「モデル出身だからなめてたって言われると、やった!と思う」【高橋メアリージュン×押切もえ対談・後編】

(右)押切もえさん (左)高橋メアリージュンさん (C)CanCam.jp

女優として活躍する高橋メアリージュンさん。『闇金ウシジマくん』の犀原役や『コウノドリ』での産後うつの妻など、深く印象に残る役を多数演じています。そんな彼女が、著書『Difficult?Yes. Impossible? …No. わたしの「不幸」がひとつ欠けたとして』を今年1月に発刊。子宮頸がん、潰瘍性大腸炎、家族と借金など、さまざまな苦難を乗り越えた彼女の力強いメッセージは、同世代の女性をはじめ、多くの人の心をつかみ、3月には重版するなど話題となっています。

実は『CanCam』OGモデルでもある高橋さんと、おなじく『CanCam』OGモデルであり、先日めでたく出産されたばかりの押切もえさんとの対談が実現。押切もえさんからみた高橋さんの意外な素顔、著書に込められた想いなどをお聞きしました。

★前編はこちら→ 「CanCamっぽくないってずっと言われていました」【高橋メアリージュン×押切もえ対談・前編】

 

「書こうと思っていた部分と、そうじゃない部分がある」(メアリージュン)


高橋メアリージュンさん (C)CanCam.jp

CanCam編集部(以下、CanCam) 今回「著書を出そう」と思ったきっかけは?

高橋メアリージュンさん(以下、メアリー) いつか本を出したい、家族の宝物になるものを何か出せたらいいなとはずっと思っていたんです。ちょうど30歳になるし、デビュー15周年も迎える、そのタイミングで縁あってお話をいただいて。両想いというか、運命的なものを感じて、そこから話が一気に進みました。

押切もえさん(以下、押切) 宝物っていうのは、自分のではなくて、ご家族の、なんですね。

メアリー はい。家族は私にとって、すべてっていうくらい大きい存在。私にとっての軸そのものです。家族の宝物になるってことは、自分の宝物になるってことだから。

もえ その気持ちがぶれたり…っということはなかったの? 例えば自分が何かやろうとしている時に、家族と意見が合わなかったり、足枷みたいに思うことって、今まで全然なかったの?

メアリー ないです。自分がちょっと間違った方向に進んだときとか、ぶれかけた時に「そっちじゃないよ」って戻してくれるのが、むしろ家族でした。

もえ ご家族の、本を読んだ感想はいかがでしたか?

メアリー 父は泣いたって言ってましたね(笑)。

もえ その話を聞いただけで、私でも泣きそうです。すごくあたたかいご両親で。

メアリー 父はゲラを読んだとき、私が当時何を思っていたか、初めてきちんと知った、と言っていましたね。当時はやっぱり、細かいところまでは知っていたわけじゃなかったから。だからこの本を読んで、「より1人の女性として強くなった、成長してくれてたんだね」って言ってくれました。。

もえ ああ、また涙が…。

一同 もえちゃんが親みたいになってる(笑)。

もえ 本当に、これだけ内面を出す作品にするっていうのは、すごいと思う。反響もすごかったでしょう。

メアリー 病気のことは、もともと書こうと思っていた部分と、そうじゃない部分もあります。でも「何のために本を書くんだろう」って考えたときに、もちろん家族の宝物というのはあるんですけど。自分が大変な目にあって、治って、それでオッケーじゃダメでしょって思ったんです。同じような思いをする人もいるかもしれない、今もいるし、その人たちにちょっとした光になってあげられたら。早く検診に行ってもらうことで命を助けられるきっかけになれば、という気持ちが常にありました。

もえ うん。

メアリー だから、同じ病気の方から「元気が出てくる」とか「励みになります」とか、SNSで直接コメントいただいたりすると、やっぱり話してよかったと思いますね。だから、病気に限らず実際に悩んでいたりとか、「嫌なことばっかり起きちゃうな私の人生って…」って思っている方に、これを読んで「私も幸せになる未来を諦めないで信じていいんだ」って思って、心が軽くなっていただければいいなと思います。

 

「今、この瞬間に幸せを感じられるかどうか」(高橋メアリージュン)


押切もえさん (C)CanCam.jp

CanCam メアリーさんが、もえさんに聞いてみたいことはありますか?

メアリー 私、とにかく話すのが苦手なんです。撮影現場でも、相手がお話ししてくださっているのを、ただただ「はあー」って聞いてるだけになってしまって。すごく感動しているのに、うまく返せないというか、下手くそで…。書いているほうが本心が出やすいなって思いました。もえちゃんはどうでした?

もえ 私もそういうところがあります。口下手というか、その瞬間の期待に応えようとしてしまって、誤解されることを言いがちだったり。文章とはやっぱり違いますよね。あと、書いていると「あ、自分ってこんなこと考えてたんだ」って、自分の気持ちに発見もあったりします。

メアリー それ、すっごくありました。忘れていたこと思い出したり。「どうして幸せになるんだろう」っていうことに対して、きちんと考えたことなかったなって。でもよくよく考えたら、その時に「幸せ」って気づけたらから幸せなんだって。それは書きながら答えが出ました。

もえ 改めて「幸せ」って気づく瞬間って、どんな時?

