「ほぼ英語の勉強をしないまま留学に行った」鞘師里保の人生を変えたのは、大好きな人たちの言葉だった

CanCam3月号の「THE TURNING POINT」企画に登場してくれた鞘師里保さん。
2011年1月にモーニング娘。の9期メンバーとしてデビューして以来グループの中心的存在として活躍していましたが、人気絶頂の2015年10月に電撃卒業発表、12月末で卒業。そして海外留学の道を選ぶという、弱冠22歳にしてまさに「ターニングポイント」が多い人生を送っています。

CanCam.jpでは「鞘師さんのON&OFF」をテーマに、ふたつの記事をお届け。
前回は朝晩欠かせないことや「かわいい♡」「美味しい!」と思ったことなど「OFF」な鞘師さんのQ&Aでしたが、今回は誌面では載せきれなかったエピソードを加えて、ダンスや海外留学の話など「ON」寄りの話をたっぷりとご紹介します!

Q.改めて、ダンスで海外留学をしようと思ったきっかけは何ですか?

大きなきっかけのひとつは、2014年に行ったモーニング娘。のニューヨーク公演です。海外のファンの方とコミュニケーションを取りたいのに、うまくできなかったのがすごく心残りで、もっと世界のたくさんの人と理解しあえるように英語を勉強したいという思いがずっとあって。私の中で「人と話すこと」はすごく重要なことなので、世界の人と話すきっかけがあったときに話せる可能性を増やすために、自分が話せる言語を増やしたい、という感覚がありました。
それに、子どもの頃から好奇心旺盛な性格で、何かにチャレンジするのが好き。そもそもダンスを始めたのも、6歳の頃にモーニング娘。のパフォーマンスを見て、直感的に「私もやりたい!」と思ったことがきっかけです。「お母さん、ダンススクール入れてー!」と言っていた記憶があります(笑)。
多くのことにトライしていると、なかなか続かなかったこともたくさんありますが、ダンスは6歳から今の今までずっと続いています。しかも「頑張って続けている」という感覚はなく「好きで、自然とやっている」状態です。ダンス留学も「ダンスが好きだからもっとやってみたい、もっと勉強したい」という自然な気持ちで選んだ道でした。

Q.グループを卒業して留学するという道を選ぶことに対し、悩みや迷いはありましたか?

半年くらいはどうするべきか悩みました。ただ、ひとりの人間としてもっと成長したいと思ったときに「このまま活動していると、もしかしたら自分で自分に納得できない大人になってしまうかもしれない」と考えるようになり……。そんな迷いを抱えた姿で人前に出続けることが苦しかったし、メンバーにも失礼だなと。
辞めるかどうかの話し合いをしたときに「いてほしい」と言ってくれる子もいましたが、ベストな時期が2015年のあのタイミングでした。

Q.卒業前から英語の勉強は始めていたのでしょうか?

いえ、在籍中は私が仕事を優先しすぎていたこともあり、実はまったくと言っていいほど勉強していませんでした(笑)。一般的な中学生レベルも怪しいくらいで「I am …次の文法は何?」くらいの、ゼロからのスタートです。留学前に勉強をしたほうがいいのかと思って、英語で映画を観てみた時期もありましたが「無理だ、もういいや!」と腹をくくって、ほぼ英語の勉強をしないまま、えいやと留学に行っちゃいました(笑)。
現地で「英語で、英語の授業を聞く」というスタイルで語学を勉強しましたが、むしろ基礎がまったくなく変なクセがなかったのが良かったのか、すぐ吸収できました。もともと勉強は好きだったので、実はそこまで大変でもなかったですね。
極端に言えば、たぶん死にはしないだろうし、もしダメなら日本に帰ってくればいい。行動に移すまでは勇気が必要でしたが、決めてしまえば飛行機のチケットを取って乗るだけなので、そこまで難しいことではなかったです。
最初からダンスと語学を両立して学ぼうと考えていた時期もありましたが、周囲のすすめもあってまずはみっちり英語を学びました。もし留学中に何か問題が起きたときに語学ができれば対処もできますし、結果的に良かったです。

Q.留学生活はどうでしたか?

家族や友達とも離れ、初めて完全に独立したので、やっぱりとても寂しくなった時期もありました。でも「どこのダンススクールにしようかな、どの先生にしようかな」といろいろ見ているうちに、自分のやりたいことや集中したいものを見つけたので、打ち込めて楽しかったです。それに、今でも連絡が取れるような友達もできました!

Q.ダンス留学に行って、どんなことを学べたなと思いますか?

