過去のことを何度も思い出してもしょうがないのは、頭ではわかってる。でもふとしたときに「私、どうしてあんなことしてしまったんだろう」という以前の失敗、「あんなこと言わなきゃよかった」という失言をぐるぐる思い出しては落ち込んでしまう。一度落ち込みのスパイラルに入ったら、「そういえばあれも…」とさらにネガティブな回想は止まりません。
このお悩みを解決する方法について、「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーに活躍する「ラフドクター」、精神科医・産業医の井上智介先生にうかがいました。
井上智介先生
精神科医&産業医
「おおざっぱに笑って健康に生きる」をモットーにした「ラフドクター」として活躍中。書籍多数。近著に『がんじがらめの心がラクになる 「呪いの言葉」の処方箋 』など。
◆過去の失敗を思い出すのが止められません
Q.過去の失敗を何度も思い出して、「どうしてあんなことしてしまったんだろう」と何度も落ち込む癖があります。思い出さないようにしようと決めても、ふとしたときに出てきてしまいます。思い出してもどうしようもないことを引きずらないコツはありますか?
このように過去を思い出してしまうのは、「自分自身が今後同じ苦痛を味わうことがないように」という、脳のアラートのひとつ。これ自体は悪いことではありませんが、それでネガティブな気持ちを引きずっていると、日々のパフォーマンスに大きな影響を受けてしまうので、続くとしんどいですよね。
そういったときは、なんとなくモヤモヤし続けるのではなく、「どうしてあんなことしてしまったんだろう」の「どうして」の部分を、きっちり言語化してみましょう。たとえば「その場の雰囲気に飲まれてNOが言えなかった」「体調が悪いのに無理をしていた」など、何かしら理由があるはずです。同じことを繰り返さないように、未来への学びにしましょう。
でも、それでも人間には、どうしてもこれまでの人生で培ってきた思考のクセが誰にでもあります。気づかないうちに、そんな「クセのついた色メガネ」を通して世界を見てしまっていることが、とても多いです。たとえば「NOが言えないのが原因とはわかっているけど、でもNOと言うのがどうしても難しい…」という人もいらっしゃると思います。「NOと言ってはいけない」というクセから、なかなか離れられないのだと思います。
そんな風にもしモヤモヤ悩むことが多いなら、人と話してみたり、本を読んでみたり、積極的に多くの人の価値観を知る機会を作ってみてください。たくさんの価値観に触れることで、「あ、こんなにさらっとNOって言ってもいいんだ」と、自分が外せなかった色メガネを少しずつ外してくれるはずです。
そのうちに価値観が広がって「あのときの自分があんなことをしてしまったのは、●●という自分の価値観に縛られすぎていたからなんだな」と客観的に見られるようになるはず。そのときに「よし、同じ間違いを繰り返さないように、こっちに行ってみよう」と自然と思える日が来るはずです。
▼「メンタルが強い人」がやっていること