TENGA広報女子が実践している、セクハラに気力を奪われない「自分最優先の考え方」のコツ【セクハラ対策5】

多くの女性を悩ませ、社会問題にもなっている「セクハラ」。
セクハラは本来絶対あってはならないものですが、現実的にはまだまだゼロとは言えません。
職場や飲みの席で不快な思いをしたことがある人、誰にも言えずにひとりで抱え込んでしまっている人など、セクハラに悩む人は読者の中にも多いのではないでしょうか。
そこでCanCam.jpでは、性にまつわるさまざまなアイテムを扱う株式会社TENGA(以下、TENGA社)で働く、ふたりの女性にインタビュー。
経験により培われたリアルで効果的なセクハラ対処法を、全5回にわたり教えていただきました。

最終回の今回も、お話を聞かせてくださるのはTENGA社の広報を務める西野芙美さん、工藤まおりさん(※取材当時)のおふたりです。
(※工藤さんは現在退職されています。)

西野様工藤様
【左】工藤まおりさん、【右】西野芙美さん。

 

今回は教えていただいたセクハラ対処法の基本を振り返りつつ、対処する際の気持ちそのものの負担を減らす「考え方」のコツについて伺っていきます。

 

▼経験から培った本当に効果的なセクハラ対策・まとめ


TENGA社の広報という仕事柄、展示会やSNSなどさまざまな場でセクハラ被害に遭われてきたおふたり。名刺を出しただけで不快な発言をされることもあると語ります。
そんなおふたりが経験の中で培った、効果的なセクハラ対策を振り返ってみましょう。

◆セクハラ対処の基本は5つ

おふたりによれば、セクハラ対処の基本は次の5つです。

1.恥ずかしがらない

セクハラをする人の多くは、女性の恥じらう姿を見たがっています。恥ずかしがったり困ったりする仕草を見せると余計に喜ばせてしまい、セクハラがエスカレートしかねません。
真顔(もしくは営業スマイル)で淡々と受け答えするのが一番です。

2.医学用語を使う

おふたりは商品説明の際、「アソコ」など曖昧な言葉ではなく「男性器、女性器」「膣内」「マスターベーション」といった医学用語を使います。
女性を恥ずかしがらせたいと思っている相手も、このような対応をすると「なんだか思っていたのと違う」とスッと冷めやすくなるとのことです。

3.「私個人」の話にしない

シモネタを振られたら、「私の話」でなくなるよう話題をコントロールするのも効果的です。
たとえば「彼氏と最近どう?」と訊かれたら、「そもそも一般的なカップルの平均はどうなんでしょうね?」と話題の対象を広げたり、「世界的には?」「歴史的には?」とアカデミックな話題にしたり。一対一のシモネタではない話題に変えてしまうことで、自然と場の雰囲気も変わります。

4.質問返しする

「彼氏と最近どう?」といった質問には、何も答えず「そちらはどうですか?」と質問返しするのがおすすめです。これも「私個人」の話にしない手法のひとつで、この場合は「相手の話」にしてしまうことができます。
セクハラしてくる男性の多くは自分に質問が返ってくると予期していません。ぎょっとしたり不快な気持ちを味わったりすることで、「こういうことを訊かれるのは嫌なものだな」と男性側が気づくかもしれないメリットもあります。

5.相手が拍子抜けしそうな対応をする

セクハラする側の期待と全く違う反応を返して、拍子抜けさせるのもおすすめです。
恥ずかしがる姿を見たがっている相手には、淡々と対応する。
女性らしさを求められているなら、あえて男っぽい内面を見せるなど。
「期待と違う」「ちょっと面倒くさそうだぞ」と思わせることで、それ以上のセクハラを食い止めることに繋がります。

◆無意識か、わざとか?パターンによって対処を変える

また、セクハラする側が無意識でやっているのか、それともわざと嫌がらせたくてやっているのかによって対処を使い分けるのも一つのコツです。

1.無意識でセクハラしている人

褒めるつもりで不快な発言をするなど、自分のセクハラに気づいていない無意識の人には、「そういうことを言われるのは不快です」「嫌です」という意思表示をするのが効果的。本人が気づけばセクハラが止まる可能性が高いです。

2.わざとやっている人

女性の嫌がる姿が見たくてわざとセクハラしている人は、「嫌です」と口にすることで余計にエスカレートする可能性があります。
上で紹介した「質問返し」や「アカデミックな話題にすり替える」といった手段で煙に巻くのが効果的です。

他にもさまざまなセクハラ対処術を教えていただきました。詳しく知りたい方はぜひ第1回から続けて読んでみてくださいね。

▼自分最優先でいい!対処法を使い分けるという考え方


さて、セクハラ対策にはさまざまな方法がありますが、中には「実践が難しい」と感じるものもあるでしょう。
対策を頭でわかっていても、「真顔で淡々と受け答えるのが難しい」「嫌ですと言い出せない」と悩む人もいると思います。
セクハラ対策を教えてくださったおふたりにも、思うように対応できないことがあると言います。

