8月後半から怒涛のように「異例の台風」がやってきています。
2016年の台風はいろいろと「観測史上初」やら「近年例を見ない」が多いのです。
たとえば、「7号、9号、11号と、1年に3つの台風が北海道に上陸」も、「台風10号が東北地方の太平洋側に上陸」も、なんらかのニュースで耳にした人が多いことでしょう。これはいずれも、1951年の統計開始以来、初のことです。
さて、今年はなんでこんなに、ちょっと様子のおかしい台風が多いのでしょうか……。
日本気象協会 気象予報士の吉田直人さんが解説する、今年の「異例の台風」の理由をご紹介します。
■今年の台風発生は、記録的に遅かった。
まず、2016年の台風1号は、観測史上2番めに遅い7月3日になって発生しました。日本に接近・上陸しないだけで、例年上半期にも台風は発生しています。
この記録的な台風の少なさは、昨年の冬に日本にかなりの暖冬をもたらした「エルニーニョ現象」が関係している、と考えられています。
「エルニーニョ現象」とは、太平洋東部の赤道付近(南米沖)の海面水温が平年よりも高くなる現象。
それ自体は限られた地域の海面水温の変化ですが、地球の大気はひとつにつながっています。そのため、エルニーニョ現象に影響を受け、他の地域でも海面水温や空気の流れに変化が起きます。そして、日本付近で例年台風が発生するフィリピン付近の太平洋で台風ができにくい気象状況となったため、これほど台風が少なかったのです。
■迷走台風10号は、なんで起きたの?
さて、あらゆる「ちょっと変な台風」がありましたが、なかでも飛び抜けて様子がおかしかったのは、「台風10号」です。
ずっと日本の近くにいましたね。日本大好きですね。
8月19日に八丈島付近の海上で発生したあと、8月25日にかけてなぜか南西に進み、南大東島付近に達しました。通常、台風は日本付近では北よりに進路を取ることが多いため、南に進むのは異例です。
そして8月27日頃から、しだいになぜかUターンして北よりに進路を変え、本州に向かって進んでいきました。台風は一方向に進むことが多いため、「Uターン」もかなりの異例。
さらに、8月29日に本州に再び接近すると、そのまま北上してなぜか岩手県に上陸しました。前述したとおり、台風が東北地方の太平洋側に上陸するのは、1951年の統計開始以来初。つまり台風10号は、「異例×異例×統計開始以来初」という、トリプル異例台風だったわけです。
なぜこのような複雑な動きになったかというと、南に進んだのも、Uターンも、いずれも「日本付近の高気圧」による影響と考えられます。
はじめ、台風10号は日本の西にあった高気圧の影響を受けたことで、南西の方向に進みました。そして台風が沖縄付近に到達すると、西側の高気圧の張り出しが弱まり、徐々に台風が停滞し始めます。
しかしそのタイミングで、今度は日本の東の高気圧が徐々に張り出してきたことで、その影響を受けて台風10号は次第に進路を東よりから北よりに変え、いつもの北よりの進路を取り始めました。
このふたつの高気圧の盛衰により、台風10号は異例に異例を重ねた迷走ルートをたどったのです。
■気象予報士が語る、これからの台風予測
今年の秋は、「ラニーニャ現象」が発生する可能性があります。これはエルニーニョ現象とは逆で、太平洋東部の赤道付近(南米沖)の海面水温が、平年よりも低くなる現象。
この「ラニーニャ現象」が発生すると、「日本の近くで発生して、急に日本に近づく台風が多くなる」と言われてます。ヒエッ。
たとえば、今年の台風11号がわかりやすい例です。8月20日の9時に日本の東海上で発生したかと思えば、夜には東北地方に接近し、翌21日には三陸沖を北上して北海道に上陸しました。発生から上陸まで約1日半という、まさにスピード台風。
ラニーニャ現象が発生すると、このような台風が今後増える可能性があります。急に台風が接近しても大丈夫なように、万が一の事態に備えて、災害時の避難方法や連絡手段をいま一度きっちり確認し、非常持ち出し袋や備蓄品の準備を行うようにしましょう!
情報提供元:「tenki.jpラボ」
【あわせて読みたい】