頼み方や怒り方、コレが正解!マナーのプロに聞いた、職場のトラブルを減らす方法

仕事にトラブルはつきものです。トラブルが起きない職場はありません。
けれど、できることならそのトラブルは最小限におさえたいものです。
たとえば同じことを頼むにしても「頼み方」ひとつで印象は変わりますし、失敗したときの叱り方も、言い方ひとつでそれを素直に受け取れるかどうかは大きく変わってきます。

本日は日本マナーOJTインストラクター協会代表や、マナースクール「グレース」を主宰し、あらゆるマナーについて知り尽くしたプロ中のプロ・笹西真理さんに「職場でありがちなトラブルを減らす方法」についてうかがいました。
基本中の基本「すれ違いが起きない、人にお願いするときのポイント」「人に怒るときに心掛けたいこと」そして最後に「敬語や丁寧語でありがちなNG」と、絶対におさえておきたいポイントをぎゅぎゅっとご紹介します!

 

◆人にお願いするときに心掛けたいポイント


どんな職場でも「誰かに何かをお願いする」ということがあると思います。その場合、「○○やっといて」のように、やることだけを「点」でお願いすることは、あまりよろしくありません。
もちろんずっと同じルーティーンになっていることならまた話は変わってきますが、点で指導をしてしまうと、頼まれた側が本来の目的がわからないと、頼む側・頼まれる側のズレが発生します。
教えるときのルールは、「なぜ、どのように、何を」を伝えることです。特に「なぜ」は重要。これを言わないと、やってほしかったこととズレてしまうことが多いです。

例えば、書類の印刷ひとつとってもそう。
上司が部下に、お客さんのところに持って行く資料の印刷をお願いするときのシチュエーションを想定して説明しましょう。

1.「この書類印刷しておいて」

これだけだと、頼まれた側の価値判断でやることになるので、「コストもあるし、白黒で二枚づけで印刷しようかな」と思う人もいる。いちばんありがちで、すれ違いが起きやすいですね。

2.「この書類、両面カラーで印刷しておいて」

このように具体的に頼めば、まだ形は望み通りになります。(1)に比べれば良いですが、頼まれた側は言われたことをそのまま行う、で終わります。

3.「この書類を客先に持っていくんだけど、綺麗なほうがいいから、両面カラーで印刷しておいて」

こうやって「なぜ」を添えて頼むといちばんわかりやすく、ズレが起きません。頼まれた側も、その行動の理由がわかるから、「じゃあ表紙をつけたほうがいいかな、クリアファイルに挟んだほうがいいかな」とさらに考えることができます。

 

上司側の人間が、「部下に何を頼んでも欲しいものが出てこない、何を言っても二度手間だ、あの部下はダメだ」と言うことがあるんですが、それは「教え方が悪い」ということが往々にしてあります。
たとえば「これ急ぎだから」と言っただけでは、伝えたことになりません。その「急ぎ」が、本当に今すぐなのか、今日中なのか、1週間以内になのか……。人によって基準は違うので、曖昧な言葉を伝わず、具体的に示しましょう。

 

◆怒るときのポイント


できれば怒らずに済むに越したことはありませんが、トラブルが発生したときやうまく進まないとき、やむを得ず指摘や叱るという行動が必要になります。その場合、一歩間違えると反感を持たれる、素直に聞いてもらいにくい、ということが起きます。それはお互いにとって良くないので、このようなポイントをおさえましょう。

[1]怒るのは「人」ではなく、あくまで「事柄」

注意するとき、怒るときは、あくまで「事柄」について怒りましょう。あくまで「結果」がダメなのであって、その「人」を責めないように気をつけましょう。

[2]ムラをなくす

同じことをしても、「今日は怒るけど明日は怒らない」人、「Aさんには怒るけどBさんには怒らない人」など、ムラがある人って意外と多いです。
でも、そうやって怒る基準がバラバラだと、怒られている人は何が正しいのかわからなくなります。特に同じことをしているのに対象にバラつきがある場合は、怒られる人は「なぜ私だけ」と卑屈になるし、怒られない人は「なぜ自分は怒られないんだろう?」と疑問に思います。いずれにしても良くありません。気分屋と取られてしまう人は、このように「怒り」にムラがあります。

