出会えるかを考える(HOW)
この3つが勝負です。
編 もし「自分はこれまであんまり男性にウケてこなかったな…」という場合はどうしたらいいでしょうか?
トイアンナ 単に自分がモテていたことに気づいていなかった場合もありますが、もしどうしても思い当たらないなら「仕事や学生時代にこういうタイプの人は怖かったけど、こういうタイプの人はまだ話せた」くらいでもOKです。今、どこにもウケていないと思うなら、単に人生でそのタイプの男性に出会ってこなかった可能性もあるので、発掘していくしかないですね。「今から自分が無理せずウケるならどの層なのか」は、ただただ自分で考えてもわからないことも多いと思うので、できれば異性の友達に「私があんまり無理せずにウケる層ってどこだと思う?」と聞いてみるとある程度参考になるはずです。あとは、最初は勇気がいるかもしれませんが、「ものすごく好き」じゃなくても「まぁアリだな」くらいには思う複数人に「◯◯くんが彼氏だったらいいのにー!」と、軽いジャブのノリでとりあえず言ってみるのも効果的ですよ。
編 …めちゃくちゃ勇気要りますね。
トイアンナ ジャブっぽく言うからこそ、だいたい男性たちは「いやー君は俺のタイプとは違うなー」などとジャブで返してくるんで大丈夫ですよ。でも何回もジャブを打ちまくっているうちに「これはいけるのでは?」と反応があるところがあるはずです。それがあなたが落とせるターゲット層です。
これは複数人に行うことが重要で、むしろ、ひとりにやるほうが勇気が要ります(笑)。女友達に「今日かわいいね」と言うくらいのノリで、「彼氏だったらいいのにー!」と言ってみるんです。何人にもやればやるほど、1回あたりに必要な勇気が減ります。自分がウケる層がわかってくると、今の自分はそれに対して高望みをしているのか、もっと望んでもいいのに私を好きになってくれるなら誰でもいいと、必要以上に「低望み」をしてしまっているのかが見えてきます。
◆「自分が好きなタイプ」がはっきりしているのに、うまくいかないときあるある
編 唐突に私の話をすると、私が絶対に譲れないのが「お互い好きなことがあって、ひとりの時間も大切にできる人」…なんです。最初の半年くらいはうまくいくんですけど、途中から男性が私をやたら第一優先にするのがモヤモヤするんです。私は他に第一優先にしたいことがある日も結構あるから、毎回第一優先にされるのはイヤだ…という。これはどうしたらいいんでしょうか?
金沢 それ、正直「本当に心の奥底で思っているのかな?」と思います。かなりよくあるパターンなんですが「かわいい自分」を認められていないし、自分を大切にできていないから、自分を大切にしてくれる男性に引いてしまうのではないでしょうか。たとえば私たちが日頃使っている統計心理学ツール「i-color診断」だと、後藤さんのカラーは「ピンク」です。今こうやってお話していても思うんですが、男性がしょうがないな〜ってかわいがりたくなるような、抱っこしてよしよししたくなるような、かわいい赤ちゃんのようなオーラがにじみでているんですよ。
編 えー!? 私が!? そんなはずないです!
金沢 それがまさに「かわいい自分を認められていない」のパターンです(笑)! それは長女の人によくあります。自分のかわいさを許せなかったり恥ずかしがったりしているんですが、心の玉ねぎの皮のようなものを何枚も何枚もめくった芯の部分に、きっと隠し持った「かわいい赤ちゃんの自分」がいるはずなので、「あ、いたんだ、ここに」と認めてあげてください。そうすると、男性が後藤さんのことをかまいたくてしょうがないという関係性になったときラクになれると思います。「あぁ、みんな今まで好きだったものより私のこと好きになっちゃうんだな、でも私は赤ちゃんだから! かわいいから! よしよししたくなるんだよね、しょうがないよね!」と受け止めるんです。
編 まさに長女なんですが…そんなこと思えますかねぇ…。
金沢 覚悟を決めてください(笑)。
トイアンナ 別に外に出さなくても、内心「私は愛らしい赤ちゃんですので」くらいのことを思っていていいと思います。私は村上春樹の『ノルウェイの森』のミドリちゃんが理想なんですよ。「今すぐアイス買ってきて」と言って買ってきてもらったのに「食べたいのはこれじゃない」と言いたい。
編 その領域に行ける気がしないんですが、トイアンナさんは昔からそういう考えなんですか?
トイアンナ いえ、以前は違いましたよ。私も魔女のサバトのワークを通じて動けるようになったので、今はコナをかけた男にお前は違うと拒否されても「こんなに美しい女の良さをわからないなんてセンスないわね」と思えるけれど、かつては全然そんなことなかったです(笑)。でも実際、自分で「私は魅力的」と思っていると、相手も魅力を感じてくれやすくなるんです。
金沢 男性にそうやってよしよしかわいいね〜されると、後藤さん的には負けた気持ちというか「何私のことわかった気になってるわけ!? 私そんなヤワな女じゃないわ! 赤ちゃん扱いしないで!」となりませんか?
編 金沢さんは占い師なのでしょうか…なりますね…。
金沢 これも、ピンクの人によくあるパターンなんです(笑)。実はその赤ちゃん要素を押さえ込んで仕事社会で生きていくのが大変なタイプで、どう抑えてもほっとけない要素が出てきてしまう。でもそれに気づかれると「えっ、どこからわかったのかしら、気持ち悪い」となりがち。なんなら自分がいちばん自分の魅力に気づいていないんです(笑)。どんな人も魅力的な部分があるので、まずは自分で自分は魅力的だと認めてあげると、変わってくると思いますよ。
◆結局、幸せになれる結婚とはどんなもの?
