どんな相手でも「踊らせてしまう」コツは…?振付稼業air:manインタビュー(8)

OK Goの最新大ヒットMV『I Won’t Let You Down』の振付や、世界の広告賞を総ナメにしたユニクロのウェブCM「UNIQLOCK」の振付を担当するなど、今もっとも注目の振付ユニット・振付稼業air:manのロングインタビュー8本目! 「踊る」のではなく「踊らせる」にこだわる彼ら。ダンスが苦手な相手でも「踊らせ」ることができる彼らに、そのコツを教えてもらいました!

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Woman Insight編集部(以下、WI) CM撮影などで、タレントさんご本人はあまり踊りたくないと思っていて、でも踊ってもらわざるを得ないような状況のときに、限られた時間の中で、気分良くというか、やる気にさせるというか、前向きに取り組んでいただくコツっていうのはあるんでしょうか?

振付稼業air:man・杉谷一隆さん(以下、杉谷)  マニュアルはないんですけど、ご本人の踊りに対する苦手なアプローチって人によって違ったりもするので、例えば役者さんで言うと、踊りを言語化してあげるのが一番有効な場合があります。「ワン、ツー」じゃなくて「ここは悲しい気持ちをグワーッと」と言ったほうがすんなり入りやすい。

WI 「踊る」から「演じる」っていう気持ちになるんでしょうか。

杉谷 そうですね。単純にそれもまやかしなんですけどね。傍から見ると踊っているので。でも本人もそれもわかっていて「俺、お芝居の延長でやってるつもりだけど、これ、人から見ると踊ってるように見えてるんでしょ」って面白く感じて頂けるみたいです。

それはマジックでもトリックでもなんでもなくて、単純に「踊りを言語化する」っていうのは、振付師のひとつの役割だと思っているので、それで「やりよくなった」って言ってくださる人が多いのは嬉しいことですよね。ただ、それを嫌がる人もいるんです。「前で振付をやってください。見よう見まねでそのままやります」っていう。

アーティストの場合は、僕ら全員で必ずその人の歌を覚えてから行くんです。僕らは自分たちの口歌に合わせて踊りを教えるので、例えば誰かがタンが絡んだりしても、すぐ次に別の人間が続けて歌えるようにしてるんです。でも案外それってみんなやっていないようで、「ワン、ツー」で教えているみたいなんですよね。

でも歌詞に当て振りをしているんだし、歌詞の世界観を具現化しているんだったら、歌を覚えてないとしんどいじゃん?って当然思うんですけど、この間もとあるグループの方に「なんでみんな歌、歌えんの?」って言われて、そう言われるってことは、ほかの人はやっていないんだなと。

歌を覚えていないと産まれてこない振付っていうのは当然あるので、いろんなアーティストの方にそう言われると、僕らもほかの振付の人たちのリサーチになるんですよね。とはいえ、役者さんと同じで、「歌で教えてくれるからわかりやすい」っていう人もいれば、逆に「カウントでやってくれないと、歌詞と踊りが頭の中でバッティングしちゃってわからなくなる」っていう人もいるので、本当にその時々ですね。

WI その見極めも難しいですね。どのタイプだ?っていう。

杉谷 思いますね。だけど一番楽しいですよね。人と接しているっていう感じがします。それこそ郷ひろみさんとかも、僕の小さいころからの、いわゆるおかあちゃんたちのアイドルだったわけですけれど、そういう人たちがすごいなぁって思うのが、ちゃんと「先生」として見てくださるので、こちらも「先生」として、ちゃんとやらないといけないんですよね。だから「えっと、なんとなく……」っていう答えは絶対ない。「わかんないんですけど……たぶんこう」って絶対言っては駄目で、「これはこうです」って言わないといけない。

なぜなら、「『これをやってほしい』って監督から発注受けたんです。クリエイティブの総意です」っていうある種、上から目線のところから、「だからこうしましょう」っていう答えをこちらがしっかりと提示すると「うん、そうだね」って食いついて頂けるので。でも、みなさん第一線の方たちなので、シャイだったりするだけで「俺、踊りできねえよ」ってとか言ってる人に限って、できます(笑)。

WI やっぱり日本人はどうしても照れがありますよね。

杉谷 そこがいいところでもあるんですけどね。

WI 奥ゆかしさにつながる部分ですもんね。

「踊らせる」ためには、相手によってアプローチを変えなくてはいけないが、それが一番楽しいというair:manさん。相手が何を望んでいるのか、何が踊りの足かせになっているのかを見抜く洞察力は、前回のインタビューでの「(CMの仕事は)コンテがあって、流れの中にカチッとはまる答えがある」ということに近い気がしました。さて、次回はインタビュー最終回。OK GoのMV『I Won’t Let You Down』を手掛けることになった経緯や、その裏話を教えてもらいます!(安念美和子)

【air:manインタビュー】

★1本目→  OK Goの最新MVを担当!教科書も出版!?今もっとも熱い振付ユニット、振付稼業air:manインタビュー(1)

★2本目→  振付業界の曖昧さに挑戦し続けて10年!振付稼業air:manインタビュー(2)

★3本目→  「ギャラは1人分、仕事の出来は人数の乗数倍」で作り上げた実績~振付稼業air:manインタビュー(3)

★4本目→  中学のダンス必修化を良い方向へ導きたい!振付稼業air:manインタビュー(4)

★5本目→  「ダンスが本当のコミュニケーションツールになる可能性」振付稼業air:manインタビュー(5)

★6本目→  「振付師という職業は今まさに過渡期」振付稼業air:manインタビュー(6)

★7本目→  チーム作りの要はベテランも若手も常に一緒に現場へ!振付稼業air:manインタビュー(7)

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『振付稼業air:manの踊る教科書』(¥2,160/東京書籍刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/448780796

 

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