TENGA広報女子のセクハラ回避術。心がけている5つのコツ
働く女性を悩ませる問題はさまざまですが、中でも多いのがセクハラです。
セクハラは本来、絶対にあってはならないもの。とは言え、現実的に見ればまだまだゼロではありません。
職場や飲み会で不快な思いをしたり、誰にも言えずに悩んだりした経験のある女性は、たくさんいることでしょう。
そこで今回は、「性」にまつわるさまざまなアイテムを扱う株式会社TENGAで働く、ふたりの女性にインタビュー。働く中で培ったリアルなセクハラ対処術を教えていただきました。
(おふたりの生の言葉をお届けするためセクシュアルな単語もあえてそのまま記述していますが、セクハラ対処にとても役立つ内容です。性的な話題が苦手な方もぜひ無理のない範囲で読んでみてくださいね。)
▼TENGA広報の体験談「人間として見られていない、と感じることも」
今回お話を伺ったのは、株式会社TENGAの広報を務める西野芙美さん、工藤まおりさん(※取材当時)のおふたりです。
仕事柄、お客さまや取引先と「性」にまつわる内容の話をすることが多いおふたりは、残念ながらセクハラを受ける回数も多いそう。
はたしてどんなふうに対処しているのでしょうか?
●対面、SNS…どんな場面でセクハラを受けやすい?
CanCam.jp編集部(以下、編集部):仕事中、どんな場面でセクハラを受けることが多いですか?
西野芙美さん(以下、西野さん):我々は広報ですが、メディアの取材を受けるだけでなく、展示会に立って一般のお客さまに商品説明をすることもあるんです。そのときに男性のお客さまから個人的な質問をされることが多いですね。たとえば「きみもこれ(アダルトグッズ)使ってるの?」とか。
工藤まおりさん(以下、工藤さん):仕事関係の食事会で、「週何回オナニーしてるの?」なんて直截的な質問をされることもあります。ふつうは初対面の人にそんなこと訊かないですよね。
西野さん:こういう会社で働いているから言いやすい、と思うのかも。
工藤さん:そういう場面で感じるのは、人間扱いされていないというか、「俺を楽しませるためのおもちゃ、コンテンツ」という感覚で見られているなということです。人間としてこの子を尊重しよう、この子との会話を楽しもう、という思考がなくなっているんじゃないでしょうか。何を訊いても何をしてもいい、そんな相手として見られているなと感じます。
編集部:失礼な話ですね。
西野さん・工藤さん:普通に腹が立ちますね。
西野さん:対面だけでなく、SNSでもそういうことはあります。
工藤さん:私たちふたりとも、仕事とプライベートを兼用したTwitterアカウントを持っているんですが、男性器の画像や「俺とやらない?」なんてDMが送られてくることも多いです。以前、私の画像を勝手に保存して「エロい女がいます」みたいな文章をつけてツイートされたこともありました。それは法的にもいけないことなので、きちんとTwitter社に申告して削除してもらいました。
●仕事できちんと関わると、反応が変わる
編集部:とくに言われやすい言葉はありますか?
西野さん:よく訊かれるのは、セックスとオナニーの回数です。どうしてそんなに気になるの?って思うくらい、よく質問されます。知って何になるのか全然分からないですよね。
工藤さん:あとは、展示会で「TENGAってあなたを象っているの?」とか、「お姉さんと使いたいな」とかいうのもよく言われますね。そういうときはあくまでもビジネスライクに「商品を買ってくださいねー」と返しますが。
編集部:SNSと対面とで、傾向に違いはありますか?
