第152回直木賞を受賞した『サラバ!』の素晴らしさを伝えるべくスタートした、著者・西加奈子さんインタビュー。前回は『サラバ!』が生まれる、鳥肌ものの舞台裏をお聞きしましたが、そもそも西さんが作家を志したきっかけは?
★前回はコチラ→ 【祝!直木賞】西加奈子に聞く、5%の喜びが支えた「サラバ!」誕生秘話
Woman Insight編集部(以下、WI) 西さんは、昔から作家になりたいと思われていたんですか?
西 加奈子さん(以下、西) まったく思っていなかったです。ずっと映画が好きで、小学校の卒業文集には「映画のスタッフになりたい」って書いていたくらいです。22歳で大学を卒業して、いろんなバイトをしていたときに、たまたま雑誌の映画班がスタッフを募集していて。そこを受けたんですけど落ちて、別の部署に拾われました。そこで上司の人に「書いてみて」って言われてライターを始めてから、文章を書くのが楽しくなってきましたね。
WI そこから、作家として27歳でデビューされるんですね。
西 そうですね。ただ、ライターっていうお仕事は、お店のこととか、聞いたこととか、「あること」を書くじゃないですか。そういうのがだんだんストレスになってきて。「1から書きたい、おもしろい人を書きたい」と思って、自分で書き出したのがきっかけです。
WI じゃあ、作家になられたのは、そのアルバイトや上司の方、編集の方との出会いのおかげというか、縁みたいなものなんですね。
西 そうですね。本当に『サラバ!』じゃないですけど、どの瞬間が欠けても今の私はいなかった。だからいろんな人に感謝しています。
WI これはもう、さんざん聞かれてると思うのですが、西さんはイラン・テヘラン生まれ、エジプト育ちという経歴をお持ちですよね。海外育ちでいることと、作家であることの関連性はありますか?
西 自分って、自分以外の人生を歩んでいないから、「こういう経歴じゃなかった自分」とは、ほんとのところ比べられないじゃないですか。そういう意味で、客観的に自分を見るのすごく難しいですけど、無理やり後づけで考えると、エジプトでは住んでいる環境にしても、自分の髪の色にしても、「異分子である」ということをすごく意識してたとは思います。あと、転校生だったので。転校生って空気読むじゃないですか。それはもしかしたら、作家の客観性みたいなものにつながっているかもしれませんね。作家ってたぶん、クラスのヒーローだと書けないと思うんですよね。クラスのはじっこからクラスを見てる、みたいな感じじゃないと書けないと思うので。こういうインタビューとかで聞かれることは本当に多いから、無理矢理つなげるて考えると、そういうところかな。
WI 直木賞受賞インタビューのときに、「『サラバ!』は真実か虚構か」と聞かれて、「100%虚構です」とおっしゃっていたのが印象的だったんです。ご自身の経験がたくさん反映されていると思っていたので、100%というのが、意外でした。
西 自分が書く時点で自分の体から出てきたものなので、真実とか虚構とかは関係ないかなと思います。それに、私は、小説を書くっていう時点ですべてフィクションだと思っています。作家が私小説を書いていても、やっぱりフィクションなんです。エッセイでもドキュメンタリーでも、要素として本当のことが入っていることはあるけれど、物語を書いている限り、全部フィクションと思ってますね。
そんな西さんに、「ご自身のドキュメンタリー、伝記映画を撮られることになったとして、どの監督に撮られたいですか?」と質問してみました。「えー! いやです、絶対いやです!」と嫌がるところに強いて出していただいた名前は「山下敦弘さん」。「よく(一緒に)飲むので。やむにやまれぬなら、知っている人に撮ってもらいたいですね……。あと、山下さんはかっこよく撮らなさそうやからいいかも……。でも絶対いやです!」と西さん。私は正直、その作品が非常に観てみたいです!(五十嵐ミワ)
★前回はコチラ→ 【祝!直木賞】西加奈子に聞く、5%の喜びが支えた「サラバ!」誕生秘話
『サラバ!』西 加奈子/著(小学館/1,600円+税)
http://www.shogakukan.co.jp/pr/saraba/
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