主婦も会社員もみんなクリエイティブ
矢部 『ダルちゃん』の中で、詩がダルちゃんにとって大切なものとして描かれていますけど、僕は詩を読むことに苦手意識があって。少し難しいなと思ってしまうんですよね。
はるな そうなんですね。
矢部 でも、『ダルちゃん』では詩の味わい方というか、詩を読むということの本質みたいなところが描かれていて、「こういうことなのかな」ってなんとなく掴めた気がしたんです。この作品を通して、詩という表現の奥深さを知りました。
はるな ありがとうございます。でも、私も実はそんなに詩を読むわけではなくて、掲載媒体の「ウェブ花椿」で詩の公募をやっていたのがきっかけなんです。
矢部 詩の公募。
はるな 一般の主婦や会社員のかたがとてもたくさん応募してこられたそうです。「創作を生業としていない人たちも、創作に対してこんなに意欲があるのか」と編集長も驚いたらしいんですよ。
矢部 はい、はい。
はるな 私は、いい暮らしってクリエイティブなものだって思ってるんです。クリエイティブって、絵や音楽を作ることばかりじゃなくて、掃除の手順をより効率的にしたり、収納を工夫したりとか、そういう生活のあらゆることにクリエイティビティを発揮する部分がある。
矢部 うんうん。
はるな 何かを表現する仕事をしていなくても誰もがクリエイティブだし、誰もが自分と向き合ったり、社会に投げかけたいものがあったりする。そういう人たちのことを描こうと思ったのが『ダルちゃん』のはじまりなんです。
矢部 へえ、なるほど。
はるな 漫画は詩ほど内に向かうものではないけれど、『ダルちゃん』はかなり自分と向き合い、社会に投げかける部分もある内容になったので、批難も受けるんじゃないのかなと怖くなって、公開前日に家でひとりで泣いたりしていました。
矢部 え、まだ批難される前から?
はるな そうです、想像して泣いてました。(笑) でも、まったく違う反応が返ってきたので本当によかったです。
矢部 きっと多くの人が共感できたんでしょうね。こんなに自分に向き合って描いてるものに対して、「自分はこうは思わない」という意見こそあっても、バッシングは起こらないんじゃないかと思います。
はるな うれしい……。
矢部 そういえば僕、仕事場に『ダルちゃん』を持っていって読んでいたときに「なんですかそれ? かわいい!」って共演者やスタッフの女性たちが食いついてくれて、お貸ししたことがあるんですけど、内容がシリアスなぶん、装丁なんかの入口がかわいいのはとてもいいなと思いました。
はるな うれしい! そうですね、せめて見た目はかわいい感じにしたかったんです。
矢部 でも、借りていった人は次の日「ずど〜ん」ってなって返してくれるんですけど(笑)
はるな すみません(笑)
矢部 かわいい感じで入口が開かれているのはすてきだと思います。