工藤さん:セクハラの頻度で言えば、SNSのほうが多いです。でも、対面で直截的な言葉をかけられることもやっぱりあります。ただし、取引先で何度もお付き合いしている相手になると、こちらがまじめに仕事をしているだけなんだ、ということを理解してくださることが多いですね。ちゃんと関わると分かってくれるというか、反応が変わることもあります。
西野さん:仕事である程度関わっていくと、相手が「あれ、思っていたノリと違う」というか、「すごくまじめにやっているんだね」という反応を見せるときがありますよね。
工藤さん:仕事と関わりのない男性と接する場面(一般客と接する展示会やSNS)のほうが、セクハラ的な視線を向けられることが多いかもしれません。
たくさんの苦労をされている、おふたり。不快な記憶も「悩める女性のためならば」と赤裸々に聞かせてくださいました。
ここからはいよいよ、おふたりが実際にセクハラ対策として心がけていることを詳しく伺っていきましょう。
▼TENGA広報女性が教える「セクハラ対処5つのコツ」
TENGA社で働くおふたりは、「性的欲求そのものは悪いことでもなんでもない。あくまでも人間の持つ当たり前の欲求である」という信念をお持ちです。ですが、その枠を超えた過度な性的質問を受ければ、当然ながら人として不快に感じます。
そんなときには、
1. 恥ずかしがらない
2. 医学用語を使う
3. 「私個人」の話にしない
4. 質問返しする
5. 相手が拍子抜けしそうな対応をする
という5つのポイントを意識しながら対応しているとのこと。
それぞれ具体的に伺ってみましょう。
●1.恥ずかしがらない
西野さん:セクハラをする人は、女性に恥じらうそぶりを求めている場合が多いので、恥ずかしがったり困ったそぶりを見せたりすると、余計に喜ばせてしまいます。だからセクシュアルな話題には、真顔もしくは営業スマイルで、淡々と返事するのがおすすめです。
工藤さん:たとえば「このグッズは身体のどこに使うの?」と訊かれたときに「え〜、アソコです〜」ともじもじしてしまうのは良くないですね。遠回しに言うと、逆に「アソコってどこ?」なんて面白がって深掘りされるリスクもあります。そういうとき、私は普通に「あ、クリトリスです」って淡々と言っちゃいます。そうすると向こうはスッと冷めるんですよ。
●2.医学用語を使う
工藤さん:私がはっきり「クリトリス」と口に出すのは、それが単なる「部位の名前」だからです。手とか足とか眼球と同じくただのクリトリスなので、医学用語として普通に使うようにしています。ただ、一般的な会話の中で女性が「クリトリス」と口にするのはハードルが高いかもしれませんね。
西野さん:医学用語なら、「女性器」「男性器」という表現を使ったり、オナニーと言わず「マスターベーション」と言い換えたりするのも良いですよ。電話でお問い合わせを受けているとたまにセクハラ目的で「使い方教えてよ〜」とかけてくる男性もいますが、「膣内、女性器、男性器」と医学用語を使って淡々と説明していると、「あれ、思ったのと違う」という感じでさっさと電話を切ってくれます。
●3.「私個人」の話にしない
西野さん:シモネタを振られたら、自分の話にしないよう、上手に話題をそらすのもおすすめです。
私がまだ入社して間もない頃、展示会で男性に商品説明をしていたところ、「これお姉さんと使いたいな」ってニヤニヤしながら言われたことがあるんです。でも「もっと親しい誰かとどうぞー」と営業スマイルで返したら、それ以上何も言ってこなかったんですよ。
編集部:「私」の話にしないことがポイントですね。
西野さん:そうです、そうです。やり方もいろいろあります。
ひとつめの方法は、今言ったように「私」ではなく「相手」の話題にしてしまうこと。シモネタや不快な話題を振られたら、「そういう話は、あなたの周囲の親しい人とどうぞ」と、相手の話題にしてしまうことです。
ふたつめは、話題を一般論に広げること。「あなたもこれ使ってるの?」とセクハラ目的で訊かれたら、「私はともかく、一般的にはこれだけの数のユーザーが使ってくださっています」とか、「気になるならもっと良い商品もありますよ」というふうに、一般論に持っていきます。
3つめは、知的議論にしてしまうこと。たとえば「女性がオナニーするのって珍しいよね」と言われたら、私は「そもそもどうして珍しいんでしょうね?」という話題に持っていきます。性に対して女性は受け身なのが普通という概念は、どんな文化的背景から来ていて、いつからどうやって出来上がったんですかね?みたいな、アカデミックな話題にしてしまうんです。そうすれば、もうシモネタを言う雰囲気じゃなくなります。
要は、一対一の関係性に持ち込ませないことがポイントです。
これらの受け答えをそのまま使うというよりも、自分の立場に置き換えて応用するとよいでしょう。
自分が言われやすい言葉を想定して、「相手に返す」「一般論にする」「知的議論にする」という3つの返し方を考えてパターン化しておくと、気持ちが楽になりそうですね。
●4.質問返しする
西野さん:あとは、とりあえず何も考えずに質問返ししてしまうのも良い手です。何か訊かれたら「●●さんこそ、どうなんですか?」と相手にそのまま訊き返しちゃう。セクハラをしてくる男性って、じつは女性が訊き返してくることをあまり想定していないことが多いんですよ。
工藤さん:私は「どんなふうにオナニーしてるの?」と訊かれたら、「●●さんはどうしてるんですか? おかずは何ですか? 具体的には?」って畳み掛けるように質問返ししちゃいます。
編集部:かえって男性を喜ばせてしまいませんか?
