瀬戸内寂聴さん原作の同名小説初の映画化となる『花芯』がついに公開。本作は、発表当時、著者に「子宮作家」のレッテルが貼られ、以後、長く文壇的沈黙を余儀なくされた恋愛文学。
主人公“園子”を演じるのは、2002年にダンス&ボーカルユニットで歌手デビューし、その後、朝ドラのヒロインなどで注目を集めた女優の村川絵梨さん。肉体の悦びに目覚め、世間の常識に背を向けながらも、子宮の命ずるまま生きることを選んだ女性を体当たりで演じています。
8月6日(土)、初日を迎え、村川絵梨さんをはじめ、林遣都さん、安藤政信さん、藤本泉さん、落合モトキさん、毬谷友子さん、安藤尋監督が登壇し、立ち見が出るほど満席の会場で舞台挨拶を行いました。
舞台挨拶では、「全編通して園子が着物なので、初日の挨拶も絶対に着物でと決めていた」という村川さん。
林さんや安藤さんと体を重ねるシーンも多く、園子という役を演じるにあたり、並々ならぬ覚悟と勇気が必要だったはず。『花芯』出演について聞かれると、村川さんは「近年でいちばん思い入れが強い作品。1年2~3か月前に撮影が終わって、約11日間の撮影の中で、濃厚な時間を過ごした」と話していました。
そして、「私に務まるのかなと不安だったけど、28歳になりますし『やるしかない、これをやらなかったら一生後悔する』と思った」と胸の内を告白。「作品の力と監督の想いが強かった。いまこうして初日を迎えて、たくさんの方に観ていただけることが本当に嬉しいです」と、清々しい笑顔。
撮影中、キャスト全員が村川さんの作品へかける思いを感じ取り、現場には言葉にできないような“緊張感”が漂っていたよう。
そんな村川さんの印象に、夫役の林さんは「撮影が始まる前から相当な覚悟を持っていた。撮影中も命を削って作品と役に向き合っていらっしゃる姿を見て、本当はスマートに支えられたらと思ったが、そんな余裕はなく、負けていられないなと、僕もさらけ出してぶつけていこうという思いになった」と、当時を思い出していました。
林さんの思いを受けて、村川さんも「勝手に戦友だと思ってます」とひと言。
司会から撮影が大変だったかと聞かれると、「会ってすぐ、稽古の段階で体を交じ合わせるので、嫌われてもいい覚悟でぶつかっていきました」と林さんが言うと、村川さんからは「嫌うどころか、本当に役に真摯に向き合って、思い切りぶつけてくれるので大好きです」という返事。少々複雑な夫婦役を演じきったふたりのそんなやり取りに、会場からは拍手が。
安藤さんが思い出に残っているのは、“大雨のシーン”。「川沿いにたたずむ絵梨がいたんですけど、それを叫んで後ろから抱きしめて強烈なキスをするというシーンが、僕はいちばん思い出深いです」と。
初日から濃厚なシーンを撮ったふたり。最初の挨拶で、村川さんとの共演で「役者を辞めてもいい」と言っていた安藤さんは、村川さんの印象に、「美人……それしかない。演技もよくて……でも僕はやっぱり野球帽のほうが好きですね。スコアつけてる絵梨のほうが好きです」と激白。冒頭から続く熱烈な想いに、隣りの村川さんも「何言ってるんですか?(笑)」と、思わず言ってしまうほど。
個人的に印象的だったのは、毬谷さんの言葉。
すごく濃密な現場の中、「忘れられない思い出は、夜ご飯休憩のとき。セットの家の畳の部屋に、絵梨ちゃんがポンとひとりで座ってたんです。その背中が、小さな蝶々が震えているみたいに儚く、耐えてるみたいな感じがして。現場が濃密で雑談をする感じではなかったんだけど、絵梨ちゃんに『大丈夫?』って聞いたんだよね? そしたら『はい、あとふたつ頑張るシーンがあるんです』って、女優さんってこういうことをしたりとか、大変だよね……と言ったら、“がんばります”というその表情が、絹糸がピーンと張りつめているみたいに集中していて、彼女がこの映画に掛けているのがすごく伝わって」と。
そして初日舞台挨拶で1年ぶりに会ったというふたり。「明るくて解放的な笑顔だから、本当にあのときは命がけで彼女は役を生きていたんだなって、おばさんとしては感無量です。だから本当に頑張ってね」と激励の言葉が。
また、原作者の瀬戸内寂聴さんから、サプライズの手紙も。
その手紙が読み終わると、村川さんは「嬉しくて込み上げてきました……本当にやってよかったなって心底思いました」と話し、目には涙が……。
最後に、「男性と女性で考え方も違うというのが感じられる映画。観た感想をどこかでお聞きできたら嬉しいと思います」という村川さんの言葉で、舞台挨拶を終了しました。
鮮烈な恋愛文学が約60年の時を経て映画化された『花芯』。園子が男を体を重ねるシーンで見せる“女の本音”に、女性は思わず共感してしまうはず。(さとうのりこ)
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