編 結婚してもしなくても幸せに生きていく方法がある時代ですが、結論として「幸せになれる結婚」とは、どのようなものなのでしょうか?
金沢 一言で言うと「条件づけではない結婚」だと思います。頑張る女性たちは「いい大学に行って、いい仕事をして、結果を出せる私に価値がある」という条件づけで頑張ってきています。もとをたどれば親御さんからの期待もそうですよね。「親の期待に応えられる自分に価値がある」と、ずっと思ってきているはずです。
そういった条件づけがなくて「自分は自分のままで愛されて、ありのままの相手を愛する」のが幸せになれる結婚です。案外、条件の部分は移ろいやすいものです。たとえば「大手のIT企業で大きな仕事をしている年収3000万の旦那さん」は、もしかしたら不慮の事故で働けなくなるかもしれない。その年収を失ったとき、それでも相手を愛せますか? ちゃんと、もっと根っこの価値観の部分でつながれていますか? ということです。
トイアンナ 前回もお伝えしましたが、だから、自分で自分を価値ある自分として扱うのがまず何よりも大事です。自分を愛せないと、「自分を愛する男」を愛せません。自分のありのままを愛してくれる人が現れても逃げてしまいます。
金沢 自分を価値ある人間だと思っていないと、男性に振り向かれた瞬間に「え、こんな私を好きになるなんて、何この人キモい! こんな私を愛するなんておかしいんじゃないの!?」と思ってしまいがちです。だからとにかく、まずは自分を愛することが大前提になります。
トイアンナ とはいってもやはり条件づけをしてしまい「これをできる自分だから価値がある」という方向にいってしまうかもしれませんが、とにかく「私は私のままで価値がある」と思い込んでみてください。根拠はなくていいんです。これは心理的学的にも証明されていますが、たとえば「私は数学ができる」と自分に言い続けると、不思議と得意になっていくんです。同じように「私は非常に魅力的な女性」「私は美人」と言っていくと、それだけで意識が上がるので、日々のメイクなども変わっていきます。そうすると、本当に美人になっていきます。
金沢 今の事実がどうかはまったく関係なく、鏡の中の自分に「えー私めっちゃかわいいじゃん!」と言っていると、言っているうちに本当にそっちに引っ張られていきます。脳科学でも証明されていて、脳って実は騙しやすいものなんです。たとえばレモンや梅干しを想像すると、目の前にそれらがなくても体が反応してつばが出ますよね。これも脳をだましている行動です。それくらい、脳は簡単に騙せます。騙さない手はありません。
トイアンナ 逆に「今日の私も本当にだめだな〜」と無意識にでも毎日自分に言っていると、もちろんそっちの方向にも騙されていくのが要注意ですよね。
金沢 そう、だから自分の大切な友達に接するように、自分に接することが大事。毎日自分に「かわいい!」「今日イケてる!」「今日の服超似合うじゃん!」って心の中でもいいから思ってみたり、特に面白いことがなくたって鏡の前で笑ったりするだけでも、脳はいま「お前は幸せなんだな」と認識して幸せになっていくものなんですよ。
トイアンナ 自己肯定感って、自分がいちばんダメダメなときにでも「自分が好き」と思えること。そう思っていたらずっと幸せでいられるから、幸せな人生には自己肯定感が大事。婚活・結婚をテーマとしたこの本で、わざわざ「自己肯定感を高めるとは何か」という章を作ってあるのは、それが幸せな結婚ができる近道であり、大前提だからです。「自分のことを幸せにしようとしない」選択肢を選び続けている人が本当に多いんです。「どうせ私なんて」といじけたり、失うことを極度に恐れて目が曇ったり、かわいい私を許せなかったり、他人の幸せが許せなかったり…。もう、その道にいくのはやめましょう。きちんと自分の幸せが何かを見極める中で、結婚をせずに幸せになる人生を選ぶこともおおいにアリです。もし結婚をする道を選ぶなら、自分の人生に本当に必要な相手をはっきりさせて、自分が無理せずナチュラルに幸せになる道を探すこと。この本が、誰かの「ナチュ婚」の手助けになれれば幸いです。
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考えることが多すぎるあまり、複雑に考えすぎて人はシンプルなことこそ見逃してしまうもの。「どうやったら結婚できるか」ではなく「どうやったら幸せになれるか」を考え、それを実行していくのが「ナチュ婚」の考えです。
全3回のインタビューを通して、本の根幹となる考えをいくつか紹介しましたが、具体的にどうするべきかはこの記事で紹介すると非常に長くなってしまうため、ぜひ書籍『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本 35歳からのナチュ婚のすすめ』をあわせてご覧ください。「35歳から」とありますが、それ以下の年齢の方であっても、きっと、人生に迷うあなたの指針となる一冊となるはずです。
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金沢悦子さん
株式会社はぴきゃり代表取締役。リクルートを経て日本初の総合職女性向け転職情報誌「ウーマンtype」創刊編集長。これまでに1万人以上の働く女性のキャリア支援を行う。婚活結社「魔女のサバト」主宰。
トイアンナさん
PAX株式会社社長。外資系企業でマーケティングを担当後、恋愛コラムニストとして1500名を超える相談実績から独自の恋愛・婚活分析を展開。婚活結社「魔女のサバト」メンバー。