工藤さん:いえ、たいていの男性は嫌がります。喜ぶ人も中にはいるかもしれませんが、嫌がる男性の方が圧倒的に多いんです。女性の反応を見て楽しもうと思ったのに、自分の話をいきなり訊かれた、なんで俺が話さなきゃいけないの?という気分になるようですね。
「おもちゃ扱いしようとした女から、逆におもちゃ扱いされた」とムッとする人もいますが、それでセクハラが止まるならそれも良いかと思います。無意識のセクハラなら尚更、その時点で「こんなに嫌な気分になるんだな」と気づいてやめてくれることもありますよ。
●5.相手が拍子抜けしそうな対応をする
西野さん:基本的に、セクハラしてきた相手が「期待したのと違うな」と拍子抜けするような対応をするのが良いと思います。恥じらうのを見たい相手には、恥ずかしがらず淡々と対応する。女性らしさを求められていると思ったら、あえて「あざーっす」みたいな、あなたの想像よりもガサツですよ感を出してみる。
セクハラする側は、しやすい相手を無意識に選んでいます。笑顔で気配りしてくれて、何をしても受け入れてくれそうな相手を選んでいるんです。だから「反応がちょっと期待と違うぞ」「この相手は面倒くさいかも」という一面を見せることで、回避しやすくなると思います。
▼セクハラ予防に効くのはやっぱり「薬指に指輪」
さらに簡単にセクハラを予防する手段として、「右手の薬指に指輪をつけるのもおすすめ」とのこと。
西野さん:私が結婚してから楽になったなと感じているのは、結婚指輪を見て反応をあらためる男性がたくさんいることです。独身のときより明らかにセクハラが減りました。とくにお誘いをかけてくる男性には、指輪の効果は大きいです。
工藤さん:セクハラする男性も一応リスクマネジメントは考えているというか、要するに「パートナーがいる女性は誘ってもOKしない確率が高い」という認識が、男性の中にもあるんですよね。なんでも受け入れてくれる女性を求めている人にとっては、やはりブレーキがかかるようです。だから私も、打合せや飲み会の席で本当にセクハラを回避したいときは、指輪をつけていきます。
編集部:右手、左手、どちらですか?
工藤さん:右手の薬指です。結婚指輪は左手ですが、彼氏がいる女性は右手薬指に指輪をつけることが多いので、右手でも効果がありますよ。
西野さん:やっぱり薬指って特別感が出ますよね。
工藤さん:おすすめなのは、シンプルな指輪か、もしくはちょっと高級な指輪です。どちらかをつけていると彼氏持ちだと思ってもらえて、お誘いもセクハラも牽制できます。とくに高めの指輪をつけていると「誰かに大事にされている女性なんだ」と感じてくれるようで、適当な扱いはされにくくなります。
編集部:大事にされている感を出すことで、相手の反応が変わるんですか?
工藤さん:すごく変わります。「思い通りにできそうな女」というイメージから、「ひとりのパートナーに大事にされている女性」という印象に変わると、セクハラもお誘いも来なくなる。ちょっとした小道具ですが、こういう演出をするのも不快なことを回避するための一手かなと思います。
セクハラ対策には、恥ずかしがらずに淡々と返すのが有効。とは言え、分かってはいてもできないときもありますよね。
そんなときには医学用語を使ったり、話題を広げて一般論やアカデミックな議論にしてしまったり、いざというときには指輪という小道具にそっと守ってもらったり。そんな方法を試してみると良さそうです。
次回は「おじさま世代からのセクハラ対処法」について、引き続きおふたりにお話を伺います。
次回はコチラ→ おじさま世代からのセクハラ撃退!TENGA広報女子の対処法3つ【セクハラ対策2】
■取材協力 株式会社TENGA
※内容はすべて2019年3月7日(木)当時の情報です。
(取材・文/豊島オリカ)