ハンドボール男子日本代表・部井久アダム勇樹「粘って勝ちたい」。陽キャな素顔にも迫る!

ハンドボール日本代表・部井久選手から目が離せない!

7月26日に開幕したパリ2024オリンピック。自力では36年ぶりにオリンピック出場を決めたハンドボール男子日本代表の部井久アダム勇樹選手に、競技の見どころやパリへの想いをうかがいました!

★ブレイキン日本代表Shigekix選手のインタビューはこちら!


部井久選手ってこんな人!

福岡県出身の25歳。196㎝という高身長と肩の強さで、ハンドボール日本代表「彗星JAPAN」を牽引するエース。ジャンプの最高到達点は3m、シュートボールはなんと120㎞/hを超える! 元アスリートのパキスタン人の父と日本人の母を持ち、運動神経のよさは両親ゆずり。現在はジークスター東京に所属し活躍中。

Career

  • 2016年
    U-19・U-22の日本代表選出
  • 2017年
    日本ハンドボール史上初めて高校生で日本代表に選出される
  • 2018年
    中央大学に所属しながら、フランスのリーグに挑戦
  • 2020年
    ジークスター東京とプロ契約を結ぶ
  • 2021年
    東京オリンピックに日本代表として出場
  • 2023年
    Al Jaziraに期限付きで移籍し、UAEのリーグに参加

編集部的「部井久アダム勇樹選手のココがスゴイ!!」

日本代表随一のスピードシュート「アダムキャノン」の破壊力がすさまじい!

部井久選手といえば、なんといっても剛速シュート! その速度は120㎞/hを超え、「アダムキャノン」と呼ばれているんです。世界トップクラスの威力でゴールネットを揺らす迫力をぜひ目撃してほしいです!

バッグには、ダウンタウン浜田雅功さん印の「浜田大明神」のお守りが!

撮影日、スタジオにやってきた部井久選手のバッグに変わったお守りが。話をうかがってみると、数年前にTV番組の『ジャンクSPORTS』に出演された際にもらったという番組オリジナルお守りとのこと。試合や遠征のときには、ご利益がありそうだからと付けているそうです!

競技種目「ハンドボール」って?

  • 1チーム7人ずつの2チームが、ボールを手で扱って相手ゴールへと投げ入れ、得点を競うゲーム
  • コートは縦40m×横20mと、フットサルコートと同じサイズ
  •  試合時間は前後半30分ずつ、ハーフタイム15分。決着がつかなければ大会によっては延長戦が行われる
  • オリンピックでは12チームによるグループリーグの末、決勝トーナメント戦で、メダルが争われる

「日の丸を背負うこと」への憧れが幼い頃からありました!

両親ともアスリートだったので、遺伝もあってか、小学生の頃から周りと比べて頭ひとつ背が高くて、徒競走でもいつもいちばんでした。何より、スポーツをすることがとにかく好きな子供でした。我が家はスポーツ一家だったので、自然とリビングのテレビでは様々な種目の試合が流れていて。オリンピックも家族で観戦して、幼いながらに日の丸を背負って日本代表として戦うアスリートたちに対して「かっこいいな、自分もいつかこんなふうになりたいな」と思っていました。なので物心ついた頃から、オリンピアンになることに強い憧れがありました。

僕は小学生のときはソフトボールに熱中していたのですが、あるとき友人の誘いで、福岡県が運営する「タレント発掘」オーディションに参加しました。これは、県が体育協会や競技団体と協力して運動能力の高い小中学生の適性競技を見いだし、英才教育するという事業。僕が参加したときは県内の小中学生2万人くらいが集まっていたかと思います。三次審査まであり、細かく色々なスポーツの適性を審査したのですが、そのなかで僕はハンドボールの成績が特によかったんです。そして「君なら将来ハンドボール日本代表になれるよ!」と指導監督の方に評価をいただいたのがきっかけで、ハンドボールの世界に足を踏み入れることになりました。

中学校ではハンドボール部に入部。しかし、今思えば当然のことなのですが、日本代表になれると大きなことを言われたにもかかわらず、経験ゼロの自分よりも3年生の先輩の方が上手いという目の前の事実とのギャップがもどかしく、最初はつらかったです。練習してもなかなか先輩たちのようにできなくて、本当に自分に向いているのか疑心暗鬼になっていました。それでも、恩師に恵まれて腐らず地道に練習を続けた結果、高校3年生のときに晴れて日本代表に選出されました。すごくうれしかったですね。当時の監督とは今でも連絡を取っていて、今回日本代表のパリオリンピック出場にあたっても横断幕を作ってくれたみたいで。本当にありがたいです。

大学進学後、フランスのリーグに参加したことも自分のキャリアにとっては非常に大きかったです。世界のレベルで見た自分の強みと弱みをはっきりと認識できる、有意義な2年間でした。シュート速度がフランスのチーム内でもトップクラスだったので、大きな自信につながりましたし、逆にもっと試合全体の状況を把握して、自分本位ではないプレーをしないといけないと気づかされました。今はその経験を活かして、バランスのとれた選手になれてきているんじゃないかな。パリに向けて、もっともっとパワーアップします!


みんなの気になるコトを部井久選手に聞いてみた!

Q.ズバリ、自分はどんな性格だと思いますか?

うーん…そうですね、チームメイトからはよく「陽キャでムードメーカー!」って言われます(笑)。なので、明るい性格なのかな。自分でも、コミュニケーション能力は高いほうだと思います。年齢にかかわらず仲よくなれるタイプなので、 ジークスター東京の主将だった土井レミイ杏利選手のことも「レミたん」って呼んでいて、兄貴のように慕っています(笑)。

Q.年上の先輩と仲よくするコツを教えてください!

