「謎の不調」になってない?疲労回復のために大事な3つのこと
新生活も、ゴールデンウィーク明けの仕事も、きっと少しずつ落ち着いてきた頃。そろそろ疲れがたまってきていませんか?
「理由はわからないけど、なんとなく不調……」という、モヤっとする不調が続くこともありますよね。もしかしたらそれ、体のいろんな部位の疲れが連鎖して起きてしまっているかもしれません。
脳腸ラボが産業医とともに解き明かした「謎の不調」の要因と、その解決策を見ていきましょう。
30歳前後は体調の変化が……!
まずは、脳腸相関LABOが30代・40代の働く女性568人を対象に心身の状態に関して調査を行った結果をご紹介。
「30歳前後から、原因のわからない不調の日が増えた気がする」方は50.9%、「健康診断では異常なしと言われるが、どこかいつも不調があり不安だ」と答えた方が48.6%。
原因の特定できない不調に不安を感じている女性がかなり多くいることがわかりました。
この不調の原因と対策を、多くの企業の女性のストレスと向き合ってきた精神科医であり、産業医でもある古賀良彦先生に解説していただきましょう。
環境の変化には要注意!
就職や異動など、職場の環境が変化することが多い時期は「漠然とした体調の不調」を訴える女性が増える傾向が見られます。具体的には不眠・頭痛・めまい・動悸・息切れ・胃腸の不調・生理不順・血圧上昇などがあげられます。病院に行き診察や検査を進めてもはっきりとは原因がわからないことも少なくありません。その場合、心理的、あるいは社会的な要因によって不調が生じていることもあるのです。
心理的・社会的な要因によって起こる身体的な不調
一般的に、身体の不調は、なんらかの身体的な原因によって起こると言われています。しかし、身体的には原因がないのに、心理的・社会的な要因によって体の不調が起こることも、決して珍しいことではありません。
このような身体的障害は「心身症」と呼ばれます。心身症を引き起こす主な要因としては、職場や地域におけるトラブル、介護や子育て、家計など家庭での問題があげられます。中でも職場でのトラブル要因としては、過重な仕事、人手不足、上司によるパワハラなどがあります。
このような要因によってストレスが生じ、それにうまく対処しきれないためにストレスが積み重なり、身体のバランスが乱れることによって生じるのが、働く女性の心身症と考えられます。
「脳」と「腸」から陥る「脳腸疲労」とは
心身症は、心と身体のバランスを保つ自律神経が、ストレスの蓄積によって適切に機能できなくなることによって生じます。
よくみられる例として、職場でのストレスを処理しきれない状態が続くことによって腹痛や下痢、便秘などの「腸」の症状がおこることがあります。この「過敏性腸症候群」といわれる障害は、人の心をつかさどる脳の働きが、重なるストレスによってバランスを乱し、自律神経を介した腸の活動をうまくコントロールできなくなることで起こります。
さらにこの腸の症状が、脳の疲れを助長し、仕事を効率的に行えなくなる、などの影響を及ぼすこともあります。まさに負の連鎖……。この「脳」と「腸」のマイナス関係を「脳腸疲労」と表現してもよいでしょう。この脳と腸がお互いに作用しあっている可能性は、近年「脳腸相関」として示唆されてきています。
この「脳腸疲労」を生じさせないためには、ストレスがたまるのを防ぐことが大切です。蓄積せずに毎日解消していく「3つのR」と呼ばれるストレス対処を積極的に進めていきましょう。
疲労を整える「3つのR」
日々たまっていくストレスを緩和するテクニックは「3つのR(レスト・リラックス・レクリエーション)」。ストレスとはつまり「歪み」のこと。歪みをただし、脳を円滑にはたらかせ、体の不調が生じにくいようにする方法を紹介していきます!
【1】Rest ~快眠~
まずは睡眠。ストレス緩和法で基本となるのはしっかりと休養をとることです。睡眠は量と質を意識して、脳をしっかりと休ませましょう! まずは睡眠不足にならないように夜更かしをせず、毎日一定の時間にベッドに入ることが重要です。睡眠時間は7時間とることが理想的とされており、睡眠を7時間とる人は死亡率が最も低い、という海外の研究データもあります。(出店:JACC Study)
そして良い睡眠の質とは、わかりやすく言うと「ぐっすりと眠り、途中で目が覚めず、朝の目覚めが爽やかである」こと。そのためには部屋の環境や寝具を整えることがおすすめです。
<部屋の環境>
・室温は24~26度、湿度は50%程度
・寝室は真っ暗にせず、スタンドやフロアライトで人影がほのかに見える程度の明るさにしておくと気持ちが落ち着きます。
・歌詞のない音楽をかけておくのもおすすめ。
<寝具>
・寝具では枕選びが最重要ポイント! 寝返りを打っても頭部が枕からはずれないように、70cmほどの幅があるものを選びましょう。
・シーツは淡いベージュやブルーなどのパステルカラーが落ち着きます。
・ナイトウェアは、ルーズで寝がえりを妨げないものがよいです。
【2】Relax ~リラックス~
効率よく働くために、休憩時間をきちんと確保しリラックスすることが必要です。
・仕事中にほっとできるような飲みものを飲むだけでも変わってきます。飲み物の中では、自律神経のバランスを整え気持ちをリラックスさせるばかりでなく、仕事の効率を上げる作用もある紅茶がおすすめ。もちろん、コーヒーや緑茶、ほうじ茶など、自分好みの飲料でも構いません。
・ランチはきちんと食べましょう!
・帰宅の途中、短時間でもいいのでマッサージを受けると、職場のストレスから気持ちを切り離すことができます。
・帰宅しても職場の緊張が残っている場合は、仰向けになって8秒以上かけて小さな声で「あー」という声を出しながらゆっくりと息を吐き、吐き終えたら自然に息を吸いましょう。すうときはあまり長く深く吸わないことがポイントです。思い切り吸ってしまうとかえって自律神経を緊張させることになるので、普通に空気を吸うのがコツ! この吐く・吸う、を20回くらい繰り返すと、気持ちも身体もほぐれてきます。
【3】Recreation ~楽しく発散~
3Rの中で最も大切なのがコレ! 「レクリエーション」とは「リ・クリエイト」つまり創り直すという意味なんです。ストレスで歪んでしまった心と身体の働きをスムーズに整えなおすということ!
何も激しい運動をしたり、時間をかけてディナーを作ったりなど、時間もお金もかかることをする必要はありません。毎日ちょっとした楽しみを短時間だけするのがポイント。毎日することなので用意も片付けも簡単なことで、お金があまりかからないものを選びましょう。たとえばアロマセラピーや塗り絵、最近では折り紙などを楽しむ女性が増えています。家でする食事も、コンビニで買ってくるものだけではなく、何か一品簡単なものを作ると気分転換になります。
レクリエーションに一瞬でも夢中になる瞬間があると、ストレスから自分を解き放つことができます。
ストレス解消が健康と効率化のカギ! 心も身体も美しくストレスをため込まないように頑張り過ぎないでくださいね。(中川瑞月)
精神科医、慶應義塾大学医学部卒。杏林大学名誉教授、特定非営利法人日本ブレインヘルス協会理事長。うつ病や睡眠障害などの治療研究のエキスパート。職場のメンタルヘルス不調についても造詣が深い。日本臨床神経生理学会名誉会員、日本催眠学会名誉理事長、日本薬物脳波学会副理事長。
情報提供元/脳腸相関