OK Goの最新大ヒットMV『I Won’t Let You Down』の振付や、世界の広告賞を総ナメにしたユニクロのウェブCM「UNIQLOCK」の振付を担当するなど、今もっとも注目の振付ユニット・振付稼業air:manのロングインタビュー7本目! 振付稼業air:manが第一線で走り続けていられるのは、徹底した仕事っぷりとその明確な体制作りにあるようです。そんな振付稼業air:man杉谷さんが、最近嬉しかったエピソードも教えてもらいました。
Woman Insight編集部(以下、WI) CMの制作業界の中でも「振付が発生する、それならair:manさんにお願いしなきゃ」みたいな流れができているのではないでしょうか。
振付稼業air:man・杉谷一隆さん(以下、杉谷) ありがたいことです。もう10年選手なのですが、こんなに長く続けていられるとは思っていなかったですね。気づいたらベテランさんになっている。「air:manさんにお願いしろって上司から言われました」っていう発注がきて、「おお、ありがとう(笑)」というようなこともあって、これはマズいと若いメンバーを入れて若い子の血も入れていこうと日々、切磋琢磨してます。
今は16歳がひとりと、19歳がひとりと、20歳がひとり……がいて、僕が親みたいな年齢なんですけど、そういう子たちを連れて一緒に現場に行きます。現場ではみんな対等な立ち位置で、僕は注意するし、僕も注意されるような感じなんですが、そういうのはまだ誰もやっていないと思います。
そういうふうにやり続けていることによって、その現場にいる異業種の人にとっても勉強になる……という意見を頂くことがあります。たまに一緒にお仕事している代理店や制作会社の方から「うち(の会社)で、ゆとり世代との付き合い方について、月1でプロデューサーが集まってやっているんですけど、今度講演会に来てくれませんか」って言われるんですけど、どうしてair:manにいる若い子はああいうふうに動けるんだろうって思うみたいなんですね。動けているか動けていないかといったら、動けていないほうだと思うんですけどね。
僕達のメソッドは直接現場に行って声出して、周りがどういうふうにやりたいかを判断するっていうだけなので、「それを常に意識しろ。周り見ろ。不安になってキョドるな。間違っていいから、周りに何を求められているかっていう答えを自信を持ってしっかり口に出すように。間違えている“かも!?”っていう言い訳はいらない。間違えていいから」っていうのを常に言っています。一流の現場でやれているっていうことで、彼らも(スキルが)上がっていかざるを得ない状況ですよね。
WI それは間違いがあっても杉谷さんがカバーできるっていう余裕があるからこそ、判断をまかせられるんですよね。
杉谷 それはもちろんそうです。ただ、近ごろはカバーがしきれないような大きな仕事も増えてきているんですが、そのやり方でやってみようと今は決めているので、もしダメだったらそれはそれで考えようと。「この現場は連れていける」「連れていけない」っていうのを選ぶよりも、「現場は常に一緒に行きます!」って決めてしまったほうがいいのかなって。そういう意味では自分も菊口も冒険してますね、常に。
WI ということは、現場に行くメンバーの数が増えたんですね。
杉谷 そうですね。今日もこの後2現場あるんですけど、僕が若いのふたり連れて、菊口がまた別のふたりを連れていきます。今は体制で言うと、無理なく同時間軸で3現場は回せます。それこそ1つの案件の時間が短い現場のときは、4現場、5現場になることもありますね。
WI なんかCMの撮影って1日仕事っていうイメージです。
杉谷 かかるものはかかりますね。舞台なんかは特に時間がかかるんですけど、CMはタレントさんの時間の制限があることが多いので、逆にあまり時間かからないです。長くても1日、2日という感じです。今、うちの正式なメンバーは7人いるんですけど、同時に7現場回せるようになるのが夢ですね。それができたら、ひとまず「すごいね!」って感じです。
WI 同時に7ラインっていうことですよね! すごい。
杉谷 その16歳のやつとかが、それこそ菊口がセーラー服を着てタレントの振付をしていたように、臆せずにバン、といけるようになればいいなーと思っています。いや、なればいいなーというか、それはこっちが環境を渡さない限りは、そうできる可能性があるかも判断できないので、例えそれで失敗してもやらないといけないときが今来てると思っています。
WI 今いらっしゃる若いメンバーの方たちは、どういったきっかけで入ってきた方が多いんですか?
杉谷 もともと小さいときに『ポンキッキ』等の子供番組とか舞台とかに出てた子供たちですね。そのとき3歳とかで踊り始めて、今、大人になってっていう感じです。
WI えー! そんな長いおつきあいなんですね。
杉谷 ずっと長くやっていると面白いなーと思うんですけど、ももクロの有安杏果さんなんかは『ポンキッキ』でのうちらの教え子ですね。今も会うと抱き付いてきてくれたりはしますけど、彼女の活躍はすごいなと思います。教え子たちが、踊ったり、歌ったりしているのを普通にテレビを通して見ると、長くちゃんと仕事をしているとこんなにごほうびが返ってくるんだと思いますね。NHKの次の朝ドラの主役をやる土屋太鳳さんという女の子がいるんですけど、彼女は本当に根っからの僕らの教え子です。それが「えーっ、朝ドラのヒロイン!?」ってなると、びっくりしますよね。
WI そうなんですね! でもその子役時代から、大人になってチャンスをつかむまで、ちょっと時間が空くじゃないですか。その間もずっと辞めずに続けてこられたのもすごいですよね。
杉谷 たいていみんな辞めちゃいますからね。辞めるのもひとつの道として賢明とも思いますしね。でも辞めずに地道にずっとやってきて、ひとつひとつ結果を出してゆく彼女らを見られると嬉しいですよね。この前久しぶりに土屋太鳳さんに会ったのですが、すごいなーと思ったのが、5~6歳くらいにやった振りを全部覚えてるんですよ。しかも「こういうふうにって、ちゃんと教えてもらった」っていうディテールまで覚えていて「あ、僕らこういうふうにちゃんと仕事をやってたんだ」って思いましたよね。今も方法論は変わらずやっていますけど、教えたことが今も受け継がれているというか、自然に心に刷り込まれている瞬間ってあるんだなって思ったときに、すごく嬉しかったですよね。
「ダンスの楽しさを伝える」目的で本を出版した振付稼業air:manにとって、かつての教え子たちにそれがきちんと引き継がれていたことが判明するとは、なんともタイムリー。タイミングというのは、こういうふうに重なっていったりするものなのだな、とお話を聞いていて私もしみじみ思いました。次回は、振付稼業air:man流のタレントさんへの振付のコツを教えてもらいます!(安念美和子)
【air:manインタビュー】
★1本目→ OK Goの最新MVを担当!教科書も出版!?今もっとも熱い振付ユニット、振付稼業air:manインタビュー(1)
★2本目→ 振付業界の曖昧さに挑戦し続けて10年!振付稼業air:manインタビュー(2)
★3本目→ 「ギャラは1人分、仕事の出来は人数の乗数倍」で作り上げた実績~振付稼業air:manインタビュー(3)
★4本目→ 中学のダンス必修化を良い方向へ導きたい!振付稼業air:manインタビュー(4)
★5本目→ 「ダンスが本当のコミュニケーションツールになる可能性」振付稼業air:manインタビュー(5)
★6本目→ 「振付師という職業は今まさに過渡期」振付稼業air:manインタビュー(6)
『振付稼業air:manの踊る教科書』(¥2,160/東京書籍刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/448780796
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