日本代表のなかではまだまだ若手のほうなので、10歳くらい年上の選手もチームにいます。僕流の距離のつめ方でいうと、失礼にならない程度にイジることですかね。例えば、自分自身も顔が濃いので、顔の濃い先輩たちがミーティングでそばにいるときに「なんか濃いなぁ…」って苦い顔をしてみたり。「お前が言うな」って笑ってくれます(笑)。

自分ではそこまで思わないですが、腕の力こぶを褒められることが多いんです。力強いシュートの助けになってくれているはずです(笑)

Q.オフの日の幸せな過ごし方といえば何ですか?

小学生の頃にソフトボールをしていたのもあって、昔から野球観戦が大好きです! 福岡出身なので、完全にホークスファン。家族がみんなスポーツ観戦好きなので、テレビでも、スタジアムにもよく行っていました。最近でも休みのときには地元の友達とPayPayドームへ、ホークスの応援に行きます。それにしても、野球場で飲むビールって、なんであんなにおいしいんでしょうね(笑)。なんだか、うずうずしてきちゃいました!

Q.あまり知られていない隠れた特技はありますか?

実は子供の頃にマイケル・ジャクソンに憧れていまして、なめらかなムーンウォークをできるようになるまで必死で練習していました(笑)。今じゃ滅多に披露する機会がないのですが、きっとできるはずなので後でお見せします!
※部井久選手のムーンウォークはCanCamの公式インスタグラムで見られます!

Q.好きな食べ物について教えてください!

ズバリ、焼肉です! 上タン塩に限りますね。ごはん何杯でもイケちゃいます。チームメイトともよく行きますし、大好きすぎて多いと週2で焼肉のことも。僕はどちらかというとやせやすいので、体重が落ちないようにたくさんごはんを食べるようにしていて。あとは子供っぽいんですが、「のりたま」のふりかけも好物なので常備しています(笑)。

Q.試合前によく聴く音楽はなんですか?

ラップが大好きなので試合前に聴くとテンションが爆アガりします! ノリがよくてかっこいいじゃないですか。プレーの勢いもよくなる気がします。でも、ラップのテンションに慣れて試合前のギアチェンジ効果がなくなってしまうと困るので、普段はあまり聴かないようにしています(笑)。


ハンドボール選手あるある!? スクランブル交差点で街ゆく人の進行方向をいち早く察知できるんです!

フランスのリーグにいたときに肌で感じたのですが、ヨーロッパでのハンドボールの人気ってすごいんですよ! サッカーの次に人気なスポーツとも言われているほどです。ハンドボールの魅力はそのダイナミックさにあると感じています。国際大会だと身長2mを超える選手たちが全力で身体をぶつけ合って、すさまじいスピードのシュートがゴールに突き刺さる。なかなかこんなにも迫力のあるスポーツってないと思うので、生で試合を観たらびっくりすると思いますよ。僕たち日本代表がもっと国際大会で活躍すれば、おのずと日本国内でのハンドボールへの関心も高まるはず。そういう意味でもパリオリンピックで好結果が出せるように頑張りたいと思っています。

シュートのスピードもそうなのですが、ゴール前でいかにディフェンスをかいくぐってシュートをするかという、選手たちの駆け引きを観るとハンドボールをもっと深く楽しめるようになると思います。試合中って、フェイントをかなりかけているんですよ! 相手の重心の移動を見て、右に行くと思わせて、すぐに左方向にかわしたり。だから、ハンドボール選手あるあるで、混んだ街中でも行き交う通行人の進行方向をとっさに意識しちゃうんです(笑)。僕もよく歩きながら、「あ、この人重心が左に傾いたからきっと左に行くな」と思ってワンテンポ早く進行方向を変えたりしています。

目指せベスト8。今年の「彗星JAPAN」は、ひと味もふた味も違うので、お見逃しなく!

そんな日常生活も含めたフェイントの意識もあってか、今は駆け引きが昔より上手になってきていると思います。ゴール直前でしっかり相手のシュートを防ぐのも自分の大切な役割です。日本代表のなかでは体格も大きいほうなので、ディフェンスの要としてもチームを守っていきたいですね。そのためにパリオリンピックまでに意識したいのは体力強化です。海外の大柄な選手とぶつかり合うと非常に消耗させられるので、少しでも強くなって、少しでも長く全力で戦いたいんです。

自分にとって今回は、東京に続いて2回目のオリンピック。前回は予選突破ができずに非常に悔しい思いをしました。東京での悔しい思いは、次のパリでしか晴らせないと思っています。今、そのチャンスが目の前にきているんです。悔しさをバネに3年間練習を積んできたので、チームを勝たせられるような、引っ張っていく存在になると心に決めています。チーム全体としても「予選突破してベスト8以上」というのを目標にしています。昨年のアジア予選からチームの一体感をしっかりと感じていて、今までだったら粘り切れていなかったところをしっかり粘れて勝ちに持っていける展開が多く、その結果、アジア予選を優勝して36年ぶりに自力でオリンピック出場権を獲得できました。今、勢いに乗っている「彗星JAPAN」の応援を、ぜひよろしくお願いします!

CanCam2024年8月号「Go for it! Road to Paris」より
撮影/鎌田拳太郎 スタイリスト/Kim-Chang ヘア&メイク/Jhun Takayama 構成/山下 樹 WEB構成/久保 葵