欲しいもの・欲求を健全に諦める心理テクニック
人には何かをしたい・手に入れたいという欲求があり、だからこそモチベーションをもって生きることができます。ただ、それらが手に入らないとき、過剰なストレスにさらされる場合も少なくありません。そんなとき、諦めるにはどのようにすればよいのでしょう。そこで今回は、「欲しいもの・欲求を健全に諦める心理テクニック」をご紹介いたします。
■正当化せず認知的不協和を解消する
例えば、タバコやギャンブルといったものがよくないことは周知の事実ですよね。でも、どうして人はやめられないのでしょうか。それは自分を“正当化”したいという心理がはたらくからです。心理学者フェスティンガーは、自分の行動を“合理化”する理由づけを人は求めていると提唱しました。たとえば、タバコやギャンブルはストレス解消にいいと思うことで、本当はやめたほうがいい嗜好品を続ける理由を自分に与えるのが、まさにそれです。続けていたとしても、きっといい結果にはならないだろうと自分で自分を納得させることも、諦めるという決断するうえでは大切なのです。
■接触や目にする回数を減らす
心理学者であるザイアンスは、欲求は接触した回数に比例するという“単純接触の効果”を発見しました。何度も目にしたり対象と直接接触することで、人はその対象に愛着が湧きどんどん欲しくなっていくのです。そのため、もしも何かを諦めたいなら、気になる対象と接触する回数や目にする回数を意図的に減らしていかなければなりません。そうしているうちに、だんだんと自分の中における欲しいものの占める存在が希薄になり、諦めるふんぎりをつけられるようになるはずです。
■長所を出し切った後、欠点にフォーカスする
米国の心理学者であるアロンソンとリンダーは、“評価と印象の関係”について検証しました。その結果、最初に対象をけなしてからほめていくのが、最も好印象を抱くという結果が出ました。つまり、頭の中で対象のことをけなして、「でもこんないいところもあるし…… 」とフォローしてしまうと、いつまでも諦めがつかなくなるのです。そこで考え方としては、最初に対象のよいところをどんどん出して、その後で欠点を考えるようにしましょう。対象に対する気持ちがだんだん冷めてきて、諦めるのに必要な心の勢いがつくはずです。
■他の刺激と接点を持つように心がける
社会心理学者のウォーチェルは、“希少価値”について実験をしました。被験者に同じ味のクッキーが入った2つのビンを渡し、1枚とって食べてもらうのですが、片方のビンにはクッキーが10枚入っているのに対し、もう片方のビンにはクッキーが2枚しか入っていませんでした。そして、被験者にそれぞれのクッキーの味を聞いたところ、2枚入ったビンから取り出したクッキーのほうがおいしいと答えたのです。中身は同じ味なのにです。このことから、人は希少性の高いものに価値を見出だす傾向があるのです。これは欲求に対しても同じで、これは特別なものだという思い込みが激しければ激しいほど、諦めるのが困難になってしまいます。そのため、諦めたいときには他の刺激との接点を増やすように心がけましょう。そうすれば、対象に対しての希少性が薄れ、意識が一点だけに向かわない状況をつくり出せるはずです。
おわりに
欲しいものを諦めるというのは、手に入れるために努力をするよりも難しいものだと言えます。それは「これが手に入ると自分はこのようになる」という理想が織り込まれているためです。しかしその理想は、思い込みや期待値によってゆがめられていることも少なくありません。それが本当に自分にとって必要なものなのか、冷静になって考えることがときには必要なのかもしれませんね。(脇田尚揮)
認定心理士。Ameba公式No.1占い師として雑誌やTVなどに取り上げられ、テレビ東京「なないろ日和」にてレギュラーコーナー担当。また、自身が監修したアプリ 「マル見え心理テスト」はTBS 「王様のブランチ」 などでも紹介され、120万DL。著書『生まれた日はすべてを知っている。』(河出書房新社)。