[3]怒るポイントを明確にしておく

怒る前の大前提を言うと、普段から「自分はあれをしたら怒るよ」ということをできれば明確にしてあげるといいですね。指示を出すときに「5W1H」を伝え、「もし難しいならいつまでに言ってくれないとダメですよ」とか、このポイントを気にしている、ということを具体的に伝えましょう。そうすることで、そもそも怒ることも少なくなっていけるはずです。

 

◆間違いがちな敬語の使い方


あらゆる敬語の間違いの中で、最も多く見かけるのは、やはり「二重敬語」でしょうか。
敬語を頑張って使おう、と思うばかりに、「〜されていらっしゃいます」と言ってしまうとか……。
あとは、皆さん「尊敬語」は問題ない方が多いのですが、「謙譲語」は苦手、という方が多いですね。特に、身内の方の行動の際に間違ってしまうようです。たとえば謙譲語の「うかがう」をお客様に、「彼方でうかがっていただければと思います」と言ってしまったり……丁寧っぽく聞こえはしますが、違いますね。
主語が謙譲語を使うべき「自分」もしくは「自社(身内)の人」なのか、尊敬語を使うべき「相手方」なのかを考えれば、この間違いは減っていくと思います。

 

◆「〜部長様」と使う人、多いんです!


社内メールなどで、「〜部長様」と書いてしまう人が、かなり多く見受けられますが、「〜部長」「〜社長」など、そのまま使うのが正しい使い方です。
私自身会社の代表をしていて、「〜社長様」というメッセージをいただくことが結構あります。別にそのメッセージをもらったからって嫌な思いはしませんが、基本的には間違いです。
また、「〜部長殿」はさらに良くないので、使わないほうがよさそうです。「〜殿」は丁寧に見えて、敬称としては「様」より低い言葉なので、二重に失礼になってしまいます。

 

◆了解、承知、かしこまりましたの違い


よく何かを頼まれたときなどの返事として使う言葉ですが、このように使い分けましょう。

「了解しました」

上の方から、同等もしくは下の方に言う言葉です。敬語ではありません。

「承知(いたし)しました」

こちらは目上の方に対して用いる言葉で、適正です。相手からの依頼、意向を理解したという時に頻繁に使いたい言葉です。

「かしこまりました」

こちらも「承知しました」と同様、下から上への言葉としてふさわしい敬語ですが、より丁寧です。響きも柔らかいので、女性は「かしこまりました」を使うとより好ましいですね。

 

ここまで6回にわたってきてご紹介してきた、笹西さんに聞く「正しいマナー」講座は次回が最終回。次回は「いいことをしているつもりで、なんだかイラッとする人」がやりがちな「気遣い」についてご紹介します。

★次回はコチラ→ その親切…お節介?「気配り上手な愛される人」と「お節介な人」は、ココが違う!

 

笹西真理
(社)日本マナーOJTインストラクター協会(JAMOI)、株式会社トゥルース代表。国際線CA、大手コンサルティング関連会社を経て現在に至る。関東・関西・九州を中心にマナー講師を束ね、年間約3000本の人財育成研修を行う。ちょっとした気くばりや相手に合わせる「ユアペース」を掲げ、「思いやりの心を行動で表す」手法を教育を通して広く伝えている。

(社)日本マナーOJTインストラクター協会 www.jamoi.jp
マナースクール Grace www.grace-school.jp

★笹西先生に聞いた「会話が途切れない、話し上手な人」が心がけることはコチラ→ 「会話が続かない」から卒業!聞き上手がやっている「相槌」と「質問」のコツ

★「意外と知らないNGマナー」はコチラ→ それ、ホントはNGです!マナーのプロに聞いた「やりがちな食事のNGマナー」4選

 

 
構成/後藤香織

 

 

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