いちばんは「正解はないこと」。ダンスは数学のように答えがひとつしかないものではなく「すごい」「上手い」と言われるものがたくさんあります。アメリカであらゆるダンスを生でたくさん見て、自分がそれまではよくわからなかったものの良さがわかるようになりました。

中でもいちばん「すごい」と記憶に残っているのは、ほとんど軟体動物のようなダンスをしている先生です。強いて言えばストリート系のダンスですが、ジャンルにまったくとらわれないダンスで。友達に「この先生のところに行ってみたほうがいいよ」とすすめられたのがきっかけで、「んー、でも私に合うかなー、どうかなー」と迷いつつ行ってみたら衝撃を受けまして。おそらく映像だったらその良さがわからなかったかもしれないダンスで「芸術には、生で見るからこそのすごさがある」と心から実感しました。その他にも、もしかしたらずっと日本にいたら良さがわからずに感動できていなかったかもしれない……そう思えるダンスにたくさん出会えましたね。

Q.留学前後で変わった自分の価値観や行動はありますか?

「行動することで視野が広がる」ということを実感として学んだので、これまであまり興味がなかったものも積極的に知りにいくための行動力が増しました。
あとは、人に対してイラっとすることが減りました。もともとちょっとムカッとするようなことを言われたときに反論するようなタイプではないですが、それでもどこか声がムッとした、怒ったようなニュアンスにはなっていたと思うんです(笑)。でも、留学後はイラっとしなくなりましたし、人からネガティブな影響を受けることもかなり減りました。だいたい「へえ〜、そんな人もいるんだな」で終わって、全然イライラしません。

Q.ソロとして本格的に芸能活動を再始動してから、グループ時代と変化したことはありますか?

グループの一員として活動していると、グループのカラーを印象づけるためにも、いい意味で「表現の幅がある範囲内に集中すること」があると思います。でも、ひとりになったことで、自分で責任が取れるようになったので、遊びが効くようになりましたね。

Q.新しいことにチャレンジするパワーの源は何ですか?

私は誰かに助言をいただいて行動できることが多いので、やっぱり誰かの「言葉」です。人に何かを聞くのには勇気が必要ですが、自分が信頼している人や尊敬している人に相談するのはすごく大事なこと。

私の場合、モーニング娘。時代の恩師でもあるつんく♂さんと高橋愛さんに「こうしようと思う」と相談すると「ええやん、面白そうやな」「かっこいいじゃん」って背中を押してくださったのが大きなパワーになりました。おふたりからは、ときにはこうしたほうがいいんじゃないかとアドバイスをいただくときもありますが、私がネガティブになるようなことを一切おっしゃらないんです。もし私が本当に道を外れそうなくらい突拍子もないことをしそうになったら、きっとそのときは正しい道に戻してくださると思いますが、基本は私の思いを尊重して、背中を押してくれます。
明石家さんまさんの「後悔が楽しいねん」も印象的な学びがあった言葉です。自分の決定自体がいいか悪いかではなく、決めてから自分がどう行動するかで、その決断がよかったか悪かったか、どうにでも変わる。もし後悔しても、後悔さえも楽しめば人生のエピソードになる。なんでも行動次第だということは、さんまさんから学びました。
そして、モーニング娘。の同期、鈴木香音ちゃんが、私が卒業するときに「これからは友達だから。なんでも相談して」と言ってくれたことも、心強く忘れられません。それまではメンバーとしての仕事仲間のような意識もありましたが、卒業から5年経った今、香音ちゃんとは毎日のように連絡しています。

勇気を出すのも、寂しさを乗り越えられるのも、すべて誰かの力です。もともと友達をそんなにたくさん作るほうではないし、孤立することもゼロではないですが「ひとりでも大丈夫」なんてことは絶対ありません。留学を通して「人の大事さ」にも気づけましたね。人と接するときには、相手の立場で態度を変えることなく、どんな方であっても、自分の素直な気持ちで接するようにしています。

インタビュー中、話を聞いている中で「留学に行って、すごく強くなって帰ってきたんですね」とスタッフが声をかけると、鞘師さんは「多少は(笑)」と笑っていましたが、チャレンジして前進する力も、ものごとを広く受け止める力も、おそらくあらゆるパワーが増したことを、話の端々から実感しました。

さまざまな人と出会う中で、人との縁や受け取る言葉を大切にしながら日々を生きる鞘師さんは、やはり多くの人に大切にされ、愛されています。2020年9月に本格的に芸能活動を再開して以来、演劇やドラマの主演・バラエティ番組への出演など各方面から引っ張りだこ。5月にはソロライブも予定されています。そして「留学以来行動力が増した」というその言葉通り、作詞へのチャレンジなど、新しいジャンルにもどんどん挑戦していき、ますます活躍の幅を広げるばかりです。

そんな鞘師里保さんのインタビュー&大人の魅力が詰まった写真は、現在発売中のCanCam3月号にも掲載中。ぜひそちらもお見逃しなくチェックしてくださいね。

 

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鞘師里保 PROFILE
1998年5月28日生まれ、広島県出身。元モーニング娘。のメンバーで、卒業後海外に留学。2020年に芸能活動を再開し、現在は女優・作詞・アーティストなど、幅広く活躍中。
公式サイト:https://rihosayashi.jp/
Instagram:@riho_sayashi_insta
撮影/中村和孝(まきうらオフィス) スタイリスト/たなべさおり ヘア&メイク/秋山瞳(PEACE MONKEY) 本誌構成/衛藤理絵 web構成/後藤香織