メアリー 今! 今この瞬間思います。こういう再会ができたりとか、「会いたい」って思う人が健康でいてくれて、幸せでいてくれることとか、今もこの空間が幸せです。

もえ 私が本を読みながらすごく共感したのは、「自分が幸せだと気づくことが大事」っていうところで。幸せって受け止め方であったり、自分の状況でもあるじゃないですか。なんでもないことがありがたいと思えたり、その価値に気づけるのって、自分の「心」が大事というか、前提にあって。私の場合、30代前半くらいのときは疲れていたこともあって、素直さがなくて、そういうことには気づけてなかったなって思います。メアちゃんの本を読んで、30歳でこれだけピュアで同じ志を貫いているのがすごいなーって思って。それは、自分を「素直でいよう」と正したりしているものなのか、それとも意識しなくてもいつも変わらずいられるのか?っていうのは、ちょっと聞いてみたかったんです。

メアリー 今の自分がダメ、本当に素直じゃない、とかはよくあります。ちっちゃなことだと、たとえば駅の改札で自分が急いでいて、前の人が引っかかっちゃった時に、「あーっ」て思っちゃう。でも自分がもっと早く家を出ていれば、心のゆとりがあるからそんなことは思わなかったはず。そういうのに気づいて「あっ」って思うことはよくあります。今でも直せないのは、街中で気づいていただいたときに、反応を返すのがすごく下手で。見られる職業なのに(下を向きながら)すぐこうなっちゃう。見られても笑顔でいられる心の余裕が欲しいです。

CanCam 押切さんって、外でもニコニコされてますよね。

もえ そうかなあ。異常に意識しているところもあったからな(笑)。でもそういう自意識って女優さんにとってはいいことだと思うし、そういう時気持ちを律して、正しているのはすごく立派だなあと思います。

 

「モデル出身だからなめてたって言われると、やったあと思う」(メアリー)


(右)押切もえさん (左)高橋メアリージュンさん (C)CanCam.jp

CanCam 最後になりましたが、CanCamのインタビューということで、おふたりが10代・20代の頃の自分にかけてあげたい言葉をいただければと。

メアリー 本当にこの先いろいろなことがあると思うけど、絶対幸せになれるから諦めないで。諦めないでってなっちゃうけど。幸せになれるよ、大丈夫。

もえ 不安だった?

メアリー 不安もあったり、悲しいときもあったりして。30歳になる自分とか想像もできない時もありました。本にも書いたんですけど、16歳の時に初恋の方が亡くなって。人の死ってやっぱりすごく大きいですよね。自分を責めたりもしていたんですけど、「それ以上生きちゃいけないなみたいな」って時が一瞬あった。その時の自分に大丈夫、絶対幸せになれるって言いたい。

CanCam もえさんは?

もえ 今のままでいてって。20代後半くらいに、変に人の意見が入ってきてしまって、変にこじらせるようになって。急に人の目ばかり気にするようになっちゃった。人の価値観にあわせて自分に嘘つくから行動もおかしくなっちゃって、なんだかすごく疲れていました。「君は真面目すぎる」って言われたら不真面目なことを言おうとかやろう、とかね。自分らしくてそのままでよかったよって言ってあげたい。

メアリー そういうの、ありますよね。「真面目でいい子だね」って言われるのが、逆にコンプレックスではあったりします。芸能界だから個性的に、はみ出さなきゃいけないんじゃとか、ちょっと悪い方がいいんだとか、思っちゃうことは今でもあります。

もえ じゃあ、メアちゃんも今から遅れてきた思春期がくるかもね。

メアリー やばいかな。でも対処法は今聞けたので(笑)。でも、ドラマとかの打ち上げで、「モデル出身だからなめてたよ」、って今でも必ず言われるんです。そのとき、やったあって思う。なめてたよってことは、ちゃんと認めてくれたってことだから、ある意味ポジティブに捉えると得だなって。武器ですよね。逆の武器。

もえ 本の冒頭にメアちゃんが書いていた、「また自分と会った人が、また自分に会いたいって思ってくれる自分でいる」っていう。それができているからその言葉をもらえるんだよね。ひとつひとつ、1日1日大事にしてやってきたことが、人生じゃ繋がるって実感しました、今日は。

CanCam 素晴らしいまとめをありがとうございました! (一同笑)

 

終始和やかなムードに包まれた対談。この後、高橋メアリージュンさんは、重版も決定、イベントを行うなど著書もかなりの話題になっています。押切さんもこの対談の後無事に出産され、一児の母に。OGとしてますます輝くおふたりを、CanCam編集部はこれからもずっと応援しています!

『Difficult? Yes. Impossible? …NO.
わたしの「不幸」がひとつ欠けたとして』
著者/高橋メアリージュン 1400円+税(KKベストセラーズ)

 

中学時代に突如として訪れた父親の倒産。
闇金から借金の催促でおびえ、今でも返済を続ける日々。
前触れもなく起きた難病「潰瘍性大腸炎」そして、「子宮頸がん」。人から見たら「不幸」に見える人生に対し、彼女は「まったく不幸だと思わない」と言い切る。それはなぜなのか――?
30歳の節目に綴る、衝撃の告白と、幸福な未来を生きるためのメッセージ。【著者プロフィール】高橋メアリージュン
1987年11月8日生まれ。滋賀県出身。「横浜・湘南オーディション」でグランプリを獲得し、芸能界デビュー。2006年3月からファッション誌「CanCam」の専属モデルを務める。2012年、NHK連続テレビ小説「純と愛」で女優デビュー。以降、映画、ドラマ、舞台などで活躍の幅を広げる。主な出演作品に映画「闇金ウシジマくん」、「るろうに剣心」などがある。また、2013年に難病・潰瘍性大腸炎を患っていることを公表。本書で子宮頸がんに罹患していたことを告白。
撮影/田中麻以

前編はこちら→ 「CanCamっぽくないってずっと言われていました」【高橋メアリージュン×押切もえ対談・前編】