OK Go『I Won’t Let You Down』参加の裏話を公開!振付稼業air:manインタビュー(9)

今もっとも注目の振付ユニット・振付稼業air:manのロングインタビューもいよいよ最終回です。今回はOK Goの大ヒットMV『I Won’t Let You Down』の振付に参加することになったエピソードと、その感想を改めて教えてもらいました!

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Woman Insight編集部(以下、WI) OK Goの『I Won’t Let You Down』が大きく話題になりましたね。このMVに参加したことについて、何か思うところってありますか?

振付稼業air:man・杉谷一隆さん(以下、杉谷)  もともと、僕は自分がダンスを始めたきっかけがマイケル・ジャクソンだったので、彼に振付するのが夢だったんです。でも亡くなってしまったので、他に目標にする人がいないよね、なんて菊口に言っているときに、「OK Goやりたいよね」っていう話が出ていたんです。OK Goは面白いPVを作るっていうのは知っていたので、誰に言うともなく心に思い続けていたんです。そしたら、ある日、菊口の携帯に電話がかかってきて「ちょっと名前は言えないのですが、海外のアーティストの振付をしてほしいんですけど」って言うんです。で、「名前もスケジュールもわからないと、答えようがない」って言って切ったんです。で、電話を切ったら菊口が「たぶん、これOK Goだと思う」って言うんです。

WI えーーっ!?

杉谷 彼女は、なんかそういうところがあるんです。その1週間後くらい、フジロックが終わった日に「ちょっとメンバーが会いたいって言ってるんですけど、打ち合わせできませんか? OK Goなんですけど」っていう連絡があって、打ち合わせをしたんです。だから「うわー! ずっと思ってたことが叶っちゃった!」というのが初めに思ったことですね。実際に打ち合わせをしてみたら、うちらとすごくやり方が似てる感じがしました。

WI そうなんですね。どういう点でですか?

杉谷 机の上で、シンプルなアイデアをすごくたくさん出し合って、どんどん膨らませていく。面白いのが、今回は「ドローンがあって、俯瞰で画を見せたい」っていうのあって、そのためにどうしたらいいのかっていうことだけしか考えていなくて、その主軸が全くブレないんですね。その主軸に向かって日米でアイデアをうわーっと出し合って、うちらが振付をつくるときの方法論と全く同じっていうところにシンパシーを感じました。

そのあと、彼らは全米ツアー中だったのでアメリカに戻って行ってしまったんですけど、1日でも間が空けばボーカルのダミアンが日本に来て打ち合わせをしていたんです。で、また「これこれこうしたい」って話すっていうのを繰り返しました。それで出来上がって、軸がブレなかったっていうことと、日本のプランナーの原野さんのHONDAのユニカブっていう乗り物を使ってやったら面白いんじゃないかっていうアイデアとか、無駄なものがいっさいなかったというか、まっすぐ積み重ねてできたような感じです。

よくある、積み重ねているうちに違う方向にそれちゃったっていうことが一切なくて、「ああでもない、こうでもない」「できるかな」「できるよ」「じゃあやってみようか」「まずはミニマムなサイズで」ってとりあえずやってみるとか、言うなれば「大人の文化祭」みたいな感じだったんですよね。延々と続く文化祭の準備、みたいなのを久しぶりに体感して、仕事の仕方がすごく丁寧で、特に今だと日本って限られた時間や予算の中から効率的にって考えるから「できない」から始まることが増えちゃってるんですよね。

そうじゃなくて、「やりたい」「やる」から始まるので、それがわかりやすくてよかったですね。そのために、どう時間を使うかっていう時間の割り振りがうまいなって思いました。日本人が一番時間の使い方がへたくそなところだと思うんですけど、「これはやれない」って言っていたものが、結局元をただせばそれをやったほうが効率的だって途中でわかったりするんですよね。それで一度は「やらない」と言って別のことに予算をかけていたのに、もう一度「やらない」と言ったことに対しての予算を別から持ってくるはめになったりして、結局損するっていうことがある。

それがなぜ起きるかっていうと、最初に「やれない」から入るから、それに似たことにに寄せる時間と労力をすごくかけるんだけど、最初に「やる」から入れば、それを「やる」ために時間と見積もりを立てざるをえないので、結果的にブレないという。クリエイティブの贅沢っていうんですか。そういう時間でした。彼らとの仕事は。

 

クリエイターたちが集まって、ワクワクしながら作り上げたMVだったんだということが伝わりますね。 「やれない」から入るから結果的に遠回りになって、時間もお金も無駄にするっていうのはよく見かける光景。プライベートだけでも「やりたい」「やる」の精神でいたいものです! さて、全9回のインタビューはいかがだったでしょうか? 「裏方」である振付師についてまったく無知の私でしたが、新しい時代を切り開こうとしている振付稼業air:manさんのお話は、違う業界でも応用できる部分がたくさんありますね!(安念美和子)

【air:manインタビュー】

★1本目→  OK Goの最新MVを担当!教科書も出版!?今もっとも熱い振付ユニット、振付稼業air:manインタビュー(1)

★2本目→  振付業界の曖昧さに挑戦し続けて10年!振付稼業air:manインタビュー(2)

★3本目→  「ギャラは1人分、仕事の出来は人数の乗数倍」で作り上げた実績~振付稼業air:manインタビュー(3)

★4本目→  中学のダンス必修化を良い方向へ導きたい!振付稼業air:manインタビュー(4)

★5本目→  「ダンスが本当のコミュニケーションツールになる可能性」振付稼業air:manインタビュー(5)

★6本目→  「振付師という職業は今まさに過渡期」振付稼業air:manインタビュー(6)

★7本目→  チーム作りの要はベテランも若手も常に一緒に現場へ!振付稼業air:manインタビュー(7)

★8本目→  どんな相手でも「躍らせてしまう」コツは…?振付稼業air:manインタビュー(8)

OK Go『I Won’t Let You Down』

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『振付稼業air:manの踊る教科書』(¥2,160/東京書籍刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/448780796

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