西野芙美さん(以下、西野さん):展示会で商品説明をするときは、相手が一般のお客様なのであまりきつい対応はできません。そういうときは営業スマイルでセクハラをスルーしますが、貼り付けたようなアルカイックスマイル(※ギリシャ彫刻のような表情の少ない口元だけの笑顔)になっていると思います。

工藤まおりさん(以下、工藤さん):私は大きな会場での交流会でTENGAの名刺を出しただけで「エロそうだね」と言われてすごくイラッとしたことがあります。
そのときはもう二度と会わない相手だったのでスルーしましたが、もし今後も関係が続く人であれば、何らかの形で不快に感じたことを伝えたほうがよいと思います。

◆「その言動はセクハラです」とやんわり伝える裏技

工藤さん:たとえばその後の会話の中で、その人がしたことと似たようなシチュエーションの話を持ち出して「以前他の人と名刺交換したときにこういうことがあって、すごく嫌な思いをしたんですよね」って言ってみます。
そうすると「ああ俺も同じようなこと言っちゃったことがある、嫌だったのかもしれないな」って気づいてくれる可能性があります。

CanCam.jp編集部(以下、編集部):ワンクッション置くことで、伝えやすくするわけですね。

◆我慢するのではなく、自分のために選ぶのがポイント

工藤さん:それでも相手が気づかなくて、今後も関係を続けていきたい大事な人だというときは、やっぱり「あのとき、じつはすごく傷ついたんです」ときちんと言いますけども……セクハラをしてくる人全員にはっきり言うわけではありません。
それは、セクハラされても我慢すべきだからではなくて、自分の労力を無駄にしないためなんです。
相手との関係性で対応を使い分けることは、すごく大事だと思っています。あくまでも私の場合は、ですが。
挨拶だけで二度と会わない相手なら、さらっと受け流すのが一番いいかもしれないし、今後も末永くお付き合いしていくなら、「この子はこういう発言で嫌な気持ちになるんだな」ということをきちんとわかってもらったほうがいい。こういう使い分けをするのも、結局自分のためなんです。

西野さん:NOを表明するのにも労力が要りますからね。

工藤さん:「こんなことして、あなたどう思います?」ってディスカッションをするのって疲れるし、気分も下がりますよね。その労力を割いてでもやり合うか、スルーするか、と考えたとき、自分の楽なほうを選んでもいいと思うんです。
西野さん:今後も絶対関わっていきたい人や大切な人ならば、その労力をきちんと割いてもいい。でも1回名刺交換するだけの人に労力を割くのって、考え方によってはもったいないんですよね。
他人の意識を変えるのって相当大変なことだから、「この人の意識を変えるのは私のやることじゃないな」って割り切ることも、気持ちを楽にするひとつのポイントかもしれません。

 

◆ひとりで悩まず、周囲に相談するのも大切

工藤さん:あんまりひどいときには、もう二度と会わないと決めて、そのための根回しをするのもいいと思います。私の場合はそうしています。今後その人がいる場には一切行かないと決めて、周りにも宣言しちゃうんですよ。根回ししちゃう。
周囲の人や飲み会の主催者、行きつけのバーならマスターなどに伝えるとよいと思います。

西野さん:ひとりで抱え込まないことも大事ですよね。女性って、セクハラされるとどうしても「私が悪いんだ」って思ってしまいがちなところがありますから。
「私が我慢していればいいんだ」と思ってしまう人もいるかもしれませんが、絶対にそんなことありません。セクハラされる側が悪いなんてことはないんです。
ひとりで抱え込まないで、きちんと理解してくれる人に伝えて、周囲にもガードしてもらいましょう。

▼おふたり「効果的なセクハラ対策で、自分を幸せにしてほしい」


インタビューの最後、おふたりは口を揃えてこう語りました。

「嫌な気持ちを溜め込まないために、伝えるべき人には伝え、どうでもいい人なら割り切ってスルーする。でもこれは私たちのやり方であって、万人に有効な対策ではないかもしれません。効果的な方法の中から、そのときの自分にとって負担の少ない方法を選んで、自分を幸せにしていってほしいです」

取材に応じてくださった西野さん、工藤さん、本当にありがとうございました。

相手に好かれたいのか、どうでもいいのか。
相手を変えるための労力を割くべきか、スルーしたほうがよさそうか。
誰に根回しをしたら、相手と距離を置けるのか。
自分を最優先に考えて対策を使い分けていくことが、セクハラ被害から自分を最大限守る手段と言えそうです。
できることから取り入れて、セクハラから身を守っていきましょう。

■取材協力 株式会社TENGA
※内容はすべて2019年3月7日(木)当時の情報です。

(取材・文/豊島オリカ)

 

 

★TENGA広報女子のセクハラ回避術。心がけている5つのコツ【セクハラ対策1】

>CanCam.jp TOPにもどる