今年は連日最高気温35度を超える猛暑日が続き、エアコンの使用が欠かせない日々が続いています。しかし、その一方で電気代の値上げや電力需給のひっ迫を考えると、節電も心掛けたいところ。特に、高齢者がエアコンを控える傾向にあり、さらに熱中症によるリスクが高まっています。
そこで、帝京大学医学部付属病院センター長・三宅康文先生にうかがった「上手なエアコンの使い方」を紹介します。
三宅 康史(みやけ・やすふみ) 先生
帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター長・帝京大学医学部救急医学講座教
授。1985年東京医科歯科大学医学部卒業。さいたま赤十字病院救命救急センター
長、昭和大学医学部教授などを経て、2016年より現職。日本救急医学会専門医・指
導医・評議員、日本集中治療医学会専門医・評議員など。
約6割が「省エネ・節電のためにエアコン使用の我慢を考えた」
今年の6月に実施した意識調査によると、節電意識の高まりからか、「省エネ・節電のために夏場のエアコン使用を我慢しようと思うことがある」と回答した人が、64.7%という結果に。
とはいえ、猛暑日や熱帯夜が続くため、上手にエアコンを使わなければ身体や自律神経が休まる暇がなくなってしまい、疲労が蓄積され、熱中症のリスクがさらに高まります。そのため、日中だけでなく、熱帯夜にもエアコンを積極的に使っていくことが必要です。
ここからは、節電しながらエアコンを上手に使うコツを紹介していきます!
節電しながら快適に。上手なエアコンの使い方
【フィルターを掃除しないと、1年で約25%電気代アップ】
エアコンの冷房運転は、室内機が周囲の空気を吸い込み、室内機の中で冷やしてから室内に戻すことで室温をコントロールしています。そのため、内機が取り込む空気の中に漂うホコリを止める役割をするフィルターにホコリが溜まると、室内機を通って冷やされる空気の量が減り、室温が設定温度に到達するまでに時間がかかります。その分、無駄な電力を使ってしまっているのです。もし、フィルターを一年間掃除しないと、約25%の電気代の無駄につながる場合もあるため、それを防ぐうえでも2週間に1回程度のフィルター掃除がおすすめです。
【高温回避!空気の流れを確保】
室外機の吸込口や吹出口がふさがれると、エアコンに負荷がかかってしまいます。そうなると運転効率が下がり、消費電力と電気代が上がります。そのため、室外機へのカバーの装着や、室外機の周辺に荷物を置くことはせず、室外機周辺の風の流れを妨げないようにすることが重要です。また、室外機周辺が高温になると、エアコンの運転効率が下がることがあります。そのため、夏場の直射日光で室外機の周辺が熱くなるときは、日影が作れて風通しも良い「よしず」などを、室外機から1メートルほど離れたところに立て掛けることも効果的。
【空気をかき混ぜて温度ムラを抑える】
暖かい空気は上昇する性質があり、夏場の室内では、天井付近と床付近の空気の温度に差が出る「温度ムラ」が起こりやすいです。冷房運転時に温度ムラができていると、エアコンが「室内はまだ設定温度に達してない」と判断するため、生活するエリアが十分涼しくなっていても、必要以上に運転してしまうことがあります。快適性の低下に加えて、エアコンへの負荷が上がってしまい、消費電力や電気代の増加につながります。そこで、エアコンの風向を水平にしたり、扇風機などを使って室内の空気をかき混ぜることで温度ムラを抑えることができます。
【風量は「自動」が正解】
エアコンの風量は「自動」がおすすめ。微量や弱風の方がファンの回転音が静かで節電できそうなイメージですが、風量が少ないと設定温度にするまでに時間がかかるため、その分、無駄な電気代がかかってしまうこともあるのです。そのため、風量は「自動」にしておくことが効率的だと言えるでしょう。
【30分程度ならエアコンは「つけっぱなし」】
エアコンは、電源を入れてすぐの時など、設定温度をめざして室温を大きく変化させるときに多くの電力を消費します。一方、設定温度に達した後、室温を維持するための電力は少なめです。つまり、エアコンのスイッチのこまめなオンオフは、室温を大きく変化させるタイミングを増やすので、エアコンに負荷がかかると同時に、消費電力も増加していくのです。そのため、30分程度の外出であれば、スイッチを切るよりも、つけっぱなしにしておいた方が消費電力を抑えられます。
なお、定期的な窓開け換気をする場合も、つけっぱなしがお勧め。もったいないように感じますが、実験からも30分に5分の窓開け換気のたびにエアコンの電源を小まめにオンオフにするより、エアコンをつけっぱなしにした方が、電気代が1日で約45.7円(1カ月換算で約1,371円)低くなるという結果が出ています。
適切に使えば強い味方
エアコンの使用を我慢しすぎるのも危ないですが、逆に体を冷やしてしまうため使い過ぎにも注意です。あくまでも、「快適に」過ごせる温度調節を心がけましょう。ぜひ、今回の記事を参考にエアコンの使い方を考えてみてください。今年の夏は無理なく快適に猛暑を乗り越えましょう!(岡美咲)