嘘をついて練習をサボっていた12歳の白井健三を叱咤した内村航平のある言葉

12歳の約束

体操を始めたのは、わずか3歳の頃。元体操選手の父と母はともに、学校の体育の先生で、ふたりの兄も体操をやっていました。そして白井選手が初めて大会に出たのは5歳。ただし“6歳以上”という出場資格を満たしていなかったため、特別参加として順位はつかなかったそう。

しかし、試合が始まってみれば、誰に教わったわけでもなく自然と覚えていた動きをやってのけ、大人が驚くほどのうまさを見せ、結果は1位の選手の次に高い点数。

おむつをつけていた頃から体育館が遊び場で、気がつけば自然と体操の動きを覚え、遊び感覚で始めた体操が、競技として楽しいと感じるようになったのは、白井選手が4年生の頃。大会に出るたびに、緊張感と楽しさを知り「次もまたやってみたい」と思うようになったのだとか。

 

そして、6年生のある日、白井選手は、体育館でひとりの大学生選手に声をかけられます。それが、当時、日体大の学生だった内村航平選手です。その年の北京五輪で団体銀メダルと個人総合銀メダルを獲得し、すでにトップクラスの体操選手だった内村選手が、トランポリンの上ですごいひねり技をポンポンとやっている白井選手を見て驚き、そしてこう言ったそう。

「きみはとってもひねりが上手だね。19歳か20歳になったら僕と一緒に五輪に出よう」

五輪のメダリストからそう声をかけもらった白井選手は嬉しくて、小6の卒業文集の将来の夢に「五輪で金メダル」と書いたと言います。

 

しかし中1になると、地味な基礎練習と成績の伸び悩みで、急に体操がつまらなくなり、両親に嘘をついて練習をサボることもあったとか。そんな彼の嘘を見抜き、「練習しないと伸びていかないよ」と声をかけたのもまた、内村選手。

12歳で初めて「壁」を感じていた白井選手が、心から体操が楽しいと思えるようになったのは、父のアイディアで特別に作られた“トランポリン”のおかげ。ゆか運動のマットの上ではできないレベルの技を、この特製トランポリンの上で試すことで、誰にもまねできない空中感覚を身につけられたのだとか。

 

いま、白井選手の名前がつけられた技は、合計で4つ。そのうちの3つは、彼が17歳のときについたもの。白井選手は「難しい技に挑戦していくことによってこそ、自分が成長できる」と考えています。

さらに、8月15日に行われた種目別「跳馬」決勝では、新技「伸身ユルチェンコ3回半ひねり」を成功させ、銅メダルを獲得! 五輪という大舞台で新技を成功させ、誰もやったことのない攻める演技で、またも世界を驚かせました、

練習をサボったこともあった。でも逆にそれがよかった。だからこそ飽きずにいまも体操をやれていて、やることが尽きない。12歳を振り返り、「後悔することはない」と話す白井選手。

あれから約7年。内村選手と出会い、約束した「五輪に一緒に出る」こと、そして「五輪で金メダルを取る」という夢を、本当に実現させてしまった19歳。早くも、2020年への期待が膨らむばかりです!(さとうのりこ)

*参考文献:『12歳の約束 そして世界の頂点へ』(矢内由美子、寺野典子 著/石野てん子 絵)¥680+税(小学館)

 

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