ラブラブなはずのカップルが、結婚したとたんに些細なことで喧嘩が絶えなくなってしまう。悲しいかな、ちょくちょく耳にするケースです。
脳科学者の中野信子さんいわく、この原因は「いじめとよく似ています」とのこと。
『ヒトは「いじめ」をやめられない(小学館新書)』の著者・中野さんへのインタビュー。第3回は、いじめのメカニズムからひも解く「恋愛・結婚を長続きさせるコツ」を伺いましょう。
▼喧嘩やいじめを助長させるのは…実は「愛情ホルモン」
「いじめとカップルの喧嘩は、(行為そのものではなく)発生するメカニズムがとてもよく似ています。どちらも距離が近すぎること、オキシトシンが過剰に出てしまっていることが原因です」
オキシトシンとは、「愛情ホルモン」とも呼ばれる脳内物質。脳に愛情や親近感を感じさせてくれるホルモンです。誰かと一緒にいると安心するのは、オキシトシンがたくさん出ている証拠。ならたくさん出せばいいんじゃないの、と思ってしまいますが……。
「オキシトシンが出過ぎると、嫉妬やいじめを助長してしまうんです」
えっ、出過ぎるのも良くないんですか?
▼結婚相手に腹が立つのは「仲間だから」
熱血コーチの率いる部活や、ずっと一緒の仲良しグループ。こうした親密な集団にいると、人は些細な違和感にも敏感に反応するようになります。
“仲間なのに、なぜ同じことをしないの?”
“仲間なのに、どうしてルールを破るの?”
こうした気持ちが積もっていくと、集団を守るためにターゲットを排除しようという本能が働きだします。これが、オキシトシン過多の状態。こうなると、グループ内ではいじめが、カップル間では喧嘩が起きやすくなるのです。
とくに結婚相手は、家族という強い絆で結ばれたはずの相手。腹が立つのは仲間意識の裏返し、オキシトシン過多が原因だったのですね。
▼オキシトシンの量が安定している人は、たったの◯割!
そもそも、「オキシトシンの量が安定している人自体、日本人の約6割にしか過ぎない」と中野さんは語ります。
「オキシトシンの量が安定していると、たとえばデートから帰ったときに『寂しいけどまた今度』と思うことができます。でもオキシトシンが枯渇しがちな場合、恋人と離れたとたんに『寂しくてたまらない、カレが今何をしているのか不安で不安で仕方ない』と苦しくなってしまいます。
約4割の男女が後者であることを考えると、世のカップルのじつに半分以上は何らかの問題を抱えていると言えるでしょう」
▼脳科学が解明!ラブラブのまま長続きするコツは…
オキシトシンをコントロールして恋愛・結婚を長続きさせるには、2つのコツを意識しましょう。
◆(1)距離を保つ
多くのカップルは、べったりと近づきすぎてしまう傾向にあります。距離が近ければ近いほど良い関係になれるわけではなく、実際は少し距離をとった方がうまくいくんです。
なぜか相手の短所ばかりが見えてしまいイライラして仕方ないとき、「嫌いになっちゃったのかな?」と心配するなかれ。それは強すぎる愛情の裏返しかもしれません。
そんなときは、むしろ少し距離をとりましょう。縁側でお茶をすする幸せな夫婦を想像してみて。会話がなくても、別々のことを考えていても、そばにいると落ち着く。相手の携帯が鳴っても気にならないし、「浮気かも」なんて思わない。そんな距離感が、オキシトシンを適量に保ち、関係を長続きさせるコツです。
◆(2)すべすべ・ふわふわでオキシトシンを安定させる
赤ちゃんは、着心地の良いものを着せるとオキシトシンの量が安定する、という実験結果があります。「この効果は大人でも期待できます」と、中野さん。
すべすべ、サラサラ、ふわふわ、ツヤツヤ……。寝具や洋服は、ぜひ触り心地のよいものを選んで。シルクのパジャマやコットンのシーツも良し。デスクの上に障り心地の良いオモチャを置いて、感触を楽しむのも良しです。
▼パートナーになる前に見極めるには?
せっかくなら、オキシトシンと情緒が安定している人をパートナーに選びたいもの。交際前に完全に見極めることは難しいですが、以前のパートナーとの付き合い方や、子どもの頃の様子を訊いてみると参考になるかもしれません。
というのも、2歳くらいの時期の愛着パターンは、大人になっても変わらないことが多いんです。「お母さんと離れるときにひどく泣いた」「逆に全然泣かなかった」なんて話から、その人のパターンが見えてくるでしょう。
ただし、パートナーであるあなたが安定していれば、それに引っ張られて恋人のオキシトシンが安定してくるケースも充分あり得ます。
近づきすぎない適切な距離を保ちながら、末永く愛情を育てていきましょう!
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ヒトは「いじめ」をやめられない
著/中野信子
780円+税/小学館
中野信子
1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所にて、ニューロスピン博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマの研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評があり、著書多数。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。
(構成:豊島オリカ)
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