Oggiエディター三尋木奈保、「ふつうの服でおしゃれな感じ」にする方法、その執念

12月20日に初の単行本『マイ ベーシック ノート「ふつうの服でおしゃれな感じ」のつくり方』を出版した、ファッション誌『Oggi』の敏腕エディター三尋木奈保さん。前回は単行本の裏話をうかがいましたが、今回はインタビューの中で発見した、三尋木さんの尋常ではないおしゃれのこだわりについてお伝えします。

前回の記事はコチラ→ お洒落敏腕エディター三尋木奈保、初の単行本出版!「3回気絶しそうだった」

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Woman Insight編集部(以下、WI) 1シーズンにどのくらい服を買われるんですか?

三尋木奈保さん(以下、三尋木) うーん……仕事が忙しいと買いに行く時間もなくて、あまり買わないですね。「そのシーズンのトレンドだよね」という服も本当に買っていないです。いつも、本当にベーシックなもの。例えば、冬のニットも、色は黒かグレーかネイビー。それをタートルネックかクルーネックかVネックか、ゲージが太いか細いかくらいの中で一生買い足してやっていくんだろうな、と思います(笑)。今年ならローゲージのものが多いので、うっすらローゲージかな、というものを買うくらい。なんとなく無意識に、シルエットやニットのゲージの感じや首のつまり具合に“そのときらしさ”は入っているかな、という感じですね。シーズンごとにごっそりワードローブを入れ替えるということはしないで、自分のテイストの中で買い足しています。

 

WI 本の中で、ワードローブの中には10年選手もいるなど、非常に物もちがいいと拝見したのですが……。

三尋木 そうですね。10年前のストールや、なんでもないタートルとか、たくさんあります。流行に関係なくて自分に似合う、トラッドっぽいものだからずっと着られるのかな、と思っています。

 

WI 「自分に似合う」とは、どんな要件を満たしたものだと思いますか?

三尋木 ものにもよりますが、実際よりスタイルが良く、やせて見えるもの。絶対に鏡で全体のバランスを見て、シルエットバランスがきれいかに見えるもの。一概に、こうだったらきれい、というよりも、毎日まとまっているか自分で鏡の前で確かめているうちに、見極められるようになってくるものです。その上で、手持ちのアイテムと何パターンか頭の中で合わせてみて、合うかどうかですね。

 

WI どうしたら三尋木さんのような「見極められる」領域に行けますか?

三尋木 いえ、そんな素敵なことではなく……私は面倒くさがりで、ものぐさなんです(笑)。冒険してみて「変なこと」になるのが嫌というか、面倒で……(笑)。だったら自分の好きなテイストを極めたほうが、精神衛生上、いいなと思ってるんです。なので柄物はほとんど着ないし、ピンクや黄色など明るい色も着ない。でも、その分ひとつひとつを突き詰めて考えて、ちょっとでも自分の中のルールと違っていると、絶対に買わない。そして、こだわるところは、自分の自己満足かもしれませんが、こだわり抜きますね。

 

WI 例えばその「こだわり」には、どんなものがありますか?

三尋木 例えば、不気味なほどにいろいろなニュアンスカラーのタンクトップを揃えています(笑)。体型に合うのは『ホリスター』のもの。日本では売っていないので、ハワイに行ったら白とライトグレーを2枚ずつ買ってきたり。1枚2000円くらいのものです。高いからいいというわけではなく、それよりも色と形にこだわっています。タンクトップは『Theory』や『GALERIE VIE』でセールのときに買い足して、もう10年くらい集めています。10年くらい前はそもそもタンクトップは完全にインナーで、出して着る着こなしもなかった頃。それが、7~8年前から、こなれ系シャツというジャンルができて、セーターの下に着てみたり、ちょっとタンクトップをのぞかせたりという着こなしが出てきた。

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WI ほんのちょっとしか見えないタンクトップにそこまでのこだわりが!

三尋木 はい(笑)。例えば今日はニットの下で透けないためにベージュのタンクトップを着ているんですが、同じニットでもグレージュ小物を使うコーディネートのときは、小物とリンクさせた濃いグレージュのタンクトップを合わせてのぞかせたり。紺のセーターとデニムというなんでもないアイテムでも、間につなぎの薄いグレーのタンクトップをちょっと足すだけで奥行が出たり、シンプルだけどちょっと気を使っている感じが出ます。

 

WI その他、なにかこだわっているポイントはありますか?

三尋木 例えば……同じデニムをはくときでも、ローヒールを履くときは2~3回ロールアップするけれど、ヒールのときはすその縫いしろ部分だけを1cmくらい小さく折り返してみるとか。カーディガンなら、私の場合みぞおち部分のひとつだけボタンをとめるのが一番きれいなバランスだなと試したり。そういう、すごく細かい……人から見たら、どうでもいいようなところにこだわることで、ベーシックな服がおしゃれに見えるんじゃないかと思っています。

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WI 普通の人がまったく目を向けていないところへの尋常ではないこだわり! どうしたらその「おしゃれな感じ」に近づけますか?

三尋木 うーん、たとえば先ほどのカーディガンやデニムの話も、人それぞれ体型や雰囲気が違うので、「絶対的な正解」って言えない、と私は思っていて……。それよりも、全身を鏡に映して、バランスやトータルの色づかいをじっくりじっくり見て、自分なりの工夫の仕方を見つけてもらえたら……って、えらそうで恐縮ですが……(笑)。トレンドものを着たってことで安心しないで、細かいところに目を向けると、いろいろ工夫しどころが出てくるはずだと思っていて、私自身もそういうところで精進していきたいな、と思っています。本当に人の体型によって違って、ベストは人それぞれでまったく違うんです。自分の体型をよく知って、いろいろ試してみること。そのときに、この本が人のお役に立てる本になっていたらいいな、と思っています。

 

三尋木さんの解説を受けながら『マイ ベーシック ノート』を読むと、本当に計算しつくされたそのスタイルに、ただただ脱帽するばかりです。とにかく三尋木さんが提案するのは、見かけだけ素敵なスタイルを真似するというわけではなく「自分の体型に似合うものをしっかり見極めて、細かいところにこだわって調整する」という本質。この基本をじっくり取り入れていけば、三尋木さんのようなおしゃれさもきっと遠くはありません。是非お手に取ってご覧になり、日々のおしゃれのお役に立ててみてくださいね。(後藤香織)

マイ ベーシック ノート 表紙『マイ ベーシック ノート 「ふつうの服でおしゃれな感じ」のつくり方』
三尋木奈保/著(小学館/1